第20話 局長松田龍作

 ◇◇◇◇◇


「探索局局長の松田龍作だ。今日は少し話がしたい。」


 わー!威圧感ハンパない。


「緊張しなくていい。少なくとも、君には好意を持っている。少し質問するだけだよ。」


 好意を持っているようには見えません!


「君は異常なレベルの上がり方をしているね。

 ただし、スキルは持っていない。

 何か秘密がありそうだが。」


 どうしよう。隠しスキルのことは言ったらダメなような気がする。武器と装備のことだけ話すか?それもボロが出そう……。


「初対面では、教えられんか?

 まあ、そうだろうな。俺でもそうする。

 じゃあ、質問を変えよう。

 橘君は、日本に何人のS級探索者がいるか、知っているかな?」


 S級探索者かぁ。最上位がS級なのは知ってるけど、全然知らないな。


「わかりません。」


「ゼロだよ。過去を遡ってもゼロだ。

 日本は、探索者後進国なんだよ。」


「すいません。俺、学校でダンジョン学とか取ってなかったんで、全く知らないんです。」


「そうか。まあ、気にしなくていい。じゃあ、S級探索者になるための条件は、なんだと思う?」


「A級ダンジョンを制覇することですよね?」


「そうだな。学校でもそう教えている。

 でも、実は違ったんだよ。

 日本には、A級ダンジョンを制覇した探索者は、3名いるんだ。逆に言うと3名しかいない。

 そのうち2名は、日本にある4つのA級ダンジョンをすべて制覇しているんだ。

 それでも、S級にはなっていない。

 探索者の等級とは国際基準でね。これを満たさないとS級ダンジョンには、入れないんだよ。」


「S級昇格の条件は、なんだったんですか?」


「まだ、わからない。」


「それじゃ、S級探索者っているんですか?」


「世界には4人いる。アメリカ合衆国、中華人民共和国、ロシア連邦、フランス共和国。

 この4国をS級国家と呼ぶ。探索者先進国だ。

 条件を知っているのは、この4国だ。

 ただし、条件を知っていても、それ以上増えないということは、それだけ特殊な条件なんだろうと考えている。」


「へぇ、世界で4人だけなんですね。」


「そうだ。S級ダンジョンに入れるのも、この4国だけだ。言い方を変えれば、地上世界型ダンジョンに入れるのが、この4国のみと言うことだ。」


 へぇ、S級ダンジョンが、地上世界型ダンジョンなんだな。だからか。


「俺は、橘君がA級ダンジョン制覇者の4人目になると考えている。」


「はぁ。そうですかね。」


「君は、その歳ですでに異常な位置にいる。

 藤堂、モニターに橘君の情報を映してくれ。」


「はい。」


 カチャカチャ。


 橘 颯 25歳 日本🇯🇵

 東日本州・川崎支部所属

 探索者シーカーランク:国際A級

 東日本ランキング:1位

 日本ランキング:2位

 世界ランキング:423位


 え?東日本ランキング1位?

 日本ランキング2位?


「橘君!探索者レベルは76だな。」


「はい、そうです。」


「日本で、そのレベルを超えているのは、1人だけだよ。」


 他人のレベルはわからないから、レベル76って、そんなに高かったんだ。ヤバ。


「橘君、俺はS級ダンジョンに興味があってね。

 それを追い求めている。浪漫だよ。

 もちろん、国家としては、新しい資源が目的なんだろうが、俺としては、それはどうでもいいんだよ。これは外では言えんがね。」


 なんか、この人いい人に思えてきた。


「とにかく、君には、S級の条件を追い求めてほしい。まずは、A級ダンジョン制覇と探索者レベルの上限レベル99を達成してほしい。

 その後、もう一度会って、話をしよう。」


「わかりました。

 いろいろ教えていただき、ありがとうございます。」


 これってどこまでが、機密情報なん?

 それを教えてほしいんだけど……。


「私からも一言。引越しした方がいいわよ。」


「え?どうしてですか?」


「たぶん、帰ったらわかるわ。

 困ったら、早見さんに連絡しなさい。」


「はぁ。」



 ◇◇◇◇◇



 はー、疲れた。今日はヘビーだったな。


 ナンジャコリャ!

 うちの周りに取材陣が包囲してるやん⁉︎

 どうやって入ったらいいのよ〜!

 これか!藤堂さんが言ってたのは!


 プルルル!


「はい、早見です。橘さん?どうしたんですか?」


「うちの周りに取材陣が!」


「なるほど、それは油断しました。すいません。では、今から迎えに行きますので、家でお待ちください。」


「いや、入れないんです。」


「それは、大丈夫ですよ。A級探索者は、保護されてますから、写真や映像は撮られると思いますが、声をかけたり、体に触れるだけでも犯罪になりますから、そのまま無視して、家に入ってください。」


「はぁ。そうなんですね。」


「では、すぐ行きますので。」



 ◇◇◇◇◇



「ただいま……。 やっと入れた。」


「おかえり!なんか、ぐったりしてるね。」


「颯!すごいことになってるね。」

「颯くん、東日本ランキング1位って!」

「しかも、日本ランキング2位!」


「相変わらず、みんな来てるんだね。」


 また、やってるよ。

 お兄ちゃん、これ見て!


『本日のニューストピックスです。

 まずは、こちらのニュースから。


 本日、新しいA級探索者が誕生いたしました。


(今日撮った顔写真がバーン!)

(その横に、どこから持ってきたのか、キル○ルスーツの全身写真がバーン!)


 橘 颯さん、東日本州川崎支部所属の25歳。』


「お兄ちゃん、写真写りいいね!」


 何を呑気に言うとんねん!


『現在までの防衛省・探索局の藤堂局次長の記録を抜いて、日本最年少のA級探索者となりました。


 さらに、いきなりの東日本ランキング1位となり、こちらも最年少記録を更新いたしました。

 また、日本ランキングについても2位となっています。』


「このニュース、ずっとやってるね。」

「うん、何回聞いてもいいよね〜!」

「うん、いい。」


「俺、こんなになってるって知らなくって、なんか、みんなにも影響ありそうで、怖いんだけど。とにかく、帰った方が良くない?」


「うーん。どうしようかな?」

「私は楽しいけどね〜。」

「そっか。帰った方がいいかな?」


「桜!お前は俺と一緒に出ていくからな。

 今から、協会の人が迎えに来るから。」


「なんで?」


「ん?なんでだろ?ま、とにかく、迎えに来るから、準備して。」


「わかんないけど、了解!」



 ◇◇◇◇◇



「早見さん、すいません。」


「いえいえ、いいですよ。私は橘さんの専属担当ですからね。いつでも呼んでください。」


「それにしても、なんで、みんなついて来るの?車が7人乗りだったから、乗れたけど。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。

 でも、どう言う関係なんですか?」


「同級生と同級生と妹と妹の親友ですね。」


「そうですか。ふーん。なるほど。ふむふむ。

 まあ、いいんじゃないですかね。

 橘さんは、重婚OKになりましたからね!」


「あ!そっか。A級探索者の優遇!」

「え、そうなの〜?ガチいいじゃん!」

「お兄ちゃん、良かったね!」

「それって確か、何人でもいいんだよね?」


「お前ら、まさか、重婚賛成派か?」


「「「「もちろん。」」」」


「ははは!みんな、面白いね!

 私も混ざっちゃおうかな。ってか!」


 この人、溶け込んでる。すごい能力。


 でも、これってどこに向かってるの?

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