(※復元成功)特A事案「Mr.テディは一体何処へ?」⑥

--ぬいぐるみ、ですか。


山井「はい。その話をされて、一瞬ポカンとしました。それって、もともとクマのぬいぐるみに意識があったってことですか?って聞いたら、『その通りです』って……」


陽子「また、にわかには信用できなような話でした……」


--お気持ちお察しします。


山井「そのあと、なぜそのクマが意思を持つに至ったか、なぜそのクマを追っていたのかを説明してくれていましたが、正直よく覚えていません。そんなことより、娘はどうなるんだという思いでいっぱいでしたから」


陽子「あの、それで娘はどうなるんですかって聞いたら、『それに関しては、ご心配なく。仲間に情報を流し、ヤツが次に向かいそうなルートを割り出しています』って」


--”八神”はチームで行動していたのですか?


山井「そうみたいです。実際、娘を見つけたという知らせを受けて現場に向かったところには2人の男の人が待機していました」


--”八神”はどうやってヤツの居場所を突き止めたのでしょうか?


山井「八神さんの説明では、『おそらく、ヤツは殺害するターゲットを絞っています』って話でした。『ヤツは、娘さんと同じくらいの歳の子、しかも女児がいる家庭を狙っている可能性が高い』って。どうしてですか?と聞くと、『逃亡のためです』と」


--「逃亡」ですか。


山井「『犯行についてニュースサイトで検索しましたが、殺人に使われた凶器は刃物のようです。となると、体や衣服に返り血が付くことが予想されます。体に付いた血はシャワーで洗い流せるものの、衣服はそうはいかない。洗濯したとしても不自然なシミは残ってしまう。じゃあ、どうすると思います?』って聞かれて、ハッとなりました。その家の子の服を着るのかって」


陽子「八神さんが『その通りです』って言ってました。そして、『これは仲間が最初の殺人現場付近で見つけた物です』ってスマホで写真を見せてくれました。捨てられた血のついた服……紛れもなく娘が着ていた物でした」


山井「『それに、何日も同じ格好で街中を歩いていたら、虐待を疑われる可能性もある。捕まらないためには、必然的に着替えをする必要性がある、という訳です』って話で。それで、『この近所で7歳くらいの女の子がいる家を絞り出しています』と。そうこうしているうちに、八神さんのスマホがなりました」


--娘さんがいる場所がわかったんですね。


山井「はい。行き先を変更して、すぐにそちらに向かうことにしました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る