第40話 WSF常任理事国入り?

 ◇◇◇◇◇


 帰国後、数日してWSFは3カ国同時スタンピードの終息宣言を発表した。

 と同時にWSFの臨時理事会が開催が通知された。今回のアジェンダは世界同時多発スタンピードの報告と日本合衆国の常任理事国の承認決議とのこと。案の定、藤堂さんから呼び出しを喰らう。首相官邸に集合です。


 ちなみに、今回のオーストラリア派遣の報酬がオーストラリアから支払われ、その6割の額が俺たち6名に分配された。もう、ものすごい額すぎて女子5名は唖然としていた。俺はもうすでにお金不要の極地まで行ってる。余生はビルさんの様にどこかの島を買い取って、のんびりと暮らそうかなぁ。



 ◇◇◇◇◇



 はい、前回と同様に5名が官邸に集結してます。首相興奮気味。この人、こういうの好き。


「今日は記念する日になるぞ!がはは!」


「銀ちゃん。はしゃぎ過ぎじゃない。ふふふ。」


「おう!橘!ありがとな!

 それともう一つ嬉しい知らせがあるぞ!

 お前に頼まれてた件の法案が通過したぞ!」


「え!もうですか?早かったですね!ありがとうございます!」


「おう!いいってことよ!野党とは揉めたがな!軽く一捻りよ!がはは!」


「そうなんですか。お手数をおかけしました。

 で、どんな形になったんですか?」


「おう。全国の警察内に専門の調査団を設置することにした。

 申告や被疑があった場合は、調査団が迅速に調査に入る。詳細調査の結果、黒判定だった場合は、加害者は成人と同様に犯罪点数を加算することになる。要するに今後は未成年でも犯罪として扱うことになる。ってことだ。

 ただし、それのみでは即刑罰って訳にはいかないんで、加害者には、被害者への接触禁止命令が出る様にした。とまあ、細かいところは色々あるが、ざっくりそんな感じだ。」


「すごいです。本当にありがとうございます!」


 なんの話かと言うと、首相にお願いして実現した法案は『いじめ禁止法』。

 名前がダサいのは、俺が言ったそのままの名前で法案が作成されたため。

 被害者が肩身の狭い思いをするのでなく、実際行われている実情を明確にして、加害者が排除される様にしてほしいとお願いした結果である。接触禁止命令が出るとすれば、転校するのは、加害者の方だ。

 この短期間で実現したのは、この人の人望と熱意である。もう感謝しかない。


「あとな。お前が言ってた2人には、独断で犯罪点数を付けてやったわ!がはは!協会の川崎営業所の佐久間に手伝ってもらってな。ちょちょいとな。がはは!」


「それ、頼んでないですけど……。」


「サービス、サービスゥ!だ!がはは!」


 それ、いいんですか?職権濫用?

 まあ、ちょっと溜飲が下がったのは事実です。

 だって、人間だもの〜。

 なぜなら、彼ら2人には学生時代に陰で相当な嫌がらせを受けたんです。黙ってたんで、ほとんど、知られてないですけど。



「じゃあ、そろそろWEB会議に参加するか!」



 ◇◇◇◇◇



 WSF臨時理事会にて。


 アジェンダNo.1

 世界同時多発スタンピードの報告について。


 3カ国から今回の被害状況並びに今後の復旧計画についての報告があった。その後、協力国への感謝の言葉があり、ここでの日本合衆国の貢献については各国に非常に高い評価を得た。


 議長国のアメリカ合衆国からは、今回の世界同時多発スタンピードの背景は調査中とのことが伝えられ、今後も南半球の国は予断を許さない状況であることが伝えられた。



 アジェンダNo.2

 日本合衆国常任理事国承認決議について。


 現常任理事国のロシアが不参加のため、決議できず。宗方首相が中国に対して抗議するものの、ロシアに対しての承認の意向は確認できているとの発言はあったが、参加不参加までは関与していないとのことであった。

 

 ロシア恐るべし。なんでもあり国家。

 そんなに嫌なのかな?


 ロシア不参加については、議長国のアメリカと、もう一つの常任理事国フランスからも抗議を入れることとなって、このアジェンダは終了。結果、日本合衆国常任理事国入りは叶わず。


 そして、WSF臨時理事会も終了した。



 ◇◇◇◇◇



「くそくそくそ!どうなってんだ!」


「元々、レッドチームはグルかもしれないわね。予想外だったけど、3対2の構図になるのが想像以上に危険と判断したのかもしれないわ。本当の理由はわからないけど、国としてブッチするなんてやってくれるわね。」



 コンコン!


「失礼します!ただいま、松田龍作氏がS級ダンジョンから帰還したとの情報が入りました。

 渋谷特別管理局で専属担当が来るまで、ひとまず待機するとのことです。」


「おう!そうか!無事帰還したか!

 よし俺たちもー!向かうぞ!

 みんなー!着いてこーい!」


 この人、切り替え早っ!

 なんにしろ、松田さん、無事で良かった!

 久しぶりに会える。なんか嬉しいな。



 ◇◇◇◇◇



 5名は専用ヘリで渋谷に移動し、特別管理局に到着。専属担当よりも早く着いた模様。



「おう!松田ー!」

「おう!宗方!」


 2人ががっちりと抱き合う。


「龍作ちゃん!おかえりなさい。」

「おう!美咲!ただいま。」


「橘も来てくれたか!ははは。」

「はい、おかえりなさい。」


「いやー、お前には感謝だよ。

 地上世界型ダンジョンはもうすげーぜ!」


「ふふふ。ダンジョンオタク。」


「美咲!ここの担当にオートマッピングデータとドローンデータを渡しておいたぞ!」


「ありがとうね。分析班が動いてくれると思うわ。まずは情報収集成功ね。」


「おう。これをネタに合衆国と話ができるな。

 有効に使わせてもらうぞ!がはは!」


「それで、龍作ちゃん。中はどうだったの?」


「それな!もう広い!地球とは別世界だ。

 あとな。重力がだいぶ小さい感じだな。

 体が軽いんだよな。

 魔物もデカくて、動きが早い。その分、魔心も通常よりデカいな。だいぶと狩って来たぞ。

 それももう渡しておいたからな。アイテムボックスは優秀だな。

 とにかく、何もかもが新しい世界だ。とても周り切れん。次も楽しみだ!ははは。」


「それは良かったわね。だから、1ヶ月で帰ってこなかったのね。まあ、大丈夫だとは思ってたけどね。」


「おう、そんな感じだ。ただな。そこまでは行けていないんだが、南の方向は、真っ黒い闇の様なもので覆われていてな。異様な風景だったな。だいぶと遠くの方だったが、あれは危険な感じがする。まあ、その辺は分析班で確認してくれ。」


「そうか。なんかよくわからんが、すげーところだな。他のS級国家なら、何か知ってるかもしれん。その辺りは、探ってみる。とにかく、松田が楽しそうなのが一番の収穫だ。がはは。」


「そうだろ!もう楽しくてしょうがねえや。これが浪漫だよ。浪漫だ!改めて、橘には感謝しかない。」


 コンコン!


「龍作!おかえりなさい!」


「ああ。ただいま。詩織しおり。」


「詩織さん。お先にお邪魔してるわよ。」


「美咲さん。銀次郎さんも。ありがとうございます。

 あなたは橘 颯さんですね。松田 詩織です。初めまして。本当にありがとうございます。

 龍作が以前の様に生き生きしているのを見ることが出来て、本当に感謝してるのよ。」


「颯ちゃん。彼女は龍作ちゃんの専属担当よ。奥さんでもあるわね。」


「そうですか。初めまして。橘 颯です。

 松田さんの方がふさわしいと思って、お譲りしただけですので。」


「ふふふ。思った通りの人ね。ありがとう。」


「詩織が迎えに来たんなら、松田はそろそろ、解放してやるか。」


「そうね。近いうちにセッティングするから、続きはまた今度ね。それまでに分析は進めておくから。」


「そうか。気を遣わせて悪いが、そうしてもらえると助かるな。ははは。」


「みなさん、ありがとうございます。

 それじゃ、龍作!行きましょうか?」


「おう。頼む。それじゃ、またな。」


「失礼します。」


 パタン!


 やっぱりいいね。この雰囲気。

 宗方さんも藤堂さんも、怒ってたのに忘れてるみたい。


 地上世界型ダンジョンってどんな感じなんだろうな。行ってみたくはないけどね(笑)

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