第6話 危機一髪は一回だけなんて誰が言ったんだ

「こんにちは。また会ったね菜々野ななのちゃん」


 ナノの目線に合わせるように少しかがんで笑顔を向けてくる麻理まり先輩。完璧すぎてマジまぶいっす!


 自販機から戻ってきたらお兄にいつまで待たせる気じゃ、来未くるみちゃんもっかい花摘みに行っちゃったじゃんか、と叱ってやりたかったけど隣に見知った美少女を連れてこられては到底言えない。


「こんにちは、麻理まり先輩。お兄がいつもお世話になってます。それとありがとうございます。お兄の無理な頼引き受けてくれて」


 ちなみに天宮麻理あまみやまり先輩とは先週知り合ったばかりだ。お兄が何の突拍子もなくかつ前例になく家に可愛い女子を連れてくるものだから、さすがに腰を抜かした。その痛みを今でも覚えている。


 ついでに自己紹介程度に話したことがある。わかったことは、お兄と同じぬいぐるみをこよなく愛する人で、物腰が柔らかくて魅力的な先輩だということとjcのナノくらいにお胸が控えめだということ(最後のは言わないようにしよ)。

 っと胸に視線が行ってしまったのを誤魔化すように自然に先輩のトップスを見回す。女の子ってみんな視線にやたら厳しいからね。 

 トップスは白を基調としたペプラムがベース。スリーブはやや七分丈。またその上から黒のジャンパースカートを着ていて、実にシンプルな着こなしだ。

 続いて下のほうは、膝上まで露出したスラっと長い脚はニーソックスで覆われている。体格がシャープな先輩には腰まで届くきらめく黒髪のロングヘアがあるため、十分大人びた印象を与える。あとは明るめの臙脂えんじのショルダーバッグと紐に垂れ下がるテディベアのぬいぐるみ。靴は蛍光の強い黄色と白のスニーカーくらいか。


 ううむ……。ハッキリ言って羨ましい。こんなに体格に恵まれていればスカートなど当然のように合うし、素材がいいから流行ってないごく普通のコーデでも文句はつけられない。

 でも彼女は無自覚に今の服装をしているのではないはずだ。自分のなかの魅力を自覚していなければこのような上から下へ流れるように視線を促すファッションはできない。ありふれた知識と偏りのない客観が天宮麻理あまみやまりという天使を形作っているといっても過言ではない。


「さすがは先輩……。ナノからもよろしくお願いします!」

「オッケー。うちに任せとき。それで肝心のモデルさんは?」

「今お手洗に行ってます」

「おいおい、来未くるみ一人で大丈夫なの?」


 ずいぶんと剣幕な表情でお兄が聞いてくるため、思わずのけぞる。


「ついてこうか、って聞いたんだけど気が引けたのか断られちゃった」


 するとナノの発言に先輩は仰天する。


「その来未くるみって子、何歳なの!?」

「い、いやぁ……どーのくらいかなー? 外見上、たぶんだけど僕らと同じ、かも」


 たどたどしいお兄の反応からして麻理まり先輩には来未くるみちゃんの経緯を伝えていないようだ。突飛な説明は場の混乱を避けたいため、今はそれでよい。


 しかし来未くるみちゃんの個人情報はナノたちで決めてよいものではない。あとは任せろと言って家を出た母さんは一体どんな手を使ってどのような経歴で来未くるみちゃんの個人情報を作るのか。はたまたそれは情報の詐称に抵触してしまうのか。するだろうなー。


 なんにせよ、迂闊にも未定の情報は口にしないほうがいい。


 お兄とその旨をアイコンタクトで疎通する。先陣を切ったのはお兄だった。


「来未はこの国に来たばかりなんだぁ。日本語はペラペラだけど日本のことなにひとつ知らないからさ。日本式のトイレもどうすれば流れるとか僕たちがその場で教えてあげないといけないんだ!」


 ウインク。曰く、『これでどうかな?』


 バカ! 一つもオマージュできてねえよ! 勝手に帰国子女設定作んないでほしいんですけどっ! という苦情を噛みしめて表面上だけでも取り繕う。


「そ、そうなんです。今頃きっと便座を目の前にしてどこに座ればいいのか迷ってるんだと思いますっ」


 ウインクを返す。曰く、『もう黙ってろ』、と。

 お兄は笑顔でウインク。曰く、『ナイスフォロー!!』、だと。絶対伝わってない……。


 その妙なやり取りにはさすがに違和感を覚えられた。麻理まり先輩は一瞬迷った顔をしてしぶしぶ頷く。


「まあひとそれぞれ事情ってものがあるよね。ハハハハハ」


 同情された。全開に笑えてないひきつった笑みがその証拠だ。


「よかったー。ありがとう、信じてくれて」


 もうこのバカ兄貴はほっとこ。


 しかしこの間にも来未ちゃんは帰ってこなかった。






 


 


 

 遅い。


 と言ったら女の子に失礼だと母に教わったことがあるのでこの場のメンツに聞こえないよう、心の中で呟く。


来未くるみちゃん遅いね……」

「あれから十分くらい経つけど……遅いね」

「………………………………………遅いな」


 釣られて言ったら菜々野ななのに睨まれるわ天宮あまみやにドン引きされるわ。お前らめただろ。


 とは言え心配である。付き添いを断ってまで一人で行く挑戦に自ら挑んだのだ。そうやすやすと手を出すのは気が引ける。しかし待っているというのも楽ではない。今でこそ子どもを連れる親御さんの気持ちがわかる気がする。


「心配だからナノ見てくるっ」


 ついにしびれを切らした菜々野ななのが有無をいわずにダッシュでトイレへ向かう。

 それに続くように僕と天宮あまみやも人波をかき分けて駆け込む。


 店と店の間に通路が見える。そこへ入って手前が男、その奥に女とトイレがわかれているのだが、角を曲がった瞬間に目に入った光景は一人の少女が男数人に囲まれているものだった。


来未くるみ!」


 まさかナンパではないのか。来未くるみは白ティーシャツに体操服短パン、おまけにクロックスといういかにも粗末なこしらえだ。寄ってくるような男はよほどの面食いなんだと思っていたが……


「いいね! その服装! だらけた感じがあるのにめっかわじゃん!」 「ごめん。もうちょい撮らせて!」 「すげえ……全然シャレてねえのに素材がカワイイから全然アリだわー」 「これ逆に流行るんじゃね? ねえ君、今の写真、小鳥のさえずりにアップしていい?」

 ――――云々。


 聞こえ間違いじゃないよな。ナンパ、にしては超有名喫茶、スナバに誘うことも一向にない。

 意味不明な現場に立ち会わせたものの、僕たちはなにひとつ身動きが取れなかった。別の意味で。


 しかしそれは包囲網状態の来未にも言える。


「ええっと、なんでしょう……その、ええっと……」


 ただでさえ初対面に慣れていないため挙措を失っている。目は宙に舞い、手は胸の前で固く結んでいる。


「おーい! 来未くるみちゃんから離れろ! 悪党ども」


 菜々野ななの来未くるみを取り囲む男どもに尖り声で切り込む。


「あ、ナノちゃん!」


 すると菜々野ななのの姿に気づいたようではっと冷静さを取り戻す。


「すみません。ボクはこれから家族と洋服を買いに行かなければならないのです。では失礼します」


意外にも来未くるみに対する男たちの反応は素直だった。


「え、ああそうなんだ……残念だなぁ」 「じゃあせめてLINO交換しよ!」 「全然いいって。邪魔しちゃってゴメンねー」 「これ絶対流行るって! 写真アップしていい!?」

「るっさい! 行くよ来未くるみちゃん!」


 乱暴に来未くるみの手を引いて男たちから足早に遠ざかる。菜々野ななのの表情は憤怒に満ちていた。その形相は兄である僕ですら正面から目を合わせられないほどだ。


 菜々野ななのよりも体の大きい男複数人から無事僕と天宮あまみやのもとへ戻ってきた。


「くそ! なんなのあいつら。ちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねえよ! 来未くるみちゃん大丈夫だった? 何かされてない? 触れたとか舐められたとか」

