第21話
「……ミ、ア様! ……ミア様っ!!」
朝、私は慌てる侍女に激しく揺り動かされ、強引に起こされた。目を擦りながらサイドテーブルの置時計に目をやると、時刻は朝の5時。いつも7時に起きているのだから、まだまだ眠っていられる時間だ。
「いったい、こんな時間にどうしたの?」
眉をよせて起き上がる私に侍女が捲し立てた。
「大変なことが起きてしまいました!」
侍女の顔をよくよく見ると蒼白と言っていいほど青ざめていた。こんな表情をした彼女をはじめて見た。
何かよくないことでもあったのだろうか?
「お庭のオークの木に……、ああっ! なんであんなことを……!!」
彼女は何かを急に思い出したみたいで、震える両手で顔をおおった。
「あ、ああああああ……っ!!!!」
指の隙間から嗚咽があふれだす。明らかに混乱をしていた。ガクガクと細い身体が痙攣を起こすように震えていた。
「待って、落ち着いて頂戴。ほら、ベッドに座って息を深く吸って、吐いて、深呼吸よ」
あえて私はゆったりと落ち着いた声音で彼女に声をかける。同じように慌てていては、彼女をより興奮させてしまいそうだ。
「はあっ、うぅ、ああっ……!」
落ち着いてもいいんだよと優しく彼女の背に手をのばし、ゆっくり、ゆっくりとさすってあげる。彼女はびっしりと汗をかいていた。あとで、着替えさせた方がいいかもしれない。
深呼吸を何度も何度もさせる内に、徐々に彼女は落ち着きを取り戻していった。
最後におおっていた手で涙をゆぐう。
「大丈夫?」
「も、申し訳ありません! ミア様の前でこんな醜態をさらしてしまって……!!」
泣いていたと思ったら、今度は顔を真っ赤に染めている。感情がすぐに表に出る分かりやすいタイプの子だなぁ、うん、嫌いじゃないよ、こういう素直な子。
「気にしなくていいわ。それより、庭の木に何かあったの?」
私の部屋からは方角的に庭のオークの木を見ることができなかった。
「そ、それが……!」
またそこで侍女は口をふさぐ。
「教えてちょうだい」
「お、お庭の大きなオークに、……ひ、人がぶら下がっていて……」
「なんですって? 人がぶら下がる??」
その突拍子もない言葉の羅列に違和感を感じる。
「まさか……」
「は、はい。……そのまさかが起きました」
ピンッと張りつめた部屋で私と侍女はごくりっと唾を飲んで見つめあっていた。
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