特A事案「少女とドラゴン」②

タケル「自分自身の姿をちゃんと見たのも、博士の家に行ってからなんですよね。今までの生活では、鏡なんてありませんでしたし」


--村ではどんな生活をしていましたか?


タケル「住み始めて最初の頃は、ひたすら知識を吸収する毎日でした。言ってみれば、文明に触れるということ自体初めてでしたから。文字を覚えたり、スプーンの使い方を練習したり……幼稚園の子どもがやるようなことを1年くらいしてましたね。そこから2年くらいで人間の言葉を理解して、小学生くらいの会話はできるようになったと思います。あとの7年は、博士の手伝いですね。実験の助手とか、調べ物したりとか」


--ゼロから文明に触れたという意味では、だいぶ順応が早いですね。


タケル「ありがとうございます」


--それでは、本題に入らせていただければと思います。H村襲撃の事件に関してお教えいただけますか?


タケル「そうですね……その前に、美里を呼んでも良いですか?」


--美里さんも当事者です。是非、同席願いたいです。


(10分の中断)


美里「初めまして。大塚美里です」


--初めまして。フリーライターの(仮名)と申します。


美里「えと……私のことは……?」


タケル「これから話すよ」


美里「あら、そう」


タケル「事件のちょうど3年前です。僕と美里が出会ったのは」


--ということは、美里さんはH村の出身ですか?


美里「はい。生まれは隣の市ですけど、物心ついた時にはH村で暮らしていました」


タケル「僕が家から抜け出て遊んでいるところを、山遊びをしている美里に見つかっちゃって……」


美里「ビックリしましたよ。スライムだ!! ゲームに出てくるがスライムが出た!!って思いました」


タケル「スライム……」


美里「似たようなもんでしょ?」


タケル「まぁ、そうだけど……」


--お二人はすぐに仲良くなったのですか?


タケル「とんでもない。第一印象、最悪ですよ。突然木の棒で引っ叩いてきたので」


美里「そりゃそうですよ。化け物なら倒さないと」


タケル「それで、急いで鳥の姿に変身して博士の家まで逃げました。それで、『ごめん、人間にみつかっちゃった!!』て博士に話して……そしたら博士が、『ああ、ひょっとして、その娘か……?』って僕の後ろを指差したんです。今でも忘れませんよ、両手に木の棒を持って息切らしてる、鬼の顔した美里を……」


美里「鬼って……そんな風に思ってたの?」


タケル「あ、いや、良いじゃないか今更」


美里「そこから博士の家に通い始めました。この子のことも気になったので。それで、ちょっとずつ仲良くなったって感じです」


タケル「それで、博士の研究にも興味を持ったらしいです。今通ってる学校も、その影響で決めたって」


--どちらに通われているのですか?


美里「▲▲大学の、獣医学部ですね」


--なるほど。


タケル「それで、事件の話ですよね。確か最初の異変は、村に不審者が出るって噂から始まります」


美里「当時は私は中学生でした。隣町の学校だったんですけど、そこで注意喚起があったんですよ。H村の山で、最近変な人がいるから下校中気をつけるようにって。山なのに、スーツ姿でキョロキョロしてて……で、青いフレームのメガネをかけてるっていう」


--それが、”八神雄二”だったわけですね。

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