音声入力・現代編
例としてまず、現在執筆中の拙著、『沖浦数葉シリーズ』の今後発表予定の新作から、実際の音声入力による執筆の様子を書いてみようと思う。
宣伝になるが、シリーズ第一作、『沖浦数葉の創作メモ ―浦島太郎のウラ話―』は以下のとおりである。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894248155
◆
「ぶらんでーぐらすのなかでは、とうてん、こはくをとかしたようなえきたいがゆるやかになみうっていた、くてん」
―― ブランデーグラスの中ではとて琥珀を溶かしたような液体が緩やかに波打っていた。 ――
おおむね順調。『、』と変換されるはずのとうてん(読点)がとてとなっているがすぐに修正できる範囲である。
あと、入力例が全てひらがなになっているが、これは自動入力では変換困難なので手入力としている。
「かっこ」
―― かっこ ――
あれ、駄目だった。
「かぎかっこ」
―― 「 ――
よし。
「かぎかっこ さんてんりーだ さんてんりーだ 」
―― 「…… ――
これは、ライトノベルではクール系やダウナー系のヒロインなどのセリフによく使われる表現であるが、その例に漏れず拙作のヒロイン
「ん、とうてん、おいしい、とうてん、ね」
―― ん、美味しい、ね ――
今度は読点もうまく変換できた。
しかし、自室とはいえ、いい年したおっさんが女子高生の言葉を口にするのはちょっと……。今度から彼女のセリフだけ手入力にしようかな。
「かぎかっことじる」
―― 」る ――
『る』はいらなかったか。
入力ミスや変換ミスを消去するのは、さすがに手作業となる。
「かぎかっこ、かぎかっこ、かんぱい、かぎかっことじ、かぎかっことじ。かいぎょう」
―― 「 「乾杯」」改行 ――
改行は、これでは駄目だった。
「ふたりのこえがかさなり、とうてん、ふたつのぐらすがすずやかなおとをかなでる、くてん、あたらしいぎょう」
―― 二人の声が重なり、2つのグラスが涼やかな音を奏でる。新しいよ ――
数字の二で表記ゆれが発生しているので、漢数字に統一することにする。
改行や誤変換の修正などは、ある程度入力後にまとまって行う予定だ。
それから、ネットで見る限り、『新しい行』の音声コマンドで改行できるようになっているらしいが、どうやら筆者の環境では音声入力で改行は難しいようだ。
機種とかOSの違いかもしれないが。
そのまま一行に入力して、校正時に改行する予定。
また、文頭などに使う全角スペースも入力できないようだ。文頭についてはカクヨムのツールで段落先頭を字下げできるので、これも最後にまとめて作業を行えばいい。
もう一つ、『くてん(句点)』は『まる』でも変換可能。読点の方は『てん』だけでは駄目だが、まあそれは仕方ない。
「みつめあいながらおれたちは、とうてん、ぐらすをくちにはこぶ、くてん。くちのなかに、とうてん、むぎのかおりがひろがった、くてん。あたらしいだんらく」
―― 見つめ合いながら俺たちは、グラスを口に運ぶ。夜中に、麦の香りが広がった。
――
「あれ、かいぎょうできた?」
―― あれ海魚できた ――
思わず口に出した言葉が妙な変換をされているが、それはたいした問題ではない。
口の中に、がなぜか夜中に、と変換されているが、それもどうでもいい。
『新しい段落』の音声コマンドで改行ができている。
本来ならば、『新しい行』で一行の改行、『新しい段落』で空白行一行を追加して二行改行されることになっている。
筆者のスマホではできないと思っていたが、これは、まさか……。
「あたらしいぎょう、あたらしいぎょう、あたらしいぎょうあたらしいぎょうあたらしいぎょう」
―― 新しいよ新しいよ新しいよう新しいよ新しいよ ――
駄目だった。
何度やっても駄目だった。
段落の改行だけできて、一行の改行ができないというのも不自然なので……。
結論:滑舌が悪いと改行ができない。
これは、ある程度入力後にエンターキーを叩くか、二行改行しておいて空白行を削ればいいだけの話である。結構面倒だけど。
「さんてんりーだ、さんてんりーだ、いやほんと、とうてん、なにやってんのおれたち、くてん」
―― ……イヤホンと、何やってんの俺たち。 ――
作中での主人公の心の声であるが、音声入力中の筆者の心境でもある。
『いやほんと』は、『いや本当』と迷ったが、こちらにした。その結果、うまく変換できなかった。
本作は主人公の一人称視点であり、会話劇でもあるため、口語表現が多用される。このような砕けた表現は、場合によっては音声入力が難しいかもしれない。
後ほど色々試してみる予定。
なお、実際に主人公とヒロインが何をしているかというと、現在執筆中の文章公開をお待ちいただきたい。一言付け加えておくと、法に触れることはしていない。
もう一つ追記しておく。
この文章で多用されている『 』(二重かぎかっこ)、カクヨムでルビの入力に使われる《 》(二重山かっこ)は、残念ながら音声入力では出せないようである。
◆
さて、本作は現代の高校生男女による会話劇であり、口語調がちょっと引っかかるくらいで大した問題にはならなかった。
会話内容がたまに現実離れするだけで、魔法とか戦闘とか現実離れした描写が延々と続くこともない。
だから、音声入力と親和性が高かったのかもしれない。
では、このカクヨムをはじめネット小説で主流となっている異世界物はどうだろうか。
次回は、拙作の一つである異世界ファンタジー、『レディアース博物誌』を題材に、ファンタジー物の執筆における音声入力の有用性について調べてみたいと思う。
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