第三話 賢者の役割(上)



          ◇






 あちこちに植物が置かれ、どことなく森を連想させるような部屋の奥、寝台に横たわり苦しそうにしている少年と、寝台を囲むように四人の男性がいる。

 苦し気な少年の腕には大きな切り傷があり、そこから黒い靄のようなものが噴き出している。

 すると眉間にしわを寄せた金色の瞳の男性が悔しそうに声を出した。

「そろそろまずいのう。アルブレヒトの魂の近くまで呪いが進行しておる。賢者が間に合えばよいのじゃが……」

「……私の賢者の力が消えてしまったばっかりに、助けてあげられずすみません。時間稼ぎではありますが、白札で呪いを抑えてみます」

 少し儚げな青年が手にしていた白い長方形の紙に文字を書き、その紙を切り傷に張り付けるとたちまち淡い光を発した。

 すると苦し気な少年の表情がほんの少し緩まった。

「これで少しの間ではありますが魂には触れられないはずです」

「じゃが、根本的に解決するには賢者が必要じゃ。我の予言では魔法統制管理省が賢者を捉えようとしておる。グレイとラピスが間に合えばよいが……」

 部屋には重苦しい沈黙が続いた。






         ◇







 魔法使いたちに連れられて、私は魔法舎と呼ばれる大きな洋館に辿り着いた。

「箒に乗せてくれてありがとうございました。グレイさん、でいいんでしょうか?」

「そういえばちゃんとした自己紹介がまだだった、じゃなくて、まだでしたね。俺は中央の魔法使い、グレイ。中央の国の王家直属部隊、魔法騎士団で団長を任されている。これからは賢者様の側近を務めさせていただくこともあるかと思います。それからこっちは…」

「あ、俺は東の魔法使い、ラピスです。よろしくお願いします」

「私は瑠奈と言います。グレイさん、改めてここまで乗せてくれてありがとうございました。ラピスさんも」

「俺たちに敬称はいらない。気軽に呼んでくれ」

「そうですよ!あなたは賢者様なんですから!あ、早くアルのところに案内しますね」

 ぺこっとお辞儀をして軽い自己紹介を終えてすぐ、速足で魔法舎の中に入る二人の後を追う。

 外観も大きくて立派なお屋敷だったが、それは中も同じだった。玄関を抜けるとロビーのような広間があり、奥には大きな螺旋階段がある。窓はステンドグラスで、どこかのチャペルにでも来たような気分だった。

 グレイとラピスは迷わず螺旋階段を上り、とある一室の扉をあけた。



 扉の先には異様な光景があった。寝台に横たわっている人の腕は大きく裂けており、そこから黒い靄が上がっている。

 だがそれはとても既視感のあるものだった。

「おお、間に合ったか」

「アル!しっかりしろ!」

 ラピスが寝台へ駆け寄り必死に声をかける。

 アルと呼ばれた少年はうっすらと目を開け、口元を緩ませた。

「……ばーか、これくらいで、死ぬわけないだろ……」

「ばかはお前だろ!俺をかばったりなんかするから!死にそうなくせに笑ってるなよ!」

 そんなやり取りを聞きながら私はずっと黒い靄を見ていた。どうにも以前どこかで見た気がしてならない。その上なんだか知っている気配がする。

 すると私の首元を彩っていた石が光り、すぐ横にオッドアイの青年が現れた。

「瑠奈、あの靄、変な感じがする。悪霊に似ているがそうじゃない、懐かしい気配だ」

「ヒスイも感じたんだ。何だろう、私、あれを知っている気がするの」

 当たり前のようにヒスイと話していたがふといくつもの視線を感じて周りを見ると、横たわっている少年以外の部屋にいた全員がこちらを見ていた。それもとても驚いた様子で。

「さっきも思ったが、そいつは誰なんだ?ネックレスになったり人になったり。魔法じゃないとか言っていたが……」

「俺は瑠奈の式神、ヒスイ。友人であり家族であり、瑠奈の護衛だ。グレイとか言ったか、俺がいるからお前が側近になる必要はない」

 私が答える前に高圧的な態度で話し出してしまった。いつもはもっと優しげがあるのになぜだかこの世界に来た時からピリピリしている。

 グレイはというと、そんなヒスイの言葉を受けても動じておらず、むしろ真っ直ぐヒスイを見つめて笑った。

「護衛だったのか。しきがみ?っていうのは何か知らないが今まで瑠奈を守っていたんだな。だが、この世界において瑠奈は賢者様だ。それは世界の要人であり、何があっても守らなければならない存在だ。なら一人よりも二人の方が守りやすいだろう?だから俺は瑠奈をこの命に代えても守り通す。ヒスイ、あんたと一緒にだ」

 命に代えて守るだなんて、そんなこと初めて言われた。なんともくすぐったい気持ちになってしまう。

 だが、一緒にと誘われた当の本人は未だ警戒心を解いていない。本当に信用できるのかを見定めているのだろう。

「ヒスイ、そんな睨まないの。普段はもっと優しいのに……」

「瑠奈と瑠輝とルリ以外に優しくしたって意味はない」

 そんな態度のヒスイに小さくため息をつくと寝台のそばに立っていたくせっ毛の男性が咳払いをした。

「賢者よ、今はおぬしの力を借りたい。こちらへ来てもらえるか?」

 疑問形で聞いてきているものの、その言葉には拒否権がないように感じられ、私はゆっくり彼と寝台に横たわる少年のもとへ歩を進めた。

 近くで黒い靄を見てよりはっきりと気配を感じた。

 やはり私はこれを知っている。禍々しい中に懐かしい気配がある。漠然とそう感じるだけで具体的に何かはわからない。喉元まで出かかっているのに出てこないようなむずがゆさがある。

「今苦しんでいるこやつはアルブレヒトという。先の月守との戦いで深手を負ってしまっての、魂の近くにまで呪いが近づいておるのじゃ。その呪いを消すために賢者の力を貸してほしい」

「呪い、ですか……。でも、私にそれを消す力なんて……」

 浄化や祓う力なんて私は持ち合わせていない。動きを鈍らせることは出来ても消すなんて出来ない。

 うつむいてしまう私の肩にぽんと手を置き、奥まで見透かすような瞳がこちらを窺う。

「大丈夫じゃ。おぬしは我の手を握っていてくれればよい」

 それだけでいいのかと不安に思いながらもゆっくりとくせっ毛の男性の手を取る。

 彼も私の手を握り返し、もう片方の手の少し上にはどこから出したのか大きめの水晶玉がぷかぷかと浮いていた。

「ヴォクニクスニア」

 小さく呟かれた瞬間、水晶玉が淡い光を帯び、寝台を中心に私たちの足元から黄色っぽい光が放たれた。

 寝台の上の彼も少し苦しそうにしつつも、腕の裂け目は少しずつ塞がっていった。

 だが、光が消えても完全には塞がらず黒い靄も未だ残っている。

「ふむ、この呪いは相当深いの。完全には治せぬか……」

 そんな言葉に部屋は静まり返ってしまった。

 これだけ小さければ私でも取ることは出来るかもしれない。浄化は出来なくても、とにかく外に出してしまえば彼の苦しみは消えるはず。

 私は肩にかけていた弓袋から弓と弦を取り出し、ヒスイを呼んだ。

「弓を張るの手伝って。破邪の矢を使ってみる」

「だが、その力は瑠奈にも……」

 その先を声には出さず静かに私を見つめている。

 ヒスイが言いたいことはわかる。破邪の矢を使えると言っても何の負担もなくというわけではない。使えば恐ろしく体力が奪われるし貧血にも似ためまいが起きる。彼は私のことを心配して躊躇しているのだ。

 だが、今私にできることをしなければここにいる意味がない。それに、苦しそうな彼を助けたいし、不安げなラピスの力になりたい。

 そんな決意と共に私は鮮やかな瞳を見つめ返した。

「大丈夫。私は、あの人やラピスのことを助けてあげたいの。今まで何の役にも立てない異端者だった私が必要とされているのに、それに応えないわけにはいかないでしょ?」

 そう告げても未だ踏ん切りがつかないようにヒスイは黙っている。

 そこに抑え気味の声が聞こえて来た。

「あのー、式神といい、破邪の矢といい、あなたはもしかして御神楽の方ですか?」

 その一言に私は凍りついてしまった。どうして御神楽の名を知っているのか。

 理由もなく心臓が早鐘を打ち、足元から恐怖が湧き上がってくる感覚がした。

「そ、そうですが、なぜ、御神楽の名を?あなたは、誰、ですか……」

 上手く声が出せずつたない問いかけになってしまった。しかし絹のような銀髪で色白で、全体的に白く儚い印象の男性は暖かな微笑みを浮かべた。

「これは失礼しました!私は神田月斗かんだつきとと申します。あなたの前に賢者をしておりました。もとの世界で私の実家は神社でして、厄除けのお祓いなどもしていたんですよ。そういう関係で御神楽の名前も知っていただけなんです。本家に強い霊力をお持ちのご子息と破邪の矢を使うご息女がいると」

 神田、神田。どこかで聞いた名前だ。なんだったのかいまいち思い出せない。

 少し逡巡しているとふと過去の記憶が下りて来た。

 瑠輝が消えてしばらくした頃、仕事で白札使いのいる神社と協力体制を取ったとか。確か神田という名前だったはず。

「もしかして、白札使いの神田、の方ですか?」

 聞き返すと儚い彼はぱあっと笑顔になった。

「知っていてくださったんですね!祓い屋の名門御神楽さんに認知されているなんて、鼻が高いです!あ、提案をしようと思っていたんでした。破邪の矢を使われるのでしたら、私の白札も活用してください。呪いを追い出す手助けになればいいんですが……」

 思ってもいなかった提案に驚きつつも私はそれを快く受け入れた。私一人では不安だったからだ。なにせ破邪の矢を使うと言っても実践は初めてなのだから。

 今まで家からあまり出ず仕事にも同行させてもらえなかった私には実践という単語は縁遠いものだ。ひたすら腕を磨いても本当に上達しているのかもよくわからない。

 だから私一人だけではないというのがとても心強い。

「ヒスイ、お願い」

「……わかった。俺の術もプラスする」

 そうしててきぱきと弓を張り、矢じりも破邪の結界用に作られた先の鋭いものに変えて、矢にヒスイの浄化の術、神田さんの白札の加護を施し準備完了。

 私は寝台から一番遠い部屋の隅に移動し、意識を矢に集中させる。

 私の中に流れる血液をすべて矢に集中させるように、周りの空気を纏わせるように、そんなイメージを頭に浮かべて弓を引き絞る。

 矢を射るには狭すぎるこの場所は少しずれれば怪我をしてしまう。普通よりも弱めに、その分イメージを集中させ、しっかり狙いを定め矢を放つ。

 淡い光を放ちながら矢は寝台脇の床に刺さりまばゆい金色の光でベッドの下を覆った。

 ゆっくりと近づき矢に触れると何かの意識が流れ込んで私を光の中に誘った。

 思わず目をつぶってしまった私は暖かな気配を感じてゆっくり瞼を押し上げる。

 そこは見渡す限りの白い世界。何もないと言ってもいいだろう。その奥に黒い靄のような何かが浮かんでいた。あれが呪いだろうか。

 恐る恐る近づいてみるとそれは小さく縮こまった何かだった。どこか苦しそうで顔をゆがめているそれは背中に蝶の羽のようなものがついていた。御伽噺に出てくる妖精のようだ。

「あの、大丈夫ですか?どこか痛むんですか?」

 脅かさないように静かにそっと彼を掌に乗せる。

 その瞬間重いものが私の中に入って来た。

『怖い、怖い、怖い。苦しい、助けて。痛いよ、怖いよ………』

 その感情に私は息をのんだ。この子は呪いなんかじゃない。ただ助けを求めていただけなんだ。自分を守るために縮こまって、恐怖を外に吐き出すしかできないんだ。

 私は小さな彼を優しく抱きしめた。安心させるように、怖いことはないと教えるように。

「……大丈夫、大丈夫です。ここに怖いものなんてない。ほら、目を開けてみて?綺麗な白の世界を」

 ふと私もあたりを見回してみる。が、そこは白の世界ではあるものの先ほどまでの光のような白ではなく雪が広がる銀世界だった。だが不思議と寒さはなかった。むしろ暖かい。

 あまりの変化に驚いて固まっていた私の腕から小さな彼がふわりと抜け出しあたりを飛び回っていた。

 その顔に恐怖や悲しみはなく、黒い靄もゆっくり消えて薄紫になっていった。これが本来の彼だろうか。とても綺麗で神秘的だ。

「もう、怖くないですか?」

 そう問いかけるとふわっと微笑み、頭に響くような声が聞こえた。

『ありがとう、僕を助けてくれて。無理やり従わされるような嫌な感じだったけど、今は君のおかげですっごく心が軽いよ!お礼に精霊の加護をあげる。北の精霊の加護は癒し。君も何かつらいものを抱えているみたいだから、いつかその傷が癒えるよう、祈りを込めるよ……。君に会えてうれしい』

 そのまま強い光に包まれ目を閉じ、次に目を開けた時は魔法使いたちがいるあの部屋だった。

 ただ違うのはアルブレヒトの腕の傷が消え、私の目の前に先ほどの妖精が薄紫の光を放ちながら浮かんでこちらを見ていること。

 彼はゆっくりと私の左手を取り、賢者の印だという魔法陣の一部にキスを落とした。

 突然の行動にどぎまぎして動けずにいると妖精は窓から外に出て行った。

『何かあったらそれで僕を呼んで。必ず君の力になるから』

 そう残して彼の姿は見えなくなった。彼は『また会えた』と言っていたが、初対面のはずだ。あれはどういう意味だろうか。

 それはそうと、彼が落としたキスは魔法陣の中にある何か書かれた円の内のひとつで、そこが彼と同じ薄紫色になっていた。これで彼を呼べるということだろうか。

 不思議にその魔方陣を眺めているとふいに横から声を掛けられた。

「賢者よ、今の光はもしや妖精か?」

 その問いかけに周りの魔法使いたちも驚いていた。

 彼ら曰く、妖精の姿は普段見ることが出来ず、大地の魔力が濃い場所でしか出会えないのだという。そんな場所も数は少なく、太古の神殿や空気が綺麗な場所、自然の深い場所だけで、街の方ではありえないことだそうだ。

「そう、みたいです。あ、でも北の精霊って言ってました。この人の腕から上がっていた靄があの精霊です。なんか、無理やり従わされていた、らしくて。体も羽も黒く染まっていたんですけど、本当はあんなにきれいな紫色だったんですね。……アメジストみたいで見とれちゃった」

 先ほどの精霊を思い出しながらつぶやくとなぜだか静まり返ってしまった。何か変なことを言っただろうか。

 驚いたような声音でおじいさん口調のくせっ毛な男性がゆっくり話し始めた。

「賢者には、精霊の姿がそこまではっきりと見えるのか?妖精でも見ることは難しいというのに、そのさらに上の存在である精霊を目視するだけでなく言葉まで交わせるとは。力の強い魔法使いでも出来ぬ事じゃ。……おぬしは相当彼らに気に入られておるようじゃの」

 魔法使いにも見えない精霊の姿を、私は見ることができたというのか。じゃあ、声はどうだろう。さっきの声も聞こえなかったのだろうか。

 戸惑いがちに問うと、彼らはそろえて首を横に振った。

 私にしか見えないし聞こえない。それはまるで元いた世界の怨霊や幽霊たちのようだ。かれらのはっきりとした姿も私にしか見えなかったし、浄化した後の姿もやはり私にしかはっきり見ることができなかった。

