第14話 リプレイ①
くるしい、くるしい、くるしい……!
目が覚めると、そこは美しい天国でした……。
いやいや、そんなに世の中甘くはない。
可愛がってくれた死んだじいちゃん、ばあちゃんに会えるかも。。それもなさそうだ。
確かに私はミアの身体で死んだはずだ。
だって、なんの毒かは知らないが、うぐみのいた現代社会より確実に文明が遅れている異世界で、解毒の注射なりなんなりをしてくれたとは思えなかった。
でも、信じられないことも起きていた。
外は麗らかな陽気、どこまでも晴れ渡った雲ひとつないお天気。
朝からお屋敷の中も外も大忙しだった。
料理人が、五段だてタワーケーキ、色鮮やかなマカロン、ドーナツ、サンドイッチ等をせっせと作っている。それをメイド達が外へ運んでいる。
屋敷の外、緑の芝生では三種類のテントを張っている最中だった。
どれもこれも見覚えのある光景だ。
なぜ、同じことを繰り返しているのだろう?
「全く、何をぼうっとしているのです? これは貴女が言い出して、始めたことなんですよ!」
ヴィクトール嬢がプリプリしている。
「あっ、ゴメン……。あのね、念のために確認したいんだけど、フリーマーケットパーティーはこれから始まるのよね!?」
「どこかで頭でもぶつけたのですか? 今さら、面倒臭くなって、辞めたくなったんじゃあないでしょうね??」
「そ、そんなわけないでしょ!」
「それなら良いですが……。あと三時間後にはパーティー開催ですから、ミア様も早く着替えてきて下さい」
急かされて渋々うなづいた。私はまだシルクのネグリジェ姿だった。
三時間後にフリーマーケットパーティーがはじまる。フルーツポンチを食べて死んだ私が生き返り、また死んだ日の朝をリプレイしている。ふわふわだと信じていたタオルを肌に擦り付けたら、実はゴワゴワで凄く残念みたいな、とっても変な気分だ。
何かの冗談なのだろうか? そう思いたくなる。
「ミア様、フルーツポンチの材料が揃いました。どうされますか?」
ヴィクトール嬢が教えてくれる。
「もちろん、私が作るわよ!」
私はネグリジェのまま、腕まくりをした。
すると、すかさずヴィクトール嬢がはしたない、と注意をしてくる。
「何度も言われなくたって分かっているわ」
「えっ?」
彼女こと彼が怪訝な顔をした。
ああ、しまった。今回が初めて言われたんだったわね……。私は慌てて苦笑いを浮かべた。
「とにかく、着替えてくるわ」
そそくさと、自分の部屋へ戻る。
私は今日もう一度、フリーマーケットパーティーをはじめるのだ。
誰かは知らないが、今度は絶対にフルーツポンチに毒なんて入れさせないんだから!!
そして、毒を仕込んだ犯人を捕まえてやる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます