第49話 それぞれの視点

 ◇◇◇◇◇


 次の日、やっぱり瘴気の手前までやって来ました。

 今日も周辺に魔物いません。まったく。

 そして、いきなりエロ悪魔登場!


「オラ!ケタル!

 来たわね!今日は話ができるかしら?」



「……はい。」


 一応、油断せずに間合いを取る。

 いつでも、戦闘モードに入れるように日本刀は抜いておく。

 でも、この悪魔の衣装?がきわどすぎて、どうしても気になる〜!


「あら。良かったわ。君はハヤテね。ここにはサランディーテに言われて来たのよね?

 瘴気の吸い取りもそうね?

 それね、こっちの計画があるから困るのよ。やめてもらえる?」



「……。」


「まあ、そうなるわね。

 じゃあ、少しこちらの事情を話すわ。


 最近になって、魔界から魔門を通じて瘴気を大量に送り込んでるのよね。

 そうすると、摩天境界の瘴気濃度が上がって魔物が凶暴化するのよね。魔門宮の周辺はもうすごいことになってるわよ。

 そして、俗界にもその魔物が流れるって感じよね。


 この計画はね、魔界のお偉いさんの決定によるものなのよね。

 理由はね、俗界である地球、君たちの住んでる地球を一旦リセットするためなのよね。」


「はぁ?そんな!リセットって!

 そんなのダメに決まってるでしょう!」


 黙って聞くつもりが、思わず叫んじゃった。



「あら、食いついてきたわね。ふふふ。


 でも、どうしてダメなのかしら?

 地球はね。ものすごく汚れてしまってるのよ。特に人間という生き物によってね。


 君は人間だからね。そういう視点で物事を判断してるのよ。天界も基本はその視点ね。


 でもね、魔界は視点が違うのよ。

 だから、今回の方針はそういう視点での判断を下したってこと。だからリセット。

 もう瘴気を吸い取るのはやめなさいね。」


「……。」


「あら、反論しないのね。

 まあ、リセットしたとしても、一部の人間は生き残ると思うわよ。少なくとも、君は残る方ね。そこからのリスタート。」




「……。わかりました。

 そういうことなんですね……。


 視点の違い。


 正直に言うと、昔の俺だったら、その話に乗ってたかもしれないです……。


 妹以外は信用できる人はいなかったし、周りからはひどい扱いだったし、平気なふりしててもやっぱり苦しかったし、いろいろ悩んでた時期もあったし、世の中は理不尽だったし、両親もいなくなったし、いろいろ考えました……。



 でも、結局、世の中のせいにしても、人のせいにしても、何も変わらなかったんですよね。

 それに気づいたのは、妹の桜のおかげなんですけど。


 今はちょっと違うというか。環境が良くなったからかもしれないですけど、仲間がいるし、信用できる人も増えたし、恋人というかそういう人も出来たし、ちょっと難しいです。



 選択肢が2つあることは理解しました。

 俺が決めていいなら、間違いなく瘴気を吸い取る方です。すいませんけど。」



「ふーん。なるほどね……。


 まあ、今はそれでいいわ。


 これは関係ないけどね、私もこう見えて第七位階悪魔なのよね。

 第七位階ってね、7番目なんだけど、全体の人数からすると結構上の方なのよ。

 なのに、一番めんどくさい階級なのよ。

 もう、早く上がっちゃいたいのよ。

 第六位階以上は魔界勤務だからね〜。

 こっちの事情だけど、まあ、さっさと終わらせたいって感じなのよね〜。」



「……そっちが本音ですか?」


「そうよ。悪魔にもいろいろいるのよ。

 真面目なやつとか。

 そうそう、天使で言うとサランディーテみたいなやつね。まあ、想像だけど(笑)。

 私はそうじゃないみたいね。」


「なんか、変わってますね。」


「そうね。よく言われるわ。

 でも、魔界じゃ人気あるのよ。


 って、あら?あらら?

 ハヤテって私の体に興味があるのかしら?

 さっきからずっとガン見じゃない?

 特に胸のあたり?」


「え?いや!ち、違いますよー!」


「あらそう?残念ね。

 ハヤテは強そうだから、ワンナイトラブなら、付き合ってあげるわよ。」


「いや、いいです!大丈夫です!」


「ふふふ。真っ赤になってかわいいわね。

 それじゃ、一応伝えたからね。

 まあ、魔界の上の方が放っておかないと思うけど、それまでは好きにしなさいよ。

 あと、私のことは、グランデスピロ様って呼びなさいね。偉いのよ。わかった?」


「……はい。」


「ムイビエン。じゃあね。バイバイ。」


 グランデスピロ様は瘴気の中へと消えていった。本当に変わった人だ。

 あと、格好がエロすぎだ。思わず無意識で見てたらしい……。ワンナイトラブって……。


 あ!



 ◇◇◇◇◇



 いつの間にか、魔物が……。

 いつも通りの魔物の群れに囲まれて、狩りまくって、狩りまくって、吸い取る。


 効率悪い。見積もりが甘いような気がする。


 追いついてないような気がする……。



 ◇◇◇◇◇



 連闘。連闘。毎日、吸い取る。

 今日も明日も明後日も。お掃除ロボット俺!


 みんな、どうしてるかなぁ?


 もう、こればっかりは飽きてきた。


 ぼっち生活。別に不自由はないけど、誰もいないのは寂しい。もうそろそろ戻ろうかな?



 ちょうど、そのとき、サランディーテ様から直接心に話しかけられた。


『ハヤテ!そろそろ戻ってきてもらえますか?

 ゲートスキルを使ってください。天門宮で待ってます。』


 お!グッドタイミング!もう、心折れそうだったんで、良かった〜!助かった〜!


 ゲート!!


 初ゲートで颯は天門宮へ。

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