第16話 緊急会議〈ルーム〉

 ◇◇◇◇◇


 川崎ダンジョンが、モンパレ調査のため、封鎖されて1週間。発生元が地下6階ということはわかったが、発生原因は不明との発表があった。モンパレの習性上、異常発生した魔物は、なぜか地上を目指す傾向があるため、地下7階以下に潜っていた探索者は、無事だったらしい。


「モンパレなんて、調べたことなかったから、初めて知ったけど、地上を目指すんだね。

 桜、知ってた?」


「お兄ちゃん、知らなかったの?」


「え?普通知ってるの?」


「高校のダンジョン学の授業で習うからね。」


「へぇ。俺取ってなかったかも。」


「必須科目だよ。絶対取ってるから!

 でも、ダンジョン史で、日本では、スタンピードもモンパレも、過去にC級では発生してなかったはずだけどね。」


「へぇ。桜、詳しいね。

 もしかして、ダンジョン史も必須科目?」


「そうだよ。お兄ちゃん、高校に何しに行ってたのよ!」


「あれ?授業の記憶がない……。」


「寝てたね?」


「いや、そんなはずは……。」



 ◇◇◇◇◇



「そういうことね。桜ちゃん。

 ほんとに、ダンジョン学とか、ダンジョン史とかの科目は、私たちの世代では、必須ではなかったのよ。」


「ほらー!やっぱり〜!

 記憶になかったもんな。」


「そうなんだ。7年で変わるんだね。」


「ただ、必須科目ではなかったけど、選択科目にはあったから、普通はダンジョン関係はみんな興味があるから、取ってるんだけどね。」


「え?そうなの?俺、取ってないよ。」


「私も取ってないよ。選択科目はゼロだね〜。」


「でしょ!朱美と俺で2票!マジョリティ!」


「いやいや。たまたま、マイノリティが、ここに集まっただけだから!」



 実は、ここはルームの中。4人でくつろぎ中。


 川崎ダンジョンが封鎖されてから、静と朱美は、なぜか、毎日うちに来ている。

 というのも、川崎ダンジョン以外で、最寄りのC級ダンジョンとなると、所沢ダンジョンになる。行けないことはないが、2人の療養も兼ねて、封鎖解除までは、探索を中断している。


 で、今のところ、近隣の学校も休みで自宅待機。桜は、いつもは、近所の若葉のところに遊びに行っているが、今日はうちにいるみたい。

 若葉はうちに来てない。



「ところで、今日は、私がここにいるのには、理由があります!」


「そうだな。いつもは若葉と一緒なのに、どうしたんだ?喧嘩したか?」


「もう!したことないよ!

 今日は、お兄ちゃんと静姉と朱美さんに相談があるの!」


「うん、何?」


「では。

 ここに第一回緊急会議を開催いたします!」


「なにそれ?流行ってんの?」


「お兄ちゃん!いちいちうるさい。黙って聴け!」


「はい……。」


「お兄ちゃんは、これからも1人で探索に行くでしょ。静姉と朱美さんもペアで探索するじゃない。私は、若葉とペアで探索に行く約束してるんだよね。卒業してからだけど。」


「ふんふん、それで。」


「若葉もルームに呼びたいんだけど。」


「ふんふん。なるほど。」


「お兄ちゃん。静姉。朱美さん。」


「そうね。私は、そうしてもらえると、嬉しいけど。颯次第だよね。」


「そうだよね〜。若葉ちゃんは大丈夫だと思うけど、颯くんが決めるべきだよね〜。」


「そうだな。若葉ならいいかな。」


「やったー!今からでもいい?」


「いいぞ!」


「じゃあ、若葉を呼ぶね。お兄ちゃんも来て!」


「おう!」



 ◇◇◇◇◇



「こんにちは〜!」


「若葉!いらっしゃい!」

「若葉!早かったな!」


「あれ?颯兄はやにいと2人?お姉ちゃんも来てると思ったんだけど。」


「うん、来てるよ。ちょっと、別のところで待ってもらってるから。」


「そうなんだ。で、秘密の話って何?颯兄も関係あること?」


「うん、関係あるよ。まあ、座ってよ。」



 ◇◇◇◇◇



「へぇ。すごい!なんか信じられないけど、お姉ちゃんもそこにいるんだ!」


「うん。だから、若葉もなかまになって欲しくって誘ったの。」


「わー!ありがとう!なんかドキドキするね。」


「じゃあ、若葉、ちょっと見ててね。」


 ムギュー!


