第8話 世田谷ダンジョン

 ◇◇◇◇◇


 今日は思い立って、電車で最寄りのD級ダンジョンである世田谷ダンジョンに来ている。


 ついに探索者再始動を決意。

 何故って?

 収入がないんですもの〜!

 働かざるもの食うべからず。

 とにかく、稼がないと。

 理由は至ってシンプルなんですよ!

 桜の武器や装備も買わないといけないしね!

 

 もう、ソロでもD級ならいける。


 ダンジョンは、E級とD級は初級と認識されており、D級ダンジョンも構成は地下5階〜9階で、魔物がゴブリンズ級に変化するくらい。

 E級をクリアしたら、D級も余程じゃない限り、クリアできるはずなのだ。

 C級からは中級で、難易度が極端に上がる。


 もちろん、世田谷ダンジョンのマップはダウンロード済み!先人に感謝!


 探索者協会の世田谷営業所でトイレをお借りして、お着替え!


 ここまでは、正体がバレていないので、ここから、ダッシュでダンジョン入場口まで、気づかれずに行っちゃう計画だ。



 ◇◇◇◇◇



 なんとか、うまく行ったな。

 この格好は目立つからなぁ。

 D級ダンジョンは、混んでないからかも。

 とにかく、行きますか!


 お!いきなりノーマルゴブリンズ発見!


 プシュ!プシュ!


 うん、まあ、そうでしょう。

 ビッグボススライムよりは弱いはずだから。


 プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!

 プシュ!プシュ!パシュ!プシュ!

 ペシュ!パシュ!ポシュ!プシュ!


 うん、これくらいで次の階に行くか!


 地下2階のブルーゴブリンズ

 地下3階のグリーンゴブリンズ

 地下4階のレッドゴブリンズ


 どれも歯応えが同じです……。

 アホほど狩ったな。もう、お腹いっぱい。


 予定を変更してボス行っちゃお!

 多分いけるやろ。たぶん。


 地下5階のボス部屋前。

 順番待ちがない!ないだと〜?

 めっちゃラッキー!ってこんなもんなのかな?E級が異常なの?


 ボス部屋入場!


 ボス登場!ビッグボスゴブリン!

 (なんの捻りもないなぁ。)


 プシュ!


 ウッソ〜ん!一撃!

 チートや!チート確定や!


 これは、想像以上や!ヤバ!激ヤバ!

 他の人のステータス知らないから、相場がわからないんだけど。うふふ。


 そのあとも調子に乗っちゃって、ボス5周回の踏破!鬼無双!


 俺のターン来たー!

 苦節25年、よく耐えたよ。えらいぞ!俺!


 はーるーよ〜♪とおきはるよ〜♪


 心の汗が止まりまシェーン!ちーん!



 ◇◇◇◇◇

 

 

 今日の探索も終了し、販売所へ。

 ここも混んでなくてグー!


「次の方〜!」

 (え?超絶イケメンじゃない!新人かしら?)


「お待たせしました。買取ですね。そのマジックトレイに魔心を置いてください。」


 ザラザラ!コロン!コロン!


 (ワオ!量の質も素晴らしいわ。ボスもいっちゃってるのね。やるじゃない。)


 マジックトレイが、買取金額を表示する。


「はい、買取金額は184,300円です。口座に振り込みますので、右手をIDセンサーに乗せてください。」


 カチャカチャ


 (25歳なのね。意外に遅咲きね。

 でも、あれ?何よ!このレベルは!?

 何故、D級にいるの?とんでもない逸材!)


「はい、完了しました。

 本日はボス討伐が確認出来ましたので、探索者ランクが国内C級に昇格いたします。

 これにより、C級ダンジョンの入場が可能になります。

 すでにデータが更新されてますので、協会ホームページからご確認ください。

 他にご用件は、ございますか?」


「いえ、大丈夫です。」


「それでは、またお越し下さい。ありがとうございました。」


「はい、ありがとうございました。」


 うおー!また新記録だ!

 しかも、また、ランクアップ!

 今日は、コンビニスイーツ大人買いだ!



 ◇◇◇◇◇



「ただいま〜!今日はスイーツ大人買いだよ〜!」


「おかえり〜!お兄ちゃん!ちょっと見て!

 北日本州と南日本州でスタンピードが発生したらしいよ!」


「え?小樽ダンジョンと唐津ダンジョンか!」


「どっちもD級だったんで、近くの探索隊で処理できたらしいんだけど、スタンピードの周期が早まってるって。」


「そうだな。D級は発生しやすいって言ってたけど、同時は初めてか。この分だとB級も来るかもしれないな。」


「え?そうなの?」


「だって、D級で発生しやすい理由からすると次はB級じゃないか?」


「ふーん、なるほど。でも、B級で発生したら、パニックになるね。この近くだと横浜だね。」


「あー。そんなに遠くないから、ここも安全じゃないな。もし、発生したら、電話かチャットな!」


「うん、了解です!」


「で、なんで大人買いなの?」


「お!よく聞いてくれた。本日をもって、国内C級に昇格しました!よっ!」


「すごーい。日々の精進が実ったねぇ。えらいぞ!」


「えっへん。それでな、本日の魔心買取金額合計が184,300円です。よっ!」


「おーーーー!すごーい!って

 お兄ちゃん!ちょっと変じゃない?」


「え?な、なにが?」


「なにがあったの?」


「ナニモナイヨ。日々ノ精進ヲ継続シテ…。」


「お兄ちゃん!!な〜に〜が〜あったの?」


「えーと……どうしようかな。ははは。」


「やっぱり。なんかあったんだね。

 家族に隠し事は良くないよ。

 家族に隠し事は良くないよ。

 家族に隠し事は良くないよ。」


「うわー、洗脳される〜!」


「家族に隠し事は良くないよ。」


 根負けして、桜には、今まであったことを包み隠さず、全て正直に話した。

 あり得ないミステリーにも関わらず、全て信用してくれた。その上で、やはり、誰にも言っちゃダメってことになった。

 正直、話したことで、ずいぶんと楽になったような気がする。これが家族パワーかな。


 このあと、見せてほしいと言われて、ちょっと実演することになった。別に見るもんないけどなぁ!

 

 でも、これも運命だったのかも!?

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