第2話 炎上!ねむりんチャンネル!
眠り姫は不敵な笑みを浮かべながら赤ずきんに言いました。
「いや、あなたがやるのはツイッターじゃなくてユーチューブの方よ!」
「ユーチューブ!?私がですか!?」
赤ずきんは、驚いて眠り姫に聞き返しました。
「そうよ!私のYouTubeチャンネルに出てもらうわ、ゲストとしてね!あなたは有名で人気だから、きっと視聴回数がいつもより跳ね上がるわ。」
「に、人気…!…えぇ〜!そうですかねぇ~…!」
なぜか赤ずきんは少し嬉しそうでした。
そんな赤ずきんを眠り姫はジトッとした目で見ていました。しかし、すぐに明るい表情に戻り、眠り姫は自慢げに続けました。
「視聴回数が増えれば、チャンネル登録者数も増えて、ツイッターのフォロワーも爆増よ!そうすればグリム童話が盛り上がること間違いなしよ!」
「そうですね!あ、ちなみに眠り姫さんはどんな動画を投稿してるんですか?」
眠り姫は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの自信満々な表情でスマートフォンの画面を赤ずきんに見せました。
「これが私の投稿した動画よ!」
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自分のベッドで眠り姫が寝てるのが結局一番怖い説!
XXXXX回視聴・XXXX/XX/XX 👍XXX 👎低評価
ねむりんチャンネル
チャンネル登録者数XXXX人
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「…なんか、微妙に聞いたことある気がするんですけど…。」
赤ずきんは動画タイトルに既視感を覚えました。某テレビ番組でこういう企画を見たことがあった気がしたのです。
しかし、それを聞いた眠り姫は呆れ顔で赤ずきんに言いました。
「はぁ…まったくあなたは…。いい?赤ずきん。その時代遅れの真っ赤な頭巾を取ってよく聞きなさい!」
「…なんですか?…って、誰が時代遅れですか!」
プンプンと怒っている赤ずきんを他所に、眠り姫は続けました。
「最近では、人の真似をすることなんて当たり前なのよ!むしろ、物事を上達させるには、それが正攻法だと言われることも少なくないわ!しかも、ただでさえクリエイターの数が増えて作品が溢れかえっているから、一定のペースを保って投稿し続けないとすぐに忘れ去られてしまうわ!だからパクるのよ!テンプレを量産し続けるのよ!今の時代、質より量よ!他の作品をパクってなんぼなのよ!」
「クリエイターの風上にも置けない発言ですね…」
赤ずきんは、呆れた顔で言いました。
「そういうのは思ってても言わない方がいいと思いますよ…。っていうか、忘れられたとしても、クリエイターならオリジナリティを追求するべきじゃないですか?眠り姫さんにクリエイターとしてのプライドはないんですか?」
赤ずきんにそう聞かれた眠り姫は、少しムッとしてスマホ画面をスクロールしました。そして、スクロールをしながら眠り姫は赤ずきんを横目でチラチラと見ながら言いました。
「プライドはあるわよ!大アリよ!私が人の真似をしてるのは、あくまで投稿ペースを保つためにその場しのぎの動画を作らなきゃいけない時だけよ!そうじゃない時はオリジナリティのある動画をたくさん出してるのよ!…ほら、これとか!」
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【ドッキリ】毒リンゴを持った老婆に変装して白雪姫を追いかけ回してみた!
XXXXXX回視聴・XXXX/XX/XX 👍XXX 👎低評価
ねむりんチャンネル
チャンネル登録者数XXXX人
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「う~ん…。なんか…どうなんでしょうか、これは…。」
「この動画は、他の動画に比べて大幅に伸びてるわよ!ドッキリのターゲットに人気者の白雪を選んでるし、彼女のキャラも生かしてるし、企画自体もめちゃくちゃ面白いでしょ!しかも、白雪のリアクションがめっちゃ良くて撮れ高もバッチリよ!オリジナリティもクオリティも高いわよ!」
眠り姫は、自信満々に言いました。しかし、赤ずきんは相変わらず怪訝そうな顔をしています。彼女が危惧しているのはそこじゃありませんでした。
「いや、まぁそうかもですけど…なんかこれ再生数に比べて高評価が少なくありません?それに、このタイトルからしてなんか炎上の匂いが…。ちょっと、コメント欄見せてください!」
赤ずきんは眠り姫からスマホを奪って、コメント欄を開きました。
すると、赤ずきんの危惧通りコメント欄は批判で溢れかえっていました。
「ほらぁ!この動画炎上してるじゃないですか!!めちゃくちゃ批判来てますよ!気づかなかったんですか!?コメントとか見てないんですか!?」
赤ずきんが問い詰めると、眠り姫は頬を掻きながら斜め上の方向に目線をやって答えました。
「み、見てるわよ…!み、見てるに決まってるじゃない…!…ち、ちなみにどんなコメントが来てるのかしら…?」
「やっぱり見てないんじゃないですか!」
赤ずきんは、まったくもう!と言ってからコメントを読み上げました。
「えっと…、『これはやりすぎ』、『ドッキリとしての度を越えてる』、『白雪姫がかわいそう』、『本人しか面白いと思ってないパターン』、『ファンで今まで見てましたが、今回の動画で失望しました。もう見るのやめます』とか…。」
それを聞いた眠り姫は落ち込んだのかしばらく下を向いていました。
しかし、唐突に顔を上げて…
「ざっけんなぁあああ!!」
と、眠り姫はいきなり大声で叫びました。あまりに唐突だったので、赤ずきんはビクッ!となってしまいました。
「び、びっくりしたぁ!きゅ、急に叫ばないでくださいよ!」
「こいつらぁ!普段、見向きもしないくせにこういう時だけ批判しに来やがって!何が『もう見るのやめます』だ!絶対いつも見てないだろコイツ!!」
ギャオオオオオンと吠えるかの如く、大声で叫ぶ眠り姫を「お、落ち着いてください!」と赤ずきんは宥めました。
「落ち着いてください、眠り姫さん!確かに炎上を面白がって便乗してるだけの人もいるかもしれないですけど、動画の内容が一線を超えていたら、批判されてしまうのも仕方ないと思います!」
「仕方なくないわよ!!こいつらに何の権限があってこんなコメント残していきやがるのよ!図が高いわ!!」
赤ずきんは、喚き散らす眠り姫の対処に困ってしまいました。
しかし、しばらくすると、眠り姫も落ち着いたのか、段々と冷静さを取り戻してきました。赤ずきんは恐る恐る聞きました。
「ね、眠り姫さん?落ち着きました?」
「ええ、落ち着いたわ。すまなかったわね。少々取り乱してしまったわ。」
少々どころではなかった気がしますが、赤ずきんはそこには触れませんでした。
「いや、眠り姫さんの気持ちもわかりますが、やっぱり動画の内容がよくなかったのなら謝るべきじゃないですか?謝罪動画かなんかを投稿して…。」
赤ずきんの言葉に眠り姫はムッとして答えました。
「それは嫌よ!いくら動画の内容がダメでもこっちが謝る義務はないわ!面白いものを作ろうと思ったらいろいろ試さないとダメなのよ!それなのに、いちいち謝罪してたら切りがないし、一度謝ったらこいつらさらに調子に乗り出すわ!だから、絶対に嫌!」
「いや、でも…。」
赤ずきんが言い淀んでいると、眠り姫は何かを思いついたのか、手をポンと叩いて赤ずきんを見ました。
「そんなにとやかく言うなら、あなたが謝ればいいじゃない!赤ずきん!!」
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