第4話『真相・後半』
壊れた世界で、彼女は言祝ぐ。
「──おめでとう。レインさん」
「……──何でっ。何でお前がっ」
「確かに私はあの事件で死にました。勿論、現に私が干渉する事なんてできずに、こうして私だけの夢の世界で精神的に干渉するだけで精一杯でした」
嗚呼、本当は答えたくなかった。
答えたなら、この幸せな時間が終わってしまうのだと。──レインは最初から気付いていたのだ。
でも、それでもレインは答えた。
何故なら──。
「でも、答えてくれて。──わたしのあやまちをただしてくれて、ほんとうにありがとう」
「……──あぁっ。私は、名探偵だからな。これくらいの事件、訳ないさ」
顔は見れない。
たとえそれが、今生の別れだったとしても──。
去って行く。
去って行く。
足音が消えていく──。
「──あ、でもですね。このせつなよりもみじかいこのじかん、──たのしかったのですよ」
「──あぁ」
「はまきなんてぷれぜんとして。わたし、しんじゃったけど、みせいねんなのに」
「──あぁ」
「──でも、うれしかったのです。れいんさんからもらった、はじめてものだから」
顔を上げた。
泣きじゃくるレインとは違い。
消え去っていく雪那の姿は、何処までも笑っていた。
「──なぁ。またいつか会えるかな?」
「……──っ」
「また会って、馬鹿騒ぎをして。そんな日常が、また来るのか?」
「……──えぇ。私だって、その思いは当然ですっ!」
巡り合って近こうありて。
いつかは離れ離れになる輪廻の園。
それでも、いつか──。
「──じゃぁなっ」
「──また会いましょう」
雪が溶けるよりも短く、にわか雨みたいな突発的な、ほんのひと刻。
たとえこの刹那の時であろうとも、──こうして再び会えて、ほんとうによかったっ。
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