特A事案「Mr.テディは一体何処へ?」③

陽子「私たちが、娘の能力を知った半年後くらいです」


山井「娘と話をして以来、すっかり能力を使わなくなりました。特に変な夢も見ず、いつも通りの毎日。そんな数ヶ月でした」


陽子「その日は……突然、聞こえてきたんです」


--何の音でしょうか?


山井「ドカンとか、ドーンとか、物が激しくぶつかる音です」


陽子「2階から聞こえてきたので、娘に何か起こったのかなって……あ、当時娘の部屋は2階にありましたので」


山井「急いで娘の部屋に向かいました。そしたら……」


--何が起きたのでしょうか?


山井「部屋が……めちゃくちゃだったんです。イスとかタンスとか、あとは蛍光灯とかが壊れて散乱してて……」


陽子「そんな中で、娘が部屋の真ん中で立ってたんです。私たちに背中を見せた状態で」


山井「ああ、無事だったんだと少し安心しましたが……」


陽子「振り向いた娘の顔を見て、全身に寒気が走りました」


--何があったのでしょう?


山井「笑ってたんです」


--笑っていた、と。


陽子「違うんです。違うんですよ、いつもと」


山井「いたずらっ子のように笑うんですよ、娘は。でもね、そのときは、こう、何というか……悪魔みたいというか」


陽子「とにかく、目の前にいるのは娘じゃないって思ったんです」


--ということは……。


山井「誰かと体を入れ替えたんだって……」


--能力を使った、ということですね。


陽子「でも、私たちがそうやって気づく前に、娘は部屋を飛び出していきました」


山井「慌てて追いかけたんですが、間に合わず……」


--それから、警察に捜索願いを出されたというわけですね。


山井「はい。結局、3日間探していただいたんですが、見つかりませんでした」


(すすり泣く音)


--奥様、大丈夫でしょうか?


陽子「……すみません。当時のことを思い出すとどうしても」


--お辛ければ、ご退席いただいても大丈夫ですよ。


陽子「いえ、大丈夫です。あなた、話を続けて」


山井「本当に大丈夫か?」


陽子「ええ」


山井「では続きを……それで、4日目の朝に警察の方から電話がきたんです」


--娘さんが見つかった、と。


山井「いえ……私たちの近所で、一家惨殺事件が起こったという知らせです」

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