第24話 覚醒玉って何?

 ◇◇◇◇◇


 コンコン!


「入ってます!」


 ガチャ!


「局長!返し方が違いませんか?」


「お前こそ、ノックするなんて珍しいな。いつもは、そのまま入ってくるくせに。」


「それは、私だけのときです。

 橘君と早見さんも一緒なので、一応気を遣ったんですけどね。要らなかったようですわね。

 次からはそのまま入って来ますよ!」


「どうした?らしくないな。」




「……。 もう、殺しちゃおうかしら。」


「お!こっわ!昔に戻ったな。」


「龍作ちゃんがしょーもないこと言うから。」


「お前、俺の呼び方まで戻ってるぞ!

 で、どうしたんだ?」



「橘君、あれ出してくれる?」


「はい、これですか?」



「なんだ!このデカいスキル玉は?」


「触ったらわかるわ!」


 局長は、覚醒玉を右手で握った。



 !!!!!



 局長の両眼が大きく見開いていく。



「なんじゃごりゃーーーーー!」


 両手を突き上げて、叫んでいる。



「おい!これをどこで手に入れた?」


「ボスのドロップアイテムです。」



「なんだとーーーーーーーー!

 美咲ーーー!すぐ鍵を閉めろーーー!」


「ふふふ。昔に戻ったわね。」



 ガチャリ!



 ちょっと〜!鍵閉めてどうする〜!

 怖い〜!ヤバい〜!やめて〜!



「橘!頼む!これを俺に譲ってくれぇ!!!」


 わー!綺麗な土下座!って、え?



「この通りだ!頼む!頼みます!」



「あの〜。」


「この人はね。オタクなの。ダンジョンオタク。今でこそ、局長って立場だけど、元々、こういう人だから。ふふふ。」



「橘!お前に全部やる。命以外は全部やる。地位も情報も財産も。だから、頼む!」


「ちょ、ちょっと待ってください。まず、話を聞かせてもらえませんか?」


「龍作ちゃん。気持ちはわかるけど、落ち着いたら。」


「これが、落ち着けるかーーーー!」



 ◇◇◇◇◇



 なんとか、藤堂さんに説得されて、話の出来る状態になった。



「取り乱した。悪い。」


「そうね。昔を思い出して楽しかったわ。」


「松田局長と藤堂局次長って、どう言う関係なんですか?」


「肉体関係はないわ。」


「アホなこと言うな!当たり前だろ!

 親子ほど、年が離れてるのに……。

 美咲は、探索者時代の元パートナーだ。」


「この人は、探索者時代は、無茶苦茶だったわ。私が、日本ランキング2位になったときにスカウトされて組んだのよね。それで、初めてA級ダンジョンをクリアしたって訳。」


「ということは、松田局長が当時の1位ですか?」


「橘さん!協会のホームページは全然見ないんですか?上位ランキングは載ってますけど。

 松田局長は、現在も1位ですよ!

 探索者レベルは上限の99です。

 みんな、知ってますよ。」


「橘君。面白いわね。龍作ちゃんがダンジョンオタクって納得した?」


「はぁ。なんとなく。でも、ちょっと待ってください。俺って今は東日本1位ですよね。でも、日本ランキングは、松田局長が1位。これって……。」


「橘さん!ほんとにもう!いいですか!

 松田局長は、下関支部所属で南日本ランキング1位。日本ランキング1位。

 橘さんが、川崎支部所属で東日本ランキング1位。日本ランキング2位。

 藤堂局次長が、伊賀支部所属で西日本ランキング1位。日本ランキング3位。

 黒板くろいたさん、現北日本州支社長が、富良野支部所属で北日本ランキング1位。日本ランキング4位。ちなみに、この方が日本初のA級ダンジョン制覇者ですよ。

 これくらい常識なんですからね。

 覚えてください!試験に出しますよ!」


 早見さん、熱血指導ありがとうございます!


「登録支部は後で変更はできるけど、特にメリットもデメリットもないんで、みんな、最初の登録支部から変えないのよ。

 まあ、地元愛ってのもあるかしらね。」


「わかりました。ありがとうございます。

 で、松田局長は、覚醒玉をご存知だったんですね?」


「いや、聞いたこともなかったし、初めて見た。ただな……。

 ん?ちょっと待てよ。ま、いっか。

 ここから、言うことは国家機密だ。誰にも言うなよ!」


「そうね。たしかにここからの説明には必要だわね。

 颯ちゃん!咲夜ちゃん!絶対にお外で喋っちゃダメよ〜!

 特に咲夜ちゃん!もし、約束を破ったら〜……。 夜道に気をつけなさいね。」

 

「はい!はい!わかりました!

 喋りません!絶対に喋りません!」

(この人、眼がマジだ。殺される。やー!おしっこ、ちょっと出た(泣)。)


「それじゃ、話を続けるが、覚醒玉の存在は今まで知らなかった。

 だが、効果の第二覚醒ってのを聞いたことがあるんだよ。」


「はい、たしかに効果はそうですね。」


「この前は、S級昇格の条件は、まだわかっていないと言ったが、嘘ではないが、わかってることもある。

 S級探索者は、なぜか、レベル上限を超えているんだよ。4人ともだ。

 どうやって、上限を越えるのかは、S級国家しか知らないが、『レベル上限に至ったものが、第二覚醒をすると、限界突破する。』という噂は掴んでいた。

 そこに来て、この覚醒玉の存在だよ!

 ここに点と点が繋がった訳だ。」


 なるほど、だからあの土下座か〜!納得。


「ちなみに、今現在、日本でこれを使用できるのは、俺だけだ!ふふふ。」


 これ何?アピール?



「龍作ちゃん!あなたの財産じゃ雀の涙よ。仮に、これをオークションにかけてみたらどうなると思う?国家予算が動くわよ。そういう代物だわ。

 それに、颯ちゃんは、もうすぐ上限に到達するわ。そうなったら、条件は満たすわね。」



「ぐーーーー!俺の夢がーーーーー!」


 この人、笑いながら、号泣してる!怖っ!


「第二覚醒……。 限界突破……。」



「元気出しなさい。これで、少なくとも、日本がS級国家になるのよ。喜ばしいことだわ。

 でも、颯ちゃん!これは大変なことになるわ。世界で5人目のS級探索者になるんだから。

 期待してるわよ。ふふふ。

 どんな騒ぎになるか、楽しみだわ。」


 え?それは嫌だ〜!


「わかった。俺も橘をサポートしよう。

 これから、総理と話をしてくる。

 くれぐれも、ここでの話はここだけにしておいてくれ。漏れれば、大変なことになる。

 美咲!お前も来てくれ!」


「わかりました。颯ちゃん、咲夜ちゃん。続きは今度話しましょう。今日は、ありがとう。」


「はい、失礼します。」

「失礼します。」



 そのあと、早見さんに車で送ってもらって、家に帰った。その間、早見さんは何かブツブツ言いながら、運転していた。


 俺がS級?うーん、これ以上、目立ちたくないんだけどなぁ……。

 

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