「おいおい、まずはおまえが落ち着きなよ」


 いつになく冷静さを欠いた菜々野を宥める。キレると暴言を次々に口走るところは僕と同じだ。


修司しゅうじ君……ボクちょっと、怖かったです。いきなり話しかけられて、よくわからないこと聞かれて……」


 見ると来未くるみは少しやつれているように血色がよろしくない。息を切らしては僕の肩に手をのせて苦しそうにしている。かなり重症なようだ。慣れていないことに神経を使いすぎた結果、多重なストレスを感じたところだろう。ナンパ男たちも悪い気もしなかったが一方的に話しかけた分いい気もしなかった。


「ごめん。もうちょっと早く行けばよかった。とりあえず休もうか」


 今度は僕が来未くるみを負ぶって先程のベンチまで戻る。


「ナノもごめんっ! 家族なのに……気づけなかった」

「いいえ、これはボクの問題ですから。あそこで一言断っておけば、よかったのですね。勉強に、なりました」


 無理をして途切れ途切れに前向きなことを口にしている。逆に来未くるみ菜々野ななのを心配させたくないのだ。ひとりで行けることを信じてくれた。しかしその期待を裏切ってしまった。今の来未くるみにできることは、裏切られたにもかかわらず助けに行けなかった自分を責める菜々野ななのを元気づけることくらいだ。


(こんな人間的な感情をドッ君は持っていたのか……)


 ふとがらにもないことを考えてしまう。

 しかしそんな思考は来未くるみが僕の肩に頭を預けて寄りかかってきたことにより中断される。


「すみませんご主人様……ちょっとでいいので頭を撫でてください」

「え?」


 唐突に何を言うんだこの子は。てか僕の呼び名も隠せてないし。


 来未くるみを見るや、顔色はいまだ戻ってはない。しかし目を閉じてしまっているあたりよほど余裕がないのだろう。


「ん。よく頑張った。よしよし」


 菜々野ななのにできることがあるように、僕にもこんな弱っている人間のわがままを一つくらい聞き届ることができる。


 僕は慎重に彼女の髪を乱さないように気を付けつつ、毛の方向に沿って頭を撫でる。


「くうん…………ありがとう、ございます」


 僕の肩に乗っかる来未くるみの顔が気持ちいいとばかりに変化していく。まるで飼い主にかまってもらった犬みたいだ。見てるこっちも気持ちが軽くなる。


「ねえ、しゅーじん……この子が外国から来たっていう……」


 一人だけ座るスペースがなくて立たせていた天宮あまみやがついに口をはさむ。


 鳩羽はとば家の事情でなかなか立ち入れない雰囲気になってしまったが柔和になりかけたのを機と見たのだろう。ずっとモデルが不在のなか待たせていて申し訳なくなる。


 とりあえず回復するまで紹介だけでもしておく。


「そう。犬飼来未いぬかいくるみっていうんだ。今日からうちに住むことになって……てえ?」


 来未くるみから天宮あまみやへと視線を移すとそこには、


「なにこの子カワイイ~~~~~~っ!!」

「「!!?」」


 天使とはかけ離れたテンションで叫んでは、目をキラキラ輝かせて来未くるみの顔面を至近距離で凝視し始める。その勢いに僕と菜々野ななのはともに一驚する。


「ど、どうしたのさ? そんなハイテンションかまされても来未くるみも困る……寝てるし」

「だーかーらー、来未くるみちゃんだっけ? めっちゃくちゃ寝顔可愛いんですけど! こんな小顔で茶髪って反則でしょ! 人形みたい。てゆーかこのだらしない服装は意図してこれなの? だとしたら天才だわ! 一周回って天才! こんなかわいい天使がうちに住んでたらニートにしてだらけさせて布団かぶせて子守歌歌ってあげてウチが一生養ってあげたいよぉ!!」