 この世界の精霊や妖精は私の世界でいう幽霊たちと同じような存在ということなんだろうか。まあ国を守護とか神殿にいるとか壮大な違いはあるものの、似たようなものだと思っておこう。

「ひとまず、これでアルブレヒトは安心じゃ。賢者も、よくやってくれた」

「い、いえ。私はそんな、大層なことは……」

 お礼を言われ慣れておらず、素直に気持ちを受け取ることができない。こういう時はどう返せばいいのかわからなくて困る。

「大層なことですよ!アルを助けてくださりありがとうございます」

 ずっと寝台のそばにいたラピスが深く頭を下げた。これもまた慣れていないことであたふたしてしまう。

 危機を脱したアルブレヒトはゆっくりと呼吸を繰り返して静かに眠っている。くせっ毛の男性はじきに目が覚めると言っていたので、とりあえず看病のために残るラピス以外は部屋の外に出ることになった。



「よし、とりあえず今はみな疲れておるじゃろう。各自部屋で休むがよい。賢者の部屋は我が案内してやろう」

 その声で魔法使いたちは散らばっていった。

 私も案内をしてくれるという男性の後をついていく。

「そうじゃ、名前を言っておらんかったのう。我はルイじゃ。こう見えてもこの魔法舎で一番の長寿なのじゃよ。何か聞きたいことがあればいつでも聞いてくれてよいぞ」

「あ、私は瑠奈です。ご親切にありがとうございます、ルイさん」

「敬称は不要じゃ。他の魔法使いたちのことも呼び捨てで構わんじゃろう」

 ルイは私にウインクを飛ばした。少しお茶目な人なのだろうか。

 それに、明日もこの魔法舎の中を案内してくれるという。とても親切だ。

 そんな自己紹介をしただけで私の部屋へ着いた。

 ドアを開けるとベッドや机などの必要最低限の家具は揃っていた。物は少ないが落ち着いた色で整えられており、心が安らぎそうな部屋だ。

「この部屋を自由に使ってよい。服も少しだがクローゼットに入っておる。街で気に入ったものを買い揃えるのも、家具などの模様替えをするのも賢者の自由じゃ。おっと、ヒスイの部屋も別で用意した方がよいかの?」

「いや、必要ない」

「ならば二人とも、今日はゆっくり休むのじゃぞ。おやすみ」

 そう言い残してルイは部屋を出た。途端に静かになってなんだか落ち着かない。

 とりあえず部屋の奥の窓に寄ると大きな月が闇夜のベールを纏って美しく輝いている。

 月を眺めて、未だはっきりしない疑問を口に出した。

「結局、あの黒い靄からした懐かしい気配は何だったんだろう。怨霊の類なら懐かしいとは思わないだろうし、ヒスイはわかった?」

「いや、俺にはなんとも。それより、体は大丈夫か?お前はもう休め。これからのことも考えていかなくてはならないが、それは明日でもいい」

「そう、だね……あれ?そういえば私、破邪の矢を使ったのに全然しんどくない。めまいもないし、なんか普通……」

 あのどうしようもないほどの倦怠感はなく、普段と変わらない。

 どうしてなのかは見当もつかないので、とりあえずクローゼットを開けて寝るのによさげな服に着替えて寝台にもぐりこんだ。

 だが、いつもはネックレスに戻るヒスイが今日は出ているままだ。

「ヒスイは戻らないの?」

「ああ、まだここにいる奴らを信用できないからな。今日はこのまま見張っている。俺のことは気にせず寝ろ」

 そこまで警戒するような人たちじゃなかった気もするが、ここはヒスイのしたいようにやらせておこう。

 私は静かに目を閉じ、ゆっくりと眠りの淵を歩いて行った。

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