第20話
ガタガタと窓が鳴っている。今日は午後からどんよりとした曇り空で風が強かった。もしかしたら、外は雨でも降っているのかもしれない。
私はもぞもぞとベッドから起き上がって、すぐ近くのサイドテーブルの上の置時計を見た。時刻は深夜一時だった。
変な時間に目が覚めてしまったと私はまた横になった。まだ私の頭も身体も睡眠を求めていた。目をとじるとすんなりと眠りにつくことができた。
私は寒くて深い眠りから戻りつつあった。
……なぜか首のあたりがヒヤリとする。
寝相が悪くて、かけていた毛布をいつの間にかはいでしまったのだろう。そう思って目をひらくと、目の前に誰かがいた。
「!!?」
怖すぎて声すら上げられなかった。
ベッドに横たわる私にそいつは覆い被さっていた。そして、アゴ下までかけていた毛布がはぎとられていた。(もちろん服はちゃんと着ている!)
暗がりの中、そいつの耳はぴんと尖っていて、鼻筋は細長く前に突き出ていた。それに顔全体が毛に覆われている!
人狼っ!?
そうとしか思えない。こんな獣に変身できるのは人狼族しかいないのだ。
「ヴ、ヴィクトルなの!?」
ようやく声を絞り出すことが出来た。
すると、その獣の金色の目がギロりと怪しく光った。なぜかは分からないが獣は突然興奮し始めて、ハッ、ハッ、と荒い呼吸をしていて瞳も血走っている。
とても嫌な予感……!
このままでは私はこの獣に食い殺されるかもしれない! 人狼の牙は鋭く、子供の人狼でも人間を噛み殺してしまうことがある。それに、手の鉤爪は鋭利なナイフのように尖っていて、それで引き裂かれでもすれば、皮膚どころか筋肉、悪ければ内臓まで損傷してしまうのだ。
でも、こんなに近くではもう逃げることはできない。
獣の口がうすく開かれた。長くて赤い舌と尖った白い歯が並んでいるのが見えた。
「ヴゥゥゥ……」
喉を鳴らす低い声が聞こえる。
私は頭が真っ白になった。
……万事休すっ!!
またしても私は三度目の死を迎えるのか。
恐ろしくて、でもどうしようもなくて私は目をつぶり身を固くした。
「ガウッ……!!!!」
獣は私にかぶりついた。
「ぎゃっ!」
獣の鋭い牙はミアの薄い皮膚を意図もたやすく切り裂き、激痛と共に鮮血があふれる。
そのはずだった。
……あれ?? おかしい。
どこも痛くないな。
確かに獣は私に牙を向いたはずなのに。
そっとそうっと目をひらく。
すると、首元で何かが強引に引っ張られて切れる感覚があった。
私の目の前に逆さ五芒星のペンダントがぶらさがっていた。
「えっ、これって……」
私は目を丸くした。
その獣は私の胸元にあった、逆さ五芒星のペンダントを咥えていた。
私のペンダント?
なぜ、獣はペンダントを取ったの??
そんな疑問が頭の中で浮かんだが、獣はまだ目の前にいる。油断は禁物だ!
私は恐ろしい獣と見つめあったまま、ごくりっと唾を飲み込んだ。
すると、人狼は私に興味をなくしたようにくるりと方向転換をすると、タンッと床に下りて走り出した。
近くの窓に体当たりをして外へ出ると、人狼は風のように消えうせた。
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