「えー?桜!そんなに密着するの?」


「うん、そう。いろいろ試したからね。たぶん、密着する面積とかが関係すると思うんだよね。だから、このくらいは必要。」


「そっか。ちょっと恥ずかしいけど、今の颯兄ならいいかな。」


 ちょっと!今のって聴こえたぞ……。

 昔の俺だとダメってこと?ショック。


「じゃあ、また、戻ってくるから、ここで待っててくれ!ルーム!」


「わ!ほんとに消えた!?」



「戻ってきたぞ。」


「颯兄!すごい!」


「うん、じゃあ、行くか!」



 ◇◇◇◇◇



 やっぱり、7年という月日は人を成長させる。

 特に若い女性の成長曲線は急峻だ。

 若葉もまた、急峻な成長をしていた。


「わーーーー!すごい部屋だね!ビックリしたー!」


「若葉!来たね!」

「若葉ちゃん。仲間入りだね〜。」


「あ!お姉ちゃん!朱美さん!」


「この部屋すごいよね!私たちは、来た時がちょっと特殊だったけどね。」


「すごい。ちょっと見ていい?」


「ああ、いいぞ。」


 やっぱり、こういう反応になるよね!

 この部屋は凄すぎる。


「若葉!2階に行ってみよっか?」


「2階もあるの?」


「あるんだよ。一緒に行くよ。」


「うん、わかった。」



「へぇ。6つ部屋があるんだね。」


「そう。4つの部屋は、俺たちの部屋なんだ。」


「え?お姉ちゃんたちも部屋があるの?」


「そう。黄色が俺。桃色が桜。紫色が静。赤色が朱美。なんだけど、若葉は何色?」


「何色って……。 え?緑色かも。」


「よし!じゃあ入ってみて!」


 ガチャ!


「わー!すごい!この部屋が私の部屋?」


「そうだよ!」


「嬉しい!」


「それと、その武器と装備も若葉専用。呼んだ理由は、これがメインかな。」


「これって、桜の言ってたチート装備じゃん!」


「そう。右手で触ってみて!」


「え?私にも!やった〜!」



 ○緑色の部屋


〈グリーントラックスーツ〉

 種別:防具

 効果:防御力+1000

 所有者:桂木 若葉


〈タイガーシューズ〉

 種別:靴

 効果:瞬発力+1000

 所有者:桂木 若葉


大典太光世おおてんたみつよ

 種別:武器

 効果:戦闘力+1000

 所有者:桂木 若葉



「もう、凄すぎて、何も言えない!」


「若葉!これで一緒に探索できるね!」


「うん!ありがとう!桜!颯兄!」



 ◇◇◇◇◇



 ルームのリビング。


「これで、正式に若葉も仲間入りだな。」


「うん!」


「良かったね!若葉!秘密のライムのグループも招待しておくよ。」


「桜!ありがとね!」


「これで、この秘密を知っているメンバーは、5人になった訳だが、これで本当に打ち止めだよ!

 これ以上は、増やさないからね!」


「そうだね。これ以上は、リスクがあるもんね。」


「念のためだけど、この秘密は絶対厳守だぞ!」


「わかってるって。」

「うん。」

「もちろんだよ〜!」

「ラジャ!」


 ここに、5人の秘密同盟が発足した。

 (いえいえ、そんなに大層なものではないですから。)

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