 ……ものの十秒でこのふざけた長文を言い切れる者が存在するのか。存在するのだ。ここに。天宮麻理あまみやまりという狂乱の天使が。おかしいだろ。


 公の場では快くお見せできないよだれをすすり、来未くるみの寝顔を愛でることでなんとか理性を保っているようだ。天宮あまみやの家ならたしかに一人のニートを養うだけの財力はあるだろう。実現できそうなのがもういろいろな意味でヤバイ。そもそも来未くるみの服装がニートみたい、というのは普段から似たような格好で過ごしている菜々野ななのに失礼である。うん、横目で見たけど顔真っ赤にしてる。


「じゅるっ! 二人ともそうは思わない?」

「ま、まあそうなんじゃないか? あんだけモテそうな外見の男たちに集られたならみんな大切に育ててくれるんじゃないかな? 間違ってもニートにはしないと思うけど……」

「やだよ。あんなゲスイ男たちに神聖な来未くるみちゃんが養われてるなんて。キモいにもほどがある。はあ……死ねばいいのに」


 妹の言い癖がいい加減頭に来た。いつもの悪い口癖を矯正きょうせいするように僕は兄貴の体裁を装う。


「おい。さっきから聞いていれば口が悪いにもほどがあるぞ。話の分かる人たちだっただけよかったじゃないか!」


 覇気のある口調に動じもせず、勢いを蒸し返すように菜々野ななの反駁はんばくする。


「お兄こそ、すこしは来未くるみちゃんを大事にしてよ! なんでさっき間に入って助けようともしなかったの? お兄にとって来未くるみちゃんは……じゃないの?」


 家族という単語を強調され、気圧されたように僕は何も言い返せなかった。妹を叱る兄の強硬姿勢は跡形もなく崩れた。


 その隙を突かんとばかりに菜々野ななのの鋭い眼光が僕の網膜を射抜く。今までの来未くるみに対する対応というのはどういったものだったか、と問うように。




 ――僕のなんだぞ――




 それが僕の、妹の前で言えなかった本音だ。

 決して揺るぎない事実にして間違っていない結論。


 彼女が人間になってしまった。最初はただドッ君に戻ることを願っていた。しかし来未くるみといる間、彼女がぬいぐるみだったのを想起させないくらい人間らしい一面を何度も目にする。そのたびに僕の中に名状し難い感情が熱をともすのだ。受け入れたくない。されど手放すことができない。


 僕は犬養来未いぬかいくるみを無理やりドッ君に重ねている。ぬいぐるみと人間はどこをとっても通じ合う共通項を持たないというのに。

 結局のところドッ君を家族。来未くるみの存在はいまだ僕のなかでは放任案件なままだ。僕にとって彼女は人間とぬいぐるみが混ざった半端はんぱな存在。だから菜々野ななのの問いには正直に答えられないし、答えられたとしても本音にオブラートを包むだろう。


 どこまだいっても僕は他人のことをおもんぱかれない。菜々野ななのに叱りこんだ僕に言えたことではないが、そういうところが僕の悪い癖、がんなのだ。

 僕は知っている。その癌は摘出不可能の異物だと。


「…………………」


 言葉が出ない。フィルムがなければ映画が流れないのと同様に、紡ぐ言葉が見つからないのであれば口に出せるものは乾いた空気。


「ハア」


 その様子を見越した菜々野ななのはため息をつく。あきれ果てて荒廃とした視線に耐えながら僕は必死に無言を貫く。いつこの重苦しい空気が軽くなるのか。


「ねえ、思ったんだけどさ……」


 そして何の前触れもなく膠着状態は解かれた。


「何ですか? 悪いですけどこれは麻理まり先輩とは一切かかわりのないことですので口出しはしないでもらえます?」


 依然として態度を改めない菜々野ななのは先輩にも牙を見せる。


 しかし次に出てきたのは思いもよらないものだった。


「もしかしてなんだけどさ、来未くるみちゃんってドッ君のことなんじゃないかな?」

「「………………は?」」

「な、なんつってー。なはははははは! ごめんごめん。変なこと聞いちゃったぁ」

「いや……えええとぉ~間違ってはないというか~合ってるというか~」

「ま、まったく~。先輩ってばホントに変な質問しますねえ。ゆ、許しますけどぉ」


(……なんでばれた!?)


