第24話 仮初でもいい

「リン!!なんでこんなもの獲ってくるのよぉ!!」と、アリアさんが叫んでいる。

僕らの前には王魚がいる。初めて見た。でっかい。

「あれ、なに?」

あまり感情を表さない妹が呆然と呟き、

「でっかい魚だぁ!!」と、弟ははしゃいでいた。

朝目が覚めたら、家に残されている筈の弟がいた。

体には傷1つなく、

「貰ってきた」とは、相変わらず言葉足らずのリンさんの説明だったが、救い出してくれたのだろう、感謝した。

リンさんは僕らに名前も付けてくれた。

「取り合えず、君ら3兄弟はわたし達で保護する!!いつか1人立ちしたくなるまで一緒にいればいいし、名前がないと不便だから!!」

「小僧はリク!!わたしの兄貴の名前だ!!」と、僕を指さし、

「チビ助はリオ!!私の弟の名前だ!!」と、弟に言う。

「で、妹にはアリアがつけて。」

「サリア。」

「オッケー。」

今僕達は、リク、サリア、リオの3兄弟に・・・

いや、上に2人姉がいる。

アリア、リン、リク、サリア、リオの5人兄弟になった。

「いや・・・人数増えたし、飯がいると思って・・・」

視線をうろうろさせながら言い訳するリンさん。

獣の森でキャンプ出来るくらい強い魔法使いの2人だったが(結界とか言ってた)、主に力担当はリンさんのようだ。

王魚を獲ってくるような常識外に、ガンガン言えるのがアリアさん。

「5人でどうしろっていうのよ!?何人前よ、これ!!」

「いや、まあ・・・大は小を兼ねるっていうか・・・」

「大き過ぎでしょ!!」

「いや、ねえ?」

うわーっ、強いなぁ、アリアさん。

さすが長女と思っていると、

「こいつが強いの、わたしにだけだから。基本人間怖いのチキンだから」と、僕だけに聞こえるようにリンさんが囁く。

えっ?そうなの?

「なんか言った!?リン!!」

「ううん、何にも。」

「もう!!絶対残したくない!!」

「相変わらずお残しは嫌いだねぇ、アリア。もうこうなったらチビどもに!」

言いかけて、言い直す。

「リクとサリアとリオにも手伝って貰ってさ、干物とか作ろうよ。」

名前を呼ばれた。

パッと妹と弟・・・ううん、サリアとリオの顔が明るくなる。

多分僕も同じだ。

「いい?みんな?」

「うん、手伝う。」

「何をすればいい?」

サリアとリオが駆けて行く。

リンさんによると、僕らには魔力があるらしい。

僕にはアリアさんと同じ癒しの力があるそうで、おそらく無意識でそれを使って、自分と妹、弟を守っていたのだろうと、教えてくれた。

でないと、あんな虐待、生き残れるものじゃない、と。

「よく頑張った」と褒めてくれた。

サリアとリオの力は、あることは確実だがどういうものなのか、今はわからないとも言っていた。

そういうことも含めて、一緒にいるうちにボチボチ探っていけばいいと、姉2人は笑っていたが・・・

今は2人の兄弟になれたことの方が嬉しかった。

僕達を嫌わない、笑いかけてくれる、気にかけてくれる2人の弟になれた。

「うん。じゃぁ、何をすればいいの?」

こんなことは初めてだ。

自分の意志で。自分の力で。

僕は歩き出す。

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