特A事案「Mr.テディは一体何処へ?」②

--”体を入れ替える”、ですか。


陽子「夢の話をした時に見せた笑顔に……ゾクッとしました」


--それはなぜでしょう?


陽子「夢の中で見た、私達自身の笑い方そっくりだったんです」


山井「それで、ああ、あのときの我々はこの子が姿を変えたものだったんじゃないかって思って」


--確証に変わる出来事はありましたか?


山井「さっきの夢の話を続きを話しました。そしたら、娘自身がこう言ったんです」


陽子「『その夢の原因、私知ってるよ』って」


山井「すぐにその原因というのを聞き出そうとしたんですが、ふざけてなかなか言ってくれませんでした。あまりにも焦らされるので、妻が……」


陽子「『あなたが、パパとママになってるんでしょ?』って」


山井「そしたらしょんぼりとして……『なんだ、バレちゃったのか』って言うんです」


陽子「それで、間違いなかったんだって……」


--実際に娘さんの能力が本当かどうか確かめたのですか?


山井「はい。すぐに試すのは怖かったんですが……やはり興味の方が強くて」


--最初に試されたのは、どなたでしょう。


陽子「私です」


--どういった方法で入れ替えるのでしょう?


陽子「あの子と両手を繋ぐんです」


(5秒ほどの沈黙)


--それだけ、ですか?


陽子「はい。それだけです」


--入れ替わる瞬間というのは、どんな感じなのでしょうか?


山井「目の前が暗くなって、一瞬で景色が変わります。娘の目線になるんです」


--能力に何か制限のようなものはありましたか。


山井「特に無かったですね。一度入れ替わったら、もう一度戻ろうとしない限りはずっとそのままです」


--どうやったら元に戻れるのでしょうか?


陽子「同じです。また両手を繋げばいいだけ」


--彼女自身は、この能力の使い方をどうやって学んだのでしょうか?


山井「不思議な事なんですが、娘はこの能力の使い方をいつのまにか理解している様子でした。私達以外で試したとか、そういうこともしなかったようです」


陽子「本人も『何となく。知ってた』っていう風に話していました」


--能力のコントロールはどうしていたのでしょうか?


山井「娘の意思とは関係なく両手を繋ぐと自然に入れ替わってしまうようでしたから、『誰かと手を繋ぐときは、気をつけてね。両手で繋がないように』と常日頃から言うようにしました。それで、友達と遊ぶときは手袋をしたり包帯を巻いたりなどしていました」


--ということは、直接肌に触れなければ発動しないのでしょうか?


陽子「はい。手のひらに直接触れていなければ入れ替わらないことに気付きました。もちろん、このことも娘は自然と理解していたようですけど」


--娘さんについて、いろいろお聞かせいただきありがとうございます。それでは、実際に”八神雄二”と関わった事件……娘さんが失踪したときのお話を聞かせていただけますか?


山井「……はい。よろしくお願いします」

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