第23話
一時間後にお葬式がはじまる。
まさか、自分より年若いアーミラの葬儀をすることになるとは、思ってもみなかった。
私は、真っ黒いドレスに身を包んで、オークの木を見上げた。
この場所で、彼女は自ら命を断ったのだ。
死を選ぶほどの悩みがあったのだろうか?
奴隷として、隣の人狼属の国から売られてきた娘だ。家族と引き離されて悩みは多かったのかもしれない。
でも、どうして今?
それに、あの夜に私の寝室へ入り、ペンダントを持ち去った人狼。
もしかして、それがヴィクトルじゃなくて、アーミラだった??
なくはない話しだ。
もし、アーミラなら、持ち去ったペンダントは今も彼女が持っているのだろうか……。
次々に疑問が頭の中に浮かんでくる。
ふいに、誰かが私の隣に立った気配がした。
「こんにちは、ミア。この度は、御愁傷様だったね」
振り向くと、そこには黒豹を思わせる、レオン·クロフォードが佇んでこちらを見つめていた。
「レオン、どうしてここに?」
まさか、この人物がそばにいたとは思っておらず、内心たじろいだ。
なにしろ、2回目のミアを自ら処刑した人物だ。
恐ろしくないはずがなかった。
喉の奥がヒュッと鳴るのをなんとか飲み込んだ。
「君の顔を見にたまたま寄ったら、なんと今日はメイドの葬儀をすると言うじゃないか。本当に驚いたよ」
「驚かせてごめんなさい。亡くなった子は、この国に家族のいない子だったから、代わりに私が葬儀をすることにしたの」
「そうだったのか。奴隷のメイドにそこまでするなんて。素晴らしい婚約者だよ君は!」
本心なのか、そうじゃないのか、判断のつきにくい様子でレオンは褒めてくる。
……あれ? ちょっと待って。
今、レオンは奴隷のメイドといった。
奴隷だなんて、私は一言も言ってはいない。
屋敷の誰かにアーミラのことを聞いたから?
なんだか心の奥がざわざわする。
レオンから一刻も早く離れたい!
この人物は、危険だ!って、自分の身体が警告したいるみたいだ。
「もう、葬儀がはじまるから行くわ」
私はさりげなく彼から離れようとした。
「待ってくれ、ミア!」
レオンは、私の前に立ち塞がると、いきなり私を両腕でギュッと抱きしめてきた。
「辛かったら、なんでも言ってくれ。そのために許嫁になったんだから……」
突然のことで、私の頭は真っ白になった。
レオンって、こういう人だったの?
冷徹で、何考えているか全く分からなくて、王子の命令絶対で。
いや、それよりも彼の心臓の鼓動が大きくて、こっちまでドキドキしてくる。
うん? ドキドキって何だ!?
まさか、この私がときめいてるのぉ~!!?
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