第10話 川崎ダンジョン①

 気持ちが吹っ切れたので、今日から俺は!


 オラオラ!やってやんぞ!

 てな感じで、C級ダンジョンである川崎ダンジョンに来てます。


「やっぱり、静たちも来てるな。声はかけないでおこう。」



「あ!颯くーん!」


 あ!朱美に見つかった。

 どんだけ目がいいんだよ!


「お友達からお願いします!」


「ごめんなさい。」


「ちょっぱやじゃん!ひどくない!」


「そっちこそ、変わり身がちょっぱやなんだけど。」


「大丈夫!そこは気にしないよ。」


「そういうもんなの?」


「そういうもんだよ。気にしすぎだよ。」


「なんかすごいね。尊敬する。」


「お!一歩前進!

 尊敬から始まるのもありかもね。」


「そ、そうだね……。」


 上官殿!超ポジティブモンスターを発見いたしました!パン!



「颯!来てたんだ。」


「お、おう。」


 桜があんなこと言うから……。

 気になるだろー!



「え?颯って、お前!ゆでたまごなのか!?」


 あー、こいつらもいた。台無しだー!

 腹立つけど、ここは、スマートにいくか。



「尾張!三河!俺もC級になったよ。」


「はぁ?なんだそれ?」

「お前!調子乗ってる?」


 え?

 これダメ?

 え?嘘〜ん!

 前回、俺がお前らの攻撃を全部避けまくったの覚えてないの?記憶喪失?



「颯!私たち、行ってくるね。」

「あ!そうだね。静!颯くん、またね!」


「おい!ちょ、待てよ!」

「おい!」


「「覚えとけよ!!」」


 うわー、出たー!

 本当にこれ言うやついるんだ!?


 上官殿!超旧型天然記念物を発見いたしました!パン!パン!


 それと。静!朱美!

 サンキュ!ソ〜マッチ!



 いや〜、どっと疲れたわ〜!

 できれば、もう天然記念物とは会いたくないなぁ!早く、B級になってしまいたい。



 ◇◇◇◇◇



 少し時間を空けて、俺もすでに川崎ダンジョンの地下1階に来ている。


 C級ダンジョンは、中級ダンジョンと呼ばれており、地下10階以上のものを指す。

 川崎ダンジョンは地下17階構成。1階層の面積もD級の比ではなく、とてつもなく広くなる。

 

 当然、ここのマップはダウンロード済み。


「オシ!狩りまくるぜ!」


 地下1階の魔物は、いきなりのワーウルフだ!

 C級に上がったばかり人は、ここで軽く洗礼を受けるらしい。


 でも、俺の場合、常に一撃。ノーダメージ。

 なので、魔物より、この広さの攻略の方が難易度が高い。もう、ものすごい数の魔物を狩ってますから。



 そして、やっと、前方に地下2階への転移陣が見えてきた。


 青の転移陣が地下2階へ下る転移陣。

 赤の転移陣が地下2階から上がってくる転移陣。


 でも、ちょっと様子がおかしい。


 赤の転移陣から、大勢の探索者が慌てて戻ってきている。


『モンパレが発生した〜!!』


 慌てて戻ってきている人が叫んでいる。


『地下2階で、モンパレや〜!

 オークが大量発生や〜!』


 え?オーク!

 たしかに2階で出る魔物じゃない。


 でも、なんとかなるやろ!行くか!


 そこへ、尾張と三河も転移陣から戻ってきた。

 急いで逃げる彼らに声を掛ける。


「おい!尾張!三河!静と朱美は?」


 一瞬、ぎょっとして2人と目が合うが、2人とも無視して通り過ぎようとした。

 慌てて、2人を捕まえて、再度聞いた。


「おい!静と朱美はどうした!?」


「離せ!知らん!」


「おい!」


「うるせえ!離せよ!」


 2人は、俺を振り払って、逃げていった。


 (静と朱美に何かあったんだ。)


 俺は、すぐに青の転移陣に乗った。



 地下2階に降りると、すでに惨状となっていた。逃げる人と辛うじて戦っている人。オークの大群が押し寄せている。



「どうなってるんですか?」


「ダメだ!周りでもだいぶ死んだ。奥にいるやつらは、たぶん無理だ。余力があるなら、少しでも食い止めてくれ!」


「わかりました。女性の2人組を見ませんでしたか?」


「あー、見たが、さっきオークに連れ去られてしまった。申し訳ない。あいつらは、女性は殺さず持ち帰りやがる。」


 たぶん、静と朱美だ。やばい。


「ありがとうございます。」


 パシュ!パシュ!パシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!


「へ?」


「これなら、なんとかなりそうです!

 俺は、ここを突き切って2人を助けに行ってきます!ここはお願いします!」


「あ、あー。わかった!頼んだぞ!」


「はい!」


 そこからは、怒涛の一撃必殺!お掃除マシンと化していった。


「あいつは何者だ!?」


 彼の驚きも納得である。

 今回のモンパラは、オークのみならず、上位のブルーオーク、グリーンオーク、レッドオークの混合で押し寄せてきていたからである。


「とにかく、助かった。」



 ◇◇◇◇◇



「静〜!朱美〜!」


 俺は叫びながら、怒涛の討伐を繰り返し、突き進んで行った。


 くそー!どんだけいるんだよ!

 魔物も多いが、死体も少なくない。探索者の宿命とは言え、不運としか言いようがない。


 くそー!こいつらは余裕だけど、早くしないと、見つからなくなるぞ!それはまずい!絶対に変なことされる!嫌だ〜!



「静〜!朱美〜!」



「颯〜!」


 あ!微かに静の声が。


「助けて〜!」


 今度は朱美の声が。

 間違いない!近くまで来たんだ!

 良かった〜!まだ、生きてた!


「静〜!朱美〜!今行くぞ〜!」



 ◇◇◇◇◇



 国防省・探索局の局長室にて。


「局長!川崎ダンジョンで大規模なモンパレが発生いたしました。多数の死者が出ているようです。」


「規模は?」


「はい、オーク、ブルーオーク、グリーンオーク、レッドオークの混合で、詳細規模不明。少なくても、1000体以上との報告です。」


「それはまずいな。まだ、外には出てないのか?」


「はい、地下2階で食い止めている模様です。

 先程、近隣支部のA級探索者への応援要請をかけました。」


「わかった。お前も行ってくれ!外に出さないように頼む。」


「はい、了解いたしました。失礼します。」



 ついに日本でもC級で発生か……。


 

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