3章

第25話 日常が非日常

おはようございます。突然5人兄弟になったイチイリンです。

元々3世代同居の大家族だったし、大人数には慣れてるけど。

自分が保護者枠なのは初めてだな。あと、姉ちゃんいるのは初めて。

いやぁ、姉とは口うるさいものです。

やれ、

「滅茶苦茶するな」とか、

「雑だ」とか、

「無茶するな」とか、

「汚すな」とか。

すいません、基本わたしが悪いです。アリア、あんたは良い姉だよぉ。

で、新入りの3兄弟は、見事2つに分かれたな。

いや、別に全員わたし達に懐いているよ。恐れられたり、煙たがられたりはしていない。

ただ、例えば兄のリクは、基本アリアにベッタリだ。

『おっ、なんだ少年、淡い初恋か?』と思ったが、実際は生真面目すぎる長男気質のせいだった。あの虐待家庭の中で、差別されたメンバーの長男役だったリクは、早くみんなを守りたいのだそうだ。同じ魔力を持つアリアにコツを習っている。

アリア自身激情の末に偶然魔力を使えるようになった感覚派だが、それでも少しずつ伝えられているご様子。昨日着地に失敗し全身擦り傷だらけになったわたしを、癒してくれたのはリクだった。

こげ茶の髪、真面目を体現したような表情だが、細いけど長い手足が大きくなる予感をかきたてる。

すごい!!ちゃんと魔法、使えてる!!

ついでにいっぱい食って大きくなれ。

ちなみにわたし、魔力はコントロール(って言うか手加減?)出来ても身体能力は出来ないってのはおかしいんじゃないかと、時々フルパワーで動いてから止まってみたり、鍛錬めいたことを始めています。

かなり感覚が狂って失敗する。えげつないな、この体。最近じゃ10メートルどころか、2、30メートル飛べてないか、これ?

まだ少し折り合いがつかない。

そう言えば、わたし達はいまだ森の中にいる。

王魚の干物づくりが本気になって、

「いっそ塩を強めにしてカラカラに乾かして、長期保存できるようにしよう!」と、アリアが言い出す。

「で、それを町で売ろう!」

と言うわけで、完成まであと1日か2日はここにいる予定である。

わたしは鍛錬と、それ以外の時間はわたしに懐いている残りの2人、サリアとリオを連れて森を散策している。

7歳のサリアは、奴隷扱いだった影響なのか口数が少なく感情表現に乏しい。痛み切ったぼろぼろの髪は、洗ってみたら赤毛だった。目が大きくなかなか可愛い顔立ちなのだが、いかんせん笑ってくれない。

それでもわたしのことを気に入ってくれているらしく、気づくと傍にいるのでたまに驚く。

リオの方は幼児全開、

「リンちゃーん!」と飛びついてくる。

やばい、可愛い。

本物のリオ(理遠の方)がそこまで可愛くなかったので、余計・・・(本人から2歳差なんだし無理だろう!!と言う突込みが聞こえた気もするが)。

こげ茶の髪、小さな手足に、丸い大きな目を輝かせる。

姉心にくるよ、これ(悶絶♡)。

「練習終わったぁ?」

「うん。」

「今日もお外いくぅ?」

「うん。サリアも来るでしょ?」

「うん・・・」

今日も今日とて、わたしはリオを抱き上げ、サリアの手を引いて結界を出る。

アリアの視線が背中に刺さるよ。

「無茶しないでよ」とか、

「馬鹿なことはしないでよ」とか、

「危ないこともするな」とか。

言葉にしない分、めっちゃ伝わる。

はいはい、わかってるって、姉ちゃん。

年長のリクはともかく、絶対通常の人はしない森での生活を満喫させている以上、小さい2人には危険を知ってもらう必要がある。結界魔法がないと即死亡の世界だから、いかに怖いか覚えてもらわねばならない。

そう、これは必要なことなのだよ。

「行ってきまーす。」

胸の中で言い訳しながら、子供らを連れて歩き出す。

ああ、まだサリアもリオもどんな魔力かわからないから、常に魔力を使っているわたしと一緒にいる意味は重要だよな、うん(後付け)。




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