第56話 ひと休み〜事件没発!

 ◇◇◇◇◇


 イースでの活動に光が見えたので、次の入場までしばしの間、日本で休息を取ることにした。ちょっと、ひと休み。


 そして、みんなで温泉旅行を計画。

 ネズミランドとかでも良かったんだけど、迷宮HAPPY組がのんびりしたいということで、箱根の温泉に行くことになった。


 修学旅行へ行ったことのない俺には、こういうのは結構新鮮ですごく楽しみ。


 3台の車でいざ箱根へ!

 くじ引きで4人ずつに分かれて搭乗。


 ちょっとずつ休憩して、またくじ引き。

 いやー、楽しいな!


 総勢12名の団体様。


 橘颯・橘桜

 桂木静・桂木若葉

 坂本朱美・竜崎麗奈

 早見咲夜・堀千英

 上杉夏・神田空

 中岡紗・萩原月


 旅館は6部屋予約。

 無難にこのペアで部屋割り。


 本日の予定は。

 縁結び神社へお参りに。

 そして定番の大涌谷へ。


 旅館に戻って、お楽しみの温泉へ。

 いろんなお風呂が人気の旅館。

 

 男一人なんで、単独行動です。

 修学旅行だと女湯を覗きに行くのが定番なんだけど、そんな勇気はございません。


 ちょっと長めに湯巡りを堪能して部屋に戻ってきた。


 が!部屋に入るとパーン!パーン!


 クラッカーで迎えられて何かと思ったら、今日は俺の誕生日だったらしい。


 忘れてた。机にはケーキが置いてあった。


 ろうそくの火を吹き消して、みんなでケーキを食べた。

 なぜか、泣けてきた。

 俺が泣いてるのを見て、みんなに笑われた。


 それから、豪華な食事を堪能。


 日課のデイリー経験値譲渡のために、一人ずつ、交代で部屋に来てもらうことに。


 部屋で二人っきりになるので、いつもながら、朱美が迫ってきてヤバい(笑)。


 そのあとは、就寝までトランプなどをして、今日一日、学生時代に経験できなかった青春を満喫した。


 ちなみに、家に帰るまでが修学旅行です。


 心身ともに充電できました。

 ただただ、ほのぼのとした話でした。



 ◇◇◇◇◇



 休息も終わり、再びイースの地を踏む。


 天門宮から瘴気付近まで狩りをしつつ、南へ進行中。


 数日後に瘴気付近に到着して、瘴気吸収作戦を継続中。あとは南極大陸相当というところまで来ていたのだが……。



 ◇◇◇◇◇



 魔門宮にて。


『グランデスピロよ。ベルゼーブンだ。』


『は!ベルゼーブン様!いかがなされましたか?』


 ベルゼーブンは、第一位階悪魔で魔界のナンバー2。そして反悪魔長派閥の筆頭である。

 普通なら、わざわざ、こんな辺鄙な摩天境界の門番に直接話しかけることなどない。


『今すぐに魔界に戻れ!』


『は!引き継ぎはどういたしますか?』


『いらん!今すぐに戻れ!!今すぐだ!』


『は!承知いたしました!』


『このことは誰にも言うな!わかったな!』


『は!』


 どうなってるのよ。

 事前に連絡もないなんて。魔門を放置して戻っても大丈夫なのかしら?

 

 何か想定外の事が起こっているとは思ったが、ベルゼーブンに逆らう訳にはいかず、グランデスピロは、やむなく魔界へ戻って行った。



 その後まもなく、黒く濃い瘴気が魔門から、前回の100倍以上の速度で流出が始まった。

 魔門宮を中心に、津波のような瘴気が円状にものすごい勢いで拡っていった。悪魔的拡散!



 ◇◇◇◇◇



「お兄ちゃん!南の瘴気がすごく濃くなってるように見えるんだけど!」


「颯!津波のように迫って来ているわ!」


「う!これはヤバい!みんな!一旦、俺のところに戻って!」


 遠くに見えたはずの瘴気の津波は、一瞬にして颯たちの目の前に現れた。


「颯くーん!間に合わないよ〜!」


 颯たちは、怒濤の如く現れた瘴気の津波に飲み込まれてしまった……。



 ◇◇◇◇◇



 天門宮にて。


 サランディーテも颯たちのところで発生した異常事態を察知していた。


 え?何が起こってる?


『ハヤテ!ハヤテ!』


 ……。


 なぜか瘴気が拡大してる。

 スピードもあり得ないほど速い。


 緊急事態だわ。天界に連絡しないと!



 ◇◇◇◇◇

 


 一方、地球では。


「藤堂大臣!緊急事態です。

 南極点のS級ダンジョンから超大型の魔物が大量発生しています!すべての個体が凶暴化しているようです。

 現地上空からの映像を映します。」


「これは……。」



 プルルルル。


「銀ちゃん!至急、連盟招集して!異常事態よ!」


「わかった!すぐに準備する。


 (おい!連盟を招集しろ!急げ!)


 で、何があった?」


「そちらに送った映像を確認して!

 南極点のS級ダンジョンでスタンピードよ。」


「わかった。招集出来次第、連絡する!」


 ガチャ。



 ◇◇◇◇◇



 世界探索連盟緊急会議。


 今回は理事会ではなく、加盟国すべてを招集して会議が開かれている。


 議長国の副代表として、現在の状況を藤堂大臣から説明している。


 南極点から発生した超大型魔物は、現在も増加しており、すでに南極大陸を覆い尽くすほどの数になっている。

 そして、すでに海を渡って北上している個体もいる。

 南極にいる超大型魔物は、南極大陸の氷山を破壊し続けており、徐々に海抜が上昇している。


「まずは、各国、海抜が低い地域の国民の避難を指示するように!

 次に各国の全A級探索者を招集して!

 それぞれ、アフリカ、オセアニア、南アメリカのサイドの沿岸に配備します。

 各国の国軍は今回の討伐には南方最前線に行ってもらいます。派遣準備をするように。

 それぞれの指示は追って連絡する!」


「一体、どうなってるんだ!安全宣言を出すんじゃなかったのか?」


「すでに、南極付近の映像がネットで拡散されて、パニックになっているんだぞ!」


「S級探索者はいないのか?A級で対応できるのか?」



「宗方だ!指示に従えない国は勝手にしろ!

 その代わり、連盟を除名になると思えー!」


「はいはい。それじゃ、質問に答えるわよ。

 今回の事態は、S級ダンジョン内部でなんらかの事件が発生したと予想しているわ。

 ただし、そのあたりの情報は不明よ。

 現地の映像については、遅かれ早かれ見せることになると思っていたわ。パニックは各自で抑えてちょうだい。

 それと、今はS級探索者は全員不在。

 S級ダンジョン内にいるわ。

 たしかにA級じゃ今回は厳しいでしょうね。

 でも、他に戦力はないのよ。やるしかないのよ。」



「よし!それじゃ、一旦解散だ!各国準備に移ってくれ!この会議はウォールームとして繋ぎっぱなしにしておくから、何かあればここで発言してくれ!以上だ!」


 。。。。。



 だが、各国が協力して、超大型魔物に対抗するも、押しとどめることが精一杯の状況であった。このまま、持久戦になれば、苦しいのは人間の方であるのは明らかに見えていた。


 さらに、海抜の上昇により一部の都市はすでに海に沈んでいった。


 スタンピード発生からまだ数時間しか経っていないのに……。対処方法が見つからないまま……。


 そして、全世界民が現在の状況に悲観し、絶望していった。

 因果応報、罰によりリセットされると……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る