特A事案「少女とドラゴン」③

美里「ある日、下校途中の山道で、その八神って人に話しかけられたんです」


--どんなことを話していましたか?


美里「『ここら辺で不思議な生物を見かけたことはありませんか? グニャグニャとした、いろいろなものに変身する生物です』って……一瞬にして固まりましたよ。だって心当たりありまくりですから」


--美里さんは、どう対応されましたか?


美里「対応も何も、黙ってただけです。そうするしかできませんでした。でも、たまたま村の同級生と一緒に帰ってたので、その子が『何ですか急に!! 警察呼びますよ!!』って怒鳴ってくれて。その人、ビックリして逃げてきました」


--なるほど。タケルさんが”八神”の存在に気づいたのはいつでしょうか?


タケル「そのすぐ後です。研究所に美里が大慌てでやってきて、教えてくれたんです。『タケルくんのこと探してる人がいる』って」


--”八神”はどうやってタケルさんの存在を知ったのでしょうか?


タケル「これは今でもよくわからないんですよね。僕が元々住んでいた集落のことを知っていたかもしれません。実は、博士はその人のこと知ってたんじゃないかって思うんですよね」


--それはなぜでしょうか?


タケル「美里が研究所でその男の特徴を話した時、一瞬顔色が変わる瞬間があったんです。『青いメガネをかけてる』って話をした時。もっと詳しく聞いておけばよかったですね……後の祭りって感じですけど……」


--心中、お察しします。それからは、どうなりましたか?


タケル「それから博士、真剣な面持ちで『タケル、話がある』って。地下室に連れてかれて、『お前、しばらく外に出るな』って言われて……『どうして?』って訊いても『とにかくだ!!』ってすごい怒られて……」


美里「そのあと私にも、『しばらく研究所には来るな』って言ってきました。急な話だったんで、私も『どうしてよ!?』って食ってかかったんですけど、『危険だからだ!!』の一点張りで……あんな怒ってる博士、初めて見ました」


--それで、しばらく2人は会わなかったと。


タケル「はい。寂しかったですね。博士以外に話が出来るのが、三郷だけだったから……でも、あんなに真剣な博士を見たら、従うしかないよなって思って……」


美里「私も……そうです」


--そのあと、”八神”に動きはありましたか?


美里「その5日後、村の集落にも現れたみたいです。私は学校行ってる間だったんで、会うことはなかったんですけど……」


--どのような様子でしたか?


美里「いろんな家を訪ねて、私の時みたいに『ここら辺で不思議な生物を見かけませんでしたか?』って。大抵の家は不審がってすぐに追い返してたみたいですけど、私の家に訪ねてきた時に、おばあちゃんが研究所について話をしちゃったみたいで……」


--お祖母様は、研究所のことをご存知だったのですね。


美里「あ、もちろんタケルのことは知りませんでしたよ。ただ、村外れにある正体不明の研究所ってことで、前から不審に思ってたみたいで……『変な動物の鳴き声が聞こえる時がある。そこにいるんじゃないか?』って」


--それで、”八神”たちは研究所に?


美里「そうですね……だからその話を聞いて、私はすぐにタケルたちのところに向かいました。でも……着いた時にはもう遅かったんです。研究所は、猟銃持った人達に囲まれてました」

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