特A事案「Mr.テディは一体何処へ?」④

--惨殺事件、ですか。


山井「はい。『おととい、昨日と連続で起こっています。しかも、この近辺で。犯人はまだ捕まっていません。娘さんにも危害が及ぶ可能性があるので、捜索にはより一層力を入れます』という話でした」


陽子「その瞬間、私が泣き崩れて……」


山井「目の前が真っ暗になりました。娘も巻き込まれるんじゃないかって……」


--その知らせを聞いて、どうなさいましたか?


山井「一時間くらいしてから落ち着きまして、私が外へ探しに出ようとしました。いても立ってもいられなくなったので」


陽子「私はまだ動けなかったので、家に残ることにしました。また警察の方から連絡が来るかもしれなかったので」


山井「それで、家から出た瞬間に『いやはや、大変ですね』と声をかけられました」


--それが、”八神雄二”ですね。


山井「はい。まぁ、名前とかはあとで調べて分かったんですけどね」


--どんな男でしたか?


山井「結構ガッシリした体型で、背が高かったです。あと、メガネをかけていました。青いフレームだったっけ?」


陽子「確か、そうです」


--”八神”は何と言っていましたか?


山井「確か、『あなたたちの身に何が起こっているかは大体把握しています。私がなんとかしましょう』って言って……最初はポカンとしていましたが、おそらく娘が行方不明になったことだろうと思いました。『何であんたがそんなこと知ってるんだ』と話しかけようとした時に『まずは現場検証です。メチャクチャになった部屋があるはず』と。ああ、やっぱりこの人、何かを知ってるんだ、と……」


--そのあと、山井さんは”八神”を家に入れたわけですね。


山井「はい、娘の部屋に」


--奥様は、”八神”の印象はいかがでしたか?


陽子「ちゃんとした身なりの人でしたし、警察の人かなって思ってました」


--なるほど。それで、娘さんの部屋を見た”八神”の様子はいかがでしたか?


山井「最初はしたり顔でグチャグチャになった部屋を見て回っていました。『ふんふん、なるほど』とか『やはり、そうでしたか』とか言って。でも、途中で様子がおかしくなって……」


--どのような様子でしたか?


山井「ぬいぐるみ……メールでご説明した例のクマのぬいぐるみのことです。それを見つけて手に取ってから、『あれ、何だこりゃ?』とか『どうしてこんなことになってるんだ?』とか言い出したんです」


--彼が違和感を感じていたと。


山井「それで、『お父さん、このぬいぐるみはどこで手に入れましたか?』って聞かれたので、家族で行ったフリーマッケットで買いましたって答えて。そして、『このぬいぐるみに何かしました?』って」


陽子「なんでぬいぐるみのことばっかりって、当時は思ってました」


山井「まあ、後で説明を聞いたら納得でしたけどね」


--そのあとはどうされましたか?


山井「それで、『そのぬいぐるみがなんだっていうんですか? 娘のことをなんとかしてくれるんじゃなかったんですか?』って言いました。そしたら、『娘?』みたいな反応で……」


--では、娘さんのことについては……。


山井「その時は、全く知らなかったようですね。それで私も訳が分からなくなって、『行方不明の娘を探してくれるんじゃないのか? 娘が行方不明なんだ!! そして娘の体と入れ替わったヤツも!!』って怒鳴ってしまったんです。そしたら、その人がハッとして『お父さん、今なんて言いました?』って……」


--そこで、”八神”は娘さんの能力について知ったという訳ですね。


山井「はい。ここ数ヶ月で起こったことを全て話しました。そして、部屋が荒らされていたこと、娘が何者かと入れ替わったらしいこと、家を飛び出して行方不明だということ……そしたら、しばらく考えこんで、またハッとして言うんです。『急いで娘さんを探しに行きましょう』って」


陽子「私たちにも付いてくるようにと言って……それと、『そのぬいぐるみも必ず持ってきてください!!』って大声で……」

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