第31話 お嬢様の作戦

 ◇◇◇◇◇


「最近さあ、女性4人は、探索以外の仕事が多くないですかね?上杉さん!」


「そうなんです。人気急上昇!今はモデルのお仕事がメインですけど、歌手としてデビューの話も出てるんですよ!」


「そうなの?」

「うわー、どんな感じなんだろ?」


「そうじゃなくて、レベル上げが疎かになってませんか?」


「そう言われれば、そうなんですけど。どちらも夢があるじゃないですか!

 みなさんの意見は尊重しますけど。」


「そうだけど。みんなは、どうしたいの?」


「私はやってみたいな!カラオケ好きだし。」

「桜ちゃんがやりたいなら、私も!」

「私は、うーん。どっちでもいいかな。」

「私は、颯くんの彼女になりたいかな。」


 約1名は相変わらずおかしい……。



 ◇◇◇◇◇



 ついにこの日が来てしまった。

 竜崎さんとの合同探索の日。

 粗相なきよう、対応しなければ。


「橘さん!おはよう!今日は楽しみね。」


「あれ?松崎さんは来ないんですか?」


「そ、そうね。急用ができたみたい。」


「え?じゃあ、2人ってことですか?」


「不満なの?」


「あ、いえ。聞いただけですから。」


「そう、じゃあ、行きましょうか?」


 俺たち2人は、千代田ダンジョンに入っていった。初めてのパーティ探索。



 ◇◇◇◇◇



「ほんと、呆れるわね。この辺りでも、瞬殺なのね。」


「そうですね。まだ28階ですからね。」


「私、後衛職だから、ほぼやることないんだけど……。まあ、おしゃべりが楽しいからいいけど。」


「いえいえ、魔法のスキルは憧れますよ。俺って何も使えないですから。素敵です。」


「そ、そう。私は素敵なのね。ふふふ。」


「そろそろ、引き返さないといけない時間なんで、あと少し行ったら、引き返しましょう。」


「もうそんな時間なのね。時の経つのが早いわね。でも、そうね。そうしましょう。」

(やっぱり、この人だわ。こんなに楽しいのは初めて。運命の人だわ。)



 ◇◇◇◇◇



「もう、30階なんで、そろそろ帰りましょうか?」


「ええ、そ、そうね。残念だけど。」


「はい、それじゃ、戻りましょう!」



「あ!痛ーい!足をひどく挫いてしまったわ〜!これは、歩けませんわ〜!」


「わ。すいません。ちょっと待って。

 これ、ポーション飲んでください。」


「ありがとう。でも、ポーションアレルギーなので飲めないわ〜。」

(本当はがぶ飲みするけど。)


「竜崎さん。ヒール系スキル持ってないんですか?」


「残念だけど、持ってないわ〜。」

(本当はスキル持ってるけど。)


「困りましたね。そろそろ引き上げないと、戻れなくなってしまいますし。どうしよう?」


「そうね。もう、私をおぶってちょうだい!」


「へ?」


「嫌なの?」


「嫌じゃないです!」


「なら、おぶってちょうだい!」


「はい!喜んで!」


(ふふふ。うまくいったわね!)



「じゃあ、おんぶしますね!」


 うわー。やっぱり、すんごいボリューム!

 見た目通り、朱美に負けてない。わかってたけど、これは凶暴!しかも、ものすごい、密着してきてる〜!お嬢様〜!


(これだけ、密着したらさすがに気になるでしょ!ふふふ。なんだか、モゾモゾしちゃって。大成功!もっと、密着しちゃうわよ!)


 あっかーん。観客総立ちでスタンディングオベーション!これだと、走りにくそうだなぁ。

 ちょっと、収まってくださいよ〜!


 思えば、久しぶりの密着だもんなぁ。

 引っ越ししてから、行く必要がなくなって、最近行ってないもんなぁ!ルームに!



「「え?」」



「ここどこ?」


 わー!やってしまった!

 ルームに行ってしまった〜!



「橘さん!何?何が起こったの?」


「竜崎さん!落ち着いて聞いてください!」


「はい!はい!何?」


 竜崎さんをソファに座らせて、ルームのことを打ち明けることにした。


「竜崎さん。驚かせてすいません。ちょっと、落ち着いてください。これ、ルームっていって、俺の隠しスキルなんです。」


「あ、そうなの。良かった〜!ビックリしたわよ!隠しスキルをお持ちだったのね。それにしても、いい部屋ね。」


「はい、これ秘密にしておいてください!」


「もちろん、いいわよ。2人の秘密ね。

 すごいじゃない!ロマンティックだわ。」



「えーと。竜崎さんで5人目です……。」


「え?」



「俺の同居人の4人は知ってまして……。」


「妹と同級生2人と妹の友達?」


「はい……。」



「5人目?」


「はい……。」



「全然、プレミア感がないじゃない!」


「はい……。 すいません。」



「まあ、いいわよ。秘密なのね?」


「はい……。 竜崎さんを信用して、今から説明しますので、秘密でお願いします!」


「そうなのね。いいわよ。秘密ね。」


「ありがとうございます。ちょっと、説明のために、2階に行きましょうか。」


「どこから行くの?」


「そこからです。おんぶしますね。」


「ううん、もう、足は治ったわ。行きましょうか。」


「え?治ったんですか?」


「うん、治ったわ。へえ、ここから2階へ行けるのね。すごいわね。そう言われれば、なんか、呼ばれてるような気がするわね。」


「そうですね。ここから行けます。」



 2人で2階へ。



「何か感じますか?」


「私、青色に部屋に惹かれるわね。入ってもよろしいかしら?」


「あ!やっぱり。どーぞ。」


 ガチャ!


「へえ、素敵な部屋ね。それとこれは、橘さんと同じもの?」


「はい、俺と同じ武器と装備です。ここに入れたので、竜崎さんに使えると思います。右手で触ってください。」


「え?いいの?」


「はい、そういう仕様なんだと思います。」


「そう。じゃあ、遠慮なく。」



〈ブルートラックスーツ〉

 種別:防具

 効果:防御力+1000

 所有者:竜崎 麗奈


〈タイガーシューズ〉

 種別:靴

 効果:瞬発力+1000

 所有者:竜崎 麗奈


童子切安綱どうじぎりやすつな

 種別:武器

 効果:戦闘力+1000

 所有者:竜崎 麗奈



「え?これって!」


「はい、俺と同じスペックの武器と装備です。

 同居人の4人も同じものを持っています。

 もう、竜崎さんのものですから、使ってください。」


「え?うっそー!信じられない!橘さん!嬉しい!ありがとう!」


 ムギュー!


 抱きつかれて、ぴょんぴょん跳ねてる!

 それダメ!すんごいボリュームですから!

 あっかーん!下半身の制御が効きましぇーん!バレちゃう!


「あ!ごめんなさい。つい、嬉しくってはしゃいじゃったわ。橘さん!これ着ていい?」


「はい、どーぞ!じゃあ、部屋の外に出てますから、着替えてください。」


「うん、ちょっと待っててね!」



 ふふ。すごく喜んでたな。これで最後の部屋だったけど、竜崎さんで良かったかも。



 そろそろ、着替えた頃かな?



 えーーー!何なの〜?なんか、光ってる〜!

 あれ?なんか、気が遠くなってきた……。ダメだ。


 

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