第7話 デイリー〈経験値〉

 デイリー〈経験値〉と唱えてみる。


 うわ!これってダンジョン?


 ダンジョンと思われる大きな部屋に転移した。ルームと同じ感じのダンジョンバージョンかな。


 ちょっとすると、銀色の小さいスライムが1匹現れた。


 え?なんにも準備してないんだけど!


 うわ!うわ!


 銀色スライムに攻撃されて、なす術なくやられた。


 体は無傷だが、元の部屋に戻される。


 くそー!失敗した。先言っといてよ〜!

 素の俺だと無理ゲーだ。


 一旦、ルームに行って戦闘用装備に着替える。


 よーし、再トライだ!!

 デイリー〈経験値〉!


 ん?


 デイリー〈経験値〉!


 シーン……。


 はぁ……。 なるほど、デイリーね。


 今日の分は終わったってことか。

 くそ。いろいろ損してるな。

 まあ、しゃーね。明日もう一回試すか。



 ◇◇◇◇◇



 はい!日付け変わりましたよ!


 今回はすでに戦闘用装備に着替えてます。


 ほんじゃ、再トライやーー!


 デイリー〈経験値〉!


 お!来た!やっぱり、デイリー!


 ちょっと経ってから、昨日と同じ銀色スライムが登場!


 お!スライムは素早いけど、対応できるな。これならいける。


 パシュ!


 お!結構硬いな。ビッグボススライムより防御力ありってことか。


 パシュ!パシュ!


 おー!倒せた。

 え?うわ!気持ち悪い。めっちゃ気持ち悪い。吐きそう。レベル酔い?


 ちょっと経って、元の部屋に戻された。

 ここのスライムは魔心を落とさないんだな。


 少し安静にしてると気持ち悪さが治ってきた。ふー、結構きつかったな。

 この前レベル上がった時は別に普通だったのに、初めてレベル2に上がった時よりつらい。

 どれくらい上がったんやろ?



 ステータスオープン!


〈ステータス〉

 橘 颯 25歳 探索者LV14

 生命力:165

 魔法力:140

 戦闘力:70(+1000)

 防御力:70(+1000)

 瞬発力:70(+1000)

〈スキル〉

 なし

〈隠しスキル〉

 マイ・ダンジョンLV2

  →ルームLV1

  →デイリー〈経験値〉LV1



 えーーーーー!?一気に10上がってる!


 銀色スライム様!ありがとうございます♪

 これ、毎日できるの?

 ウッヒョー!モチベ上がる〜!


 るんるん!



 ◇◇◇◇◇



 ゴロゴロ〜!ゴロゴロ〜!


「お兄ちゃん。相変わらず、ゴロゴロしてるね。」


「そうだな。」


「その割に、なんかめっちゃ痩せたけど、なんかしてるの?そんなふうには見えないけど。」


「やってるぞ!

 日々、鍛錬を怠らず、精進しておる。」


「あっそう。いいことだ。これならどこに出しても恥ずかしくないね。ちっちゃい頃に戻ったみたい。超イケメンだよ。元はいいからね。」


「お前は親か!」


「まあ、いいじゃない。もう外に出ても大丈夫じゃない?」


「そうかなぁ。」


 あれ以来、毎日日課のデイリー〈経験値〉を続けている。結構レベルも上がっていて、素の俺でもそこそこ通用するとは思う。

 デカいのは、あれだけ何をしても痩せなかったダイエットが、レベル向上とともに、ムキムキボディを勝ち取ったことだ。

 今なら、体脂肪率一桁台もユメじゃないぜ!



 ◇◇◇◇◇



 それから、数日後、たまには外に出てみようと思い、用もないのに、原付に乗って探索者協会川崎営業所にやってきていた。


 いやー、誰も俺って気付かないな!

 これは快適だー!


 あれ?嫌な奴がいるな。

 前方に尾張と三河を発見。

 一番会いたくない奴らが目の前にいる。

 そりゃ、C級だから、いてもおかしくないか。

 女性軍は別行動なのかい?


 俺は他人のふりをして、横を通り抜けようとしたが、全然気付いてない。

 ナイス!でも、そんなに変わったんだな。

 我ながら、誇らしいぞ!


 よし、このまま、中に入ってしまおう!



「あれ?颯!その体、どうしたの?」


 げ!誰やねん!なぜバレた?


「おう!静か。なぜわかった?

 誰にも気づかれなかったのに。。。」


「そりゃ、わかるよ。ちっちゃい時から見てるから。そっか。他の人はわからないかもね。」


「え?もしかして、ゆでたまご???」


「朱美!その呼び方やめろ!」


「超イケメンじゃん。うん、やめるよ。でも、こんなに変わるもんなの?」


「元はこんな感じだったよ。元通りってことだね。たしかに超イケメン。ぷぷぷ。」


「笑うな!逆に恥ずかしいわ!」


「あたし、彼女に立候補していい?」


 朱美が俺と静の顔を見て言った。


「ごめんなさい。」


「そんな、即答ある?ちょっとは考えなよ!」


 なんやかんや、話してて楽しい。朱美も性格は悪くないんだよな。もちろん、顔もいい。スタイルで言ったら、凶器というべきものを持っている。普通の男性なら断らないだろう。



「おい!お前誰だよ!俺たちのマドンナと仲良く話してるじゃねえか!」

「顔がいいからって、調子に乗っちゃいけねえな。いけねえよ。」


 もう!変な奴に絡まれた!尾張と三河です。


「失礼しました。それじゃ!」


「ちょ、待てよ!」

「ちょ、待てよ!」


 お前たち!いつの流行り?


「いえ、待ちません。それじゃ。」


「くそ。舐めやがって。」

「やっちゃうか。」


 こいつら、こんなんで、今までよくやってこれたな。


 案の定、2人で殴りかかってきた。

 なぜ、2人がかりなの?こいつら嫌い〜!



 2人がかりなのに、素の状態でも、なんとか躱せるみたいだ!

 なんか、慣れてきた。

 こいつら、いつまでやるの?


「ハァ、ハァ!全然無理。」

「ハァ、ハァ!同じく。」



「もういいですか?それじゃ。」


 だいぶ、強くなったことを実感できたな!

 これはこれで良かったかも。


 ただ、男2人より、静と朱美の方が唖然としてた。まあ、そうなるでしょうね。

 ちょっと、優越感!

 正体はバラさないでね!


 いやー、今日はいい1日だった〜!

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