第12話 川崎ダンジョン③

 ◇◇◇◇◇


 もうすぐ、地下2階の出口だ。

 仕組みはよくわからないけど、転移陣は通っておかないと、あとで何か言われても困るから、そろそろ、出てきてもらうか。


 ルーム!


 「お2人様!そろそろ出番です。」


 「うん、了解!」

 「ラジャ!」


 「入るときは、特殊なんだけど、出るときは、ルームから外に出るイメージで出られるから。やってみて。先に出ておくから。」



「お!静来た!朱美も来た!」


「あー、ダンジョンだー!

 トラウマになるーー。」


「ほんと、ちょっと嫌な感じする。」


「ルーム最高だった。戻りたい!」


「ごめん!辛抱して!」


「そんじゃ、腕組んでいい?」


「まあ、オーケーかな。」


「あの。私もいいかな?」


「そ、そうだね。反対側でよければ。」



 ◇◇◇◇◇



「あ!藤堂局次長。戻ってきたみたいですね。2人の女性も一緒ですよ。良かった〜。」



「おーい!」


「あ!魔物を食い止めてた人。」




「討伐ありがとう!救出に成功したんですね!すごいよ!」


「はい、たぶん、全部狩ってきたと思います。」


「おー!それはすごい!助かったよ!

 申し遅れたが、私は、協会の職員で佐久間 明人あきとです。肩書きは、川崎営業所所長をやってます。

 探索者としては、C級だけどね。」


「あ、はい。若く見えますけど、所長さんですか。」


「ははは。もうすぐ、40歳になりますよ。若く見えるなら、嬉しいね。

 それで、こちらは防衛省・探索局のナンバー2、局次長兼局長秘書の藤堂 美咲みさきさんです。

 ちなみにA級探索者ですよ。」


「藤堂です。この度は、ご協力いただき感謝します。橘くんでいいかしら?」


「あ!すいません。橘颯です。」


 なぜ、知ってるんだろ?


「お疲れだと思うから、一旦営業所に戻りましょう。女性たちもその格好じゃ、あれだからね。」


「あ!そうですね。」


「それじゃ、まず、地下1階に戻りましょう。」



 ◇◇◇◇◇



「それじゃ、これに乗って!」


「これなんですか?」


「高速浮遊移動艇よ。簡易的なもので、防御性、耐久性はないの。移動のみのために開発されたものよ。普段はこれの使用は禁止されてるけど、緊急時のみ許可が出るのよ。今回も許可は得てるから。速度重視なので、出口までは、すぐ着くわ。」


 静、朱美、俺、佐久間さん、藤堂さんの順で乗り込んだ。


「探索局員は、地下2階の魔心とアイテムの収集をお願いします。完了次第撤収してください。

 その後、川崎ダンジョンは調査のため、一時封鎖します!」


「「「「「「ラジャ!」」」」」」



 ◇◇◇◇◇



 川崎営業所に戻って、静と朱美と俺は、藤堂さんから事情聴取を受けた。

 2人は、サイズを言って、下着とジャージを買ってきてもらって、それに着替えていた。

 俺はいつもの通り、個室トイレでお着替え。


 みんな、ルーム以外のことを正直に話した。

 ただ、バスローブのことはちょっと苦しかった。風呂も入ってるしね。

 まあ、なんとか、静が誤魔化してくれて、事情聴取を終了した。


 そのほか、今回はほとんどの討伐を俺がしたので、局員の方が収集した魔心の買取金額の8割は、俺に還元されるとのこと。アイテムは、所有者未定の状態で、すべていただけるらしい。

 まあ、ほとんど落ちなかったけどね。


 翌日以降、佐久間さんを訪ねてくれってことだった。そこで精算するとのこと。



「ふー、疲れたー!」

「疲れたね。」

「超お疲れちゃんだよ。」


「これから、帰るよね。大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも。原付のキーがない。」

「あ!私もだ!」


「それじゃ、みんなでタクシーで帰るか。」

「そうだね。」

「後ろ3人、真ん中が颯くんで!」



 3人の家同士は、歩ける距離にあるので、明日正午、2人にうちに来てもらって、俺の秘密について教えることになった。

 なので、今日は、おとなしく自分の家に帰ってもらった。



「ただいま〜!」


「お兄ちゃん!おかえりなさい。良かった〜!

 今日、川崎ダンジョンでモンパレがあったけど、大丈夫だったんだね!

 心配してたんだよ。

 ライム(LIME)も既読にならないし。」


「あ!ほんとだ。悪い。見てなかった。」


「もう!まあ、いいよ。無事だったしね。」


「ああ、気をつけるよ。」


「お兄ちゃん。モンパレに会ったの?」


「あー。ガッツリと。

 それでな、いろんな事情が複雑に絡み合って、結果、静と同級生の朱美をルームに連れていったんだ。」


「えーーーー!大丈夫なの?」


「たぶんな……。

 明日正午、詳しいことを教えるために、ここに2人が来る。」


「ふーん。静姉はともかくとして、朱美さんって、あの超巨乳の綺麗な人でしょ!

 そういえば、私、明日学校休みだった。」


「嘘つけ!」


「お兄ちゃん!!明日は学校休みだよね!!」


「うん。そう言えば、そうかも。」



 ◇◇◇◇◇



 防衛省・探索局の局長室にて。


「局長!戻りました。」


「ありがとう。鎮静化したらしいな。」


「はい、しかも、たった1人で。」


「ほう。A級が間に合ったか?」


「いえ、C級です。以前お話しした異常な速さでレベルが上がった彼です。」


「そうか。たしか、川崎支部だったな。」


「そうです。接触を禁止されていましたが、今回は、事情聴取という形で、少し話をしました。」


「なるほど。で、どうだった。」


「一言で言えば、普通の好青年ですね。

 ただ、何か隠してますね。」


「ふむ。わかった。そいつは、これからも自由にさせろ。ただし、引き続き、情報はアップデートして、私に送れ!

 あと、藤堂に限り、接触を許可する。」


「はい、承知しました。失礼します。」



 ふむ、実に興味深い。

 でも、まだ早いな。ふふふ。


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