第19話 A級探索者登録

 ◇◇◇◇◇


 なんか、昨日は気持ちいい夢を見たな。

 ふふふ。グフフフフ。


 まだ眠いから、もうちょっと寝とこ。

 今日は、探索はお休みだし。

 うーん。すごく気持ちいい。

 すごく柔らかい。

 すごく柔らかいな……。

 ん?すごく柔らかい?え?


「颯、おはよう!」

「颯くん、おはよう!」


 え?えー!


「な、なんでいるの?」


「昨日の夜中ね。」

「そう。昨日の夜中に。ふふふ。」


 俺が探索は休みということで、昨日は4人がルームでお泊まりすると言い出した。

 みんな、各自の部屋で就寝していたはずなのだが、朝起きると、なぜか、静と朱美が。。。


 俺、変なことしてないよね?

 いや、むしろ、されてないよね?


「お兄ちゃん!おはよう!って、なんで、静姉と朱美さんがいるの?」


「桜、どうしたの〜?えーーーー⁉︎」


「お兄ちゃん!もう!童貞のくせに、いきなり3人?早すぎない?」


「え?桜ちゃん……。」


「ち、違う。誤解だ〜!何もない!何もないはずだ!静、朱美、誤解を解いてくれ!」


「うん、そうね。でも、嬉しかった。」

「うん。心が満たされたよ〜!」


「ちょっと〜!」


「誤解だ〜!」


「「ふふふ。」」



 ◇◇◇◇◇



 今日はA級探索者登録のために、東京丸の内にある日本探索者協会、通称JSAの本社ビルに来ている。東日本州支社は本社ビルの中にある。


 ちなみに州支社はそれぞれ、

 北日本州支社:札幌

 西日本州支社:大阪

 南日本州支社:福岡

 に所在している。


 これは、別に大都市に所在しているわけではなく、日本に存在する4つのA級ダンジョンに隣接されているだけである。たまたまであって、断じて、設定上わかりやすいからではない。


「橘 颯です。A級探索者登録に伺いました。」


「お待ちしておりました。」



 ◇◇◇◇◇



 コンコン!


「どーぞ!」


 ガチャ!


「橘 颯さんをお連れしました。

 写真撮影はすでに終わりました。」

(え?なぜ、一緒にあの2人がいるの?)


「ありがとう。」


「はい、失礼します。」



「橘君。お掛けください。

 私は、東日本州支社長の大久保 俊也としなりです。A級探索者昇格おめでとうございます。」


「橘 颯です。よろしくお願いします。」


「ここまで、若くしてA級になったのは、藤堂さん以来ですかね。将来が楽しみですよ。」


「ありがとうございます。」


「今日は、特別に防衛省・探索局から、局長の松田 龍作りゅうさくさんと局次長の藤堂 美咲さんもお越しくださってます。

 後ほど、お話があるそうです。」



「では、早速説明に移りますね。

 ここからは、私、早見 咲夜さくやが担当します。よろしくお願いします。


 まず、本日をもって、A級探索者となるわけですが、A級探索者には、新しい義務と優遇が発生いたします。

 まず、義務ですが、A級探索者のみで構成される組織である『A-Grade Seekers Club』通称AGSCに加入いただきます。

 こちらの組織は、国際的な組織ですので、同時に探索者ランクは国際A級という形になります。

 AGSCのメンバーは、スタンピード等アクシデント発生時に派遣要請がかかります。

 その際には、現地に赴き、処理を行なっていただくことになります。

 これが、A級探索者の義務の部分になります。

 要請を理由なく応じなかった場合は、探索者資格抹消処分になる場合がございますので、ご注意ください。」


 へぇ、結構、重い義務と重いペナルティが発生するんだな。


「その代わりに、AGSCメンバーには、月1200万円の報酬を振り込ませていただきます。

 こちらは、要請待機への報酬で、何もなくても、支払われます。派遣された際には、それに応じた特別報酬が別に加算されます。」


 え?月収1200万!嘘!桁がおかしい。大丈夫?


「ここまでで、何か質問はありますか?」


「義務はわかりました。派遣要請はどうやって連絡が来るんですか?」


「はい、後ほど説明する予定でしたが、この指輪型通信装置をお渡しします。

 こちらは、地下迷宮型に限りますが、ダンジョン内でも通信可能になっており、探索者の現在地の把握と音声通信が可能です。」


 わー、出ました。ダンジョンの通信はすごいけど、現在地まで把握されるのね……。 しれっと、プライバシー侵害……。


「なるほどです。地下迷宮型ってなんですか?」


「はい、ダンジョンには、地下迷宮型と地上世界型が存在します。現在、日本で探索可能なダンジョンは、地下迷宮型に限られますので、特に気にする必要はありません。」


「へぇ。そうなんですね。

 あと、報酬がすごいですけど、そんなにもらっても大丈夫なんですか?」


「はい、全く問題ございませんよ。ふふふ。」


 わー、変なこと聞いたのかも?


「A級探索者って、何人くらいいるんですか?」


 俺って、全然知らないから。


「現在、橘さんを入れて、日本全国で114名ですね。橘さんは最年少A級探索者ですね。

 今までは、そこにいらっしゃる藤堂局次長が、最年少でした。」


「へぇ。いろいろすいません。この辺りのこと、ほとんど知らないんで。」


「大丈夫ですよ。期待の新人ですから。大物感があっていいと思いますよ。ふふふ。

 では、続けますね。

 次に優遇事項ですが、国内では、A級特殊国家公務員、通称A特という肩書きになり、公共交通機関がすべて無料になります。また、全国の国営施設や提携施設はすべて無料でご利用いただけます。」


 なんじゃそりゃ!お腹いっぱい。


「さらに、これが目玉なんですが……。」


 まだ、あるの?


「複数の方との結婚、つまり、重婚が可能になります!」


「へ?」


 わ!声出してしまった!


「ふふふ。いいリアクション、ありがとうございます。重婚はどう思いますか?」


「ちょっと、やりすぎじゃないですかね?」


「そうですよね。私もそう思います。

 ぜひ、ご活用ください。」


 なんか、言ってることめちゃくちゃだ。


 あとでわかったことだが、A級探索者登録を拒否する人、特に男性の拒否者が増えたため、それを防ぐための苦肉の策だったらしい。

 効果があったかと言うと、実は意外にもあったらしい。


「説明は、以上になります。

 何か質問はありますか?」


「大丈夫です。」


「では、こちらに署名をお願いします!」


 サラサラ!


「ありがとうございました♪(ヨシッ!)

 今後、何かありましたら、私が窓口になりますから、なんでも言ってくださいね!

 こちらが連絡先になります。

 では、私はこれで失礼します!」


 なんで、この人、小さくガッツポーズしたの?


「それでは、州支社での手続きは完了したので、私もこれで失礼しますね。

 本日の官報そして全国のニュースで、あなたの名前が顔写真付きで出ますからね!

 楽しみにしておいてください!では。」


 全然、楽しみじゃねえ〜!

 目立っちゃう〜!全国で114名しかいないとこういう扱いになっちゃうんかなぁ?


 ところで、局長と局次長が残られましたけど、何の話でしょうか?

 空気がものすごく重いです……。

 


 

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