 十中八九、僕と菜々野ななのは兄妹ということが血液検査なしにおわかりいただけただろう。良くも悪くも動揺がひどくて誤魔化すのが毎度下手なのは血なのだ。

 互いに苦笑いを浮かべている顔を見合わせる。予期せぬ天宮あまみやの空爆によって僕たちの喧嘩は冷めきってしまい、菜々野ななのは何も問いたださなかった。


 しかし喧嘩は終わってもまた新たな問題が発生したのは明らか。


「……天宮あまみや。お願いだ。十秒だけ僕たちに時間くれ」


 そう言って僕と菜々野ななのは首をかしげる天宮あまみやに背を向け、急遽きゅうきょ停戦として小声で作戦を立てる始める。勿論、来未くるみがぬいぐるみであることを隠し通すための、だ。いまだ僕の肩ですやすやうたた寝しているご本人が危機的状況に陥っているというのになんとまあ呑気なことか。


『ばれちまったみたいだな。とりあえず逃げるかほうむるか。……さあどっちにする?』

『……もうこの際正直に言ってみたら?』

『へ?』

『赤の他人ならともかく、信用できる麻理まり先輩になら相談に乗ってくれると思うの。ナノたちで抱えこむ必要もなくなるし』


「おーい。十秒経ったよー」

「ゴメンあと四十秒」


『そもそも、来未くるみちゃんがドッ君だってこと知られてまずいことなんてある?』

『それは…………』 


 言葉に詰まる。思い浮かばないわけではないが、それこそ軍事利用、人道的問題などスケールが無下に大きい。ごく小規模の範囲の情報伝達であれば問題は起きないといえるのでは? 天宮あまみやは金持ちの家であっても第三者に口外するような口の軽い人間ではないのを僕はよく知っている。つまり彼女に知られてもたいして問題はなく、逆に僕たちにとって彼女は信頼して打ち明けるべき存在であるということだ。


 思えば今の今まで来未くるみのことを正直に話さないように振舞っていたのがばからしい。


「……まあウチが執拗に聞くのもおかしいよね。ごめんね」

「いや。天宮あまみやの言うとおりだ。これから言うことはお前だけにしか言わないから口外はしないでほしいんだが……」


 あたりを見回す。こちらに注目する人間はいない。彼女にだけ聞こえる声で至極まっとうな雰囲気をつくる。


来未くるみはドッ君の、ほらこないだ家に来た時に最初に見せた犬の抱き枕、の人間になった姿なんだ。それも今朝突然」

「へー。なんかどこかの漫画みたいな設定だね。しゅーじんてばもっとマシな作り話持ってきてよー」

「いや天宮あまみやがそうじゃないかって聞いてきたのが始まりだけどね!? 信じられないみたいな顔してるけど!」

「それにしても二人揃って必死だったね。なんか通じ合ってる感じ~」

「「前世で一緒だったんじゃない?」」


「まあ二人の喧嘩を止めたくて言った冗談のつもりだったんだけど………… 」

「……ア、アマミエル?」


 異常に緊張していた僕の鼓動は電気ショックでもされたのかと思うほど急に静まった。目に映るのは天使アマミエル。でもなんか今の僕にはただの紛らわしいことをするだけの天宮にしか見えなくなっていた。


天宮あまみや……」

「え? しゅーじん、なんか、目が怖いよっ。口は笑ってるのに目だけ笑ってない人生まれて初めて見たかも……ってなにす、ぎゃああああ!!」


 頭をワンハンドでがっしり掴んでやった。頭のマッサージにはなっただろ。


 その後来未くるみが目を覚ますまで僕は天宮あまみやの頭をでマッサージを施してやった。

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