(※復元成功)特A事案「蛇巫女」に関するインタビュー記録④
--それでは、続きをお聴きしてもよろしいでしょうか。
馬場「じゃあ、続きを。俺が村に戻って近所の人たちとワイワイやってると、その人が近づいてきたんです」
--それが”八神雄二”、ですね。
馬場「はい。それで俺の正面まで近づいてきて、両手で握手してきて。『いやー、よかったですねー。無事、戻ってこれたようで』みたいなこと言って」
--ずいぶん軽い感じですね。
馬場「そうなんですよね。だから俺らもポカンとしちゃって、で、『込み入った話は、ご自宅に行ってから』って言うんで、俺の家に連れて行ったんです」
--不信感は無かったですか?
馬場「そりゃ無いって言ったら嘘になりますけど……でも、話しぶりからして事情を知ってるようですし、たぶん東堂さんの関係者なのかなって」
--ご自宅では何を話していましたか?
馬場「居間でちょっと落ち着いた後、その人が唐突に話し出しました。『君たちの見た”蛇巫女”は本来の姿じゃないというのは聞いていますよね?』って……そこで初めて”蛇巫女”って名前が出ました」
--なるほど。
馬場「で、東堂さんから『本当だったら上半身は6本腕の巫女の姿、下半身は巨大の蛇の姿』ってのは聞いてたので、『そうですね、下半身が無くて……』みたいな感じで答えたら、『そう!! そこなんですよ!!』って大声出して。『おかしいと思いませんか? なぜ本来の姿ではない状態で現れたのでしょう』って。確かにな……とは思いましたけど」
--それから、どんな話を?
馬場「で、また話し始めたんです。『そこで、君たちが森に入った時に聞いた”音”に繋がります』って」
--馬場さんたちの動きに合わせて動く、”物音”ですね。
馬場「はい。『それは、その”蛇巫女”って奴の音だったんじゃ……』って答えたら、『いいえ、違います』ってきっぱり。『それは、馬場さんのお父さんだったんです』って言うんです」
--お父様?
馬場「親父って言葉を聞いて、腹が立ってきたんですよね。そもそも俺らがこんな目にあったのは、親父の『森に入って暴れてみろ』って一言が原因ですから。『なんで親父なんですか?』って半ばキレ気味に返したら、突然『馬場さん、お父様の職業が何かご存じですか?』って質問されました」
--唐突な話ですね。
馬場「そうなんですよ。八神さん、思いついたこと喋っちゃうって感じの人でした」
--それで、そのお父様の職業というのは?
馬場「俺は清掃業だって聞いてたんで、そのまま答えました。そしたら、隣のお袋がモジモジし始めたんです。『あー。そうね……そうよね……』みたいに。それを見て八神さんが『お母様はご存知のようですね。お父様がいわゆる”拝み屋”だということを』って」
--”拝み屋”?
馬場「驚きですよ。そんな話、少しも聞いたことなかったから。でもお袋が『はい……実は……』って言うんで、おい本当かよって思いました。八神さんが言うには、『そういう職業だからこそ、森に潜む怪異のことを知っていたんでしょう。単なる伝説ではなく、本当に恐ろしい存在であるということを。でも、それで後悔してしまったんです』って」
--後悔、ですか?
馬場「俺と喧嘩した時、相当頭に来てたんだと思います。それで、勢いで森の話をしちゃって……でも我に返って、このままだと息子は確実に死ぬってなって……それでこっそり後をつけてきたんじゃないかって話でした」
--そういうことだったんですか。
馬場「ふと、気付いてんですよ。そういえば、森の一件以来、親父の姿を見かけてないなって。お袋も、「そういえば、ずっと前から家に帰ってない』って。そしたら、八神さんが『それに関しては、残念なお知らせがあります』って……」
--残念、ですか。
馬場「親父、その界隈じゃそれなりに名の通った人だったらしいんですよね。相当、”チカラ”が強かったって。だから、森に入った時に”蛇巫女”に影響を与えちゃったらしいんです」
--影響、ですか。
馬場「自分の縄張りに何かが入ったってのを察知して、親父を排除しようと動き出したんです。その時に、”上半身”の巫女の部分は邪魔だったんでしょうね。親父と巫女さんは、同業者みたいなもんですから。その”チカラ”を親父に利用される可能性がある。だから、泣く泣く分離したんじゃないかって。上下合わさった状態の方が、”チカラ”は何倍も強かったらしいですけどね。で、その大蛇と親父が戦って……おそらく相打ちになったんじゃないかって」
--なぜ、そのようなことを?
馬場「俺たちもそう思って、『何でそんなことわかるんです?』って聞いたんです。でも、『それはお父様を探したら分かります』っていう一点張りで。だから、その日の内に村の消防団の人に森に探索をお願いしました。それで、見つけてくれました……親父の死体。たぶん、一瞬で丸呑みにされたんじゃないかって言ってました。胃液みたいなのが全身に付いてたから。でも、親父なりに抵抗したんでしょうね。内側から何かしらの”チカラ”を加えて、それで蛇も死んで……」
--それで相打ち、だと。
馬場「動かない親父を見て、泣いちゃいましたね。あんなに憎んでたのに。結果、俺を守ってくれたみたいなもんですから。生きてりゃ礼の一つも言えたんでしょうけど……もう後の祭りです」
--謹んで、お悔やみ申し上げます。
馬場「そんな……随分前のことですから」
--ちなみに、大蛇の死骸はあったんですか?
馬場「それが……無かったそうです」
(音声記録、終了)
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