第2章 新世界にて
第4話・1 新世界にて(1)ー1
私は街道に向かって立っている。
気持ちは落ち着いている。
又洗脳されたのかと一瞬思ったけど、パパやママのことも私の名前も憶えている。
先ほどあった、あの人達5人のパーティーとの件も何故かどうでもいいことのように思える。
実際は洗脳されたり、魅了されたりしたのに。
一体あの宙に浮いていた人は私たちに何をさせたかったのかしら。
私がこうなる前に読んでいた本は関係あるの?
「それもまた、良い。」ってなに?
それもまたってことは、どちらでもと言うことよね。
あの人達5人と一緒に行っても行かなくても良かった?
それって何かさせたかったけど、目的はどちらを選んでも達成できる?ってこと?
そして一番の分からない事が…
何故!私がここにいるの?
私である必要ってないよね。
どこにでもいる10歳の子共、別の子だってよかったんじゃないの?
たまたまあの本を読んでいたから?
アッ名前が出ない、ママの名前は?パパは?あの子の名は?
涙が出てきて止まらない。
泣き崩れそうになったが、私は頭を振り上げ空を睨んで、怒りをあの宙に浮いていた男に向けて吐き出した。
「絶対お前の思うようには成らない!」
もう一度「絶対だよ!」
と叫んで拳を振り上げた。
しばらくの間拳を振り上げていたが、腕が疲れてきたので、拳を手のひらにパチンと打ち付ける。
そういえば左利きだったよね、字を書くのに左で書くと右で書きなさいって怒られるので、どちらの手でも書けるわ。
そんなことは思い出すのに、なんで名前が…
とッ又泣きそうになった。
私が名前を忘れさせられたのは、何か理由がありそうだ。
多分前の世界に心を囚われ過ぎないように忘れさせられたんじゃないかと思う。
何故、私なのかは分からないけど、今考えても分からないってことが分かるだけよね。
宙に浮いていた彼が言ってたように、この名の無い世界でどう生きていくのか、それが今考える事だと思う。
彼によれば、歓迎するそうだし。
世界の敵とかで追われるようなことは無いと思う。
さて、どうしよう? と考えていると、エルヴァン神族のカスミが行動していた。
「神域創造!」神の権能で新たな神域を創造していた。魔力は空っぽになった。
神域は一柱毎の神固有の小世界らしい。
目の前に扉が現れた、扉を恐る恐る開けて中を見てみる。
中は白い壁で作られた右も左も同じぐらい長さのある、たぶん左だけで5メートルぐらい。
高さは私の身長の2倍程なので3メートルぐらい。
前方に目測だけど5メートルの長方形の部屋。
優しい光が何処ともなく射している、大きな何もない空間だった。
中に入り扉を閉める。
壁と同じような白い床に崩れる様に座った。
今分かった!!!
あの時、大神カスミともう一人カスミ・ヴァン・シルフィードが私として行動出来たのは、どちらも私だったからだ。
今、何の違和感も無く2つの私は1つと成ってこの体の中に居る。
しばらく呆けていた。
暫くして、これからどう行動するか?
何から行動しようか?
と色々考えている私がいた。
結局落ち込んで呆けている場合じゃない。
安全な場所が幸運にも得られたのだ。
と思っている事にした。
今は行動する時だとカスミ・ヴァン・シルフィード251歳(私の事だね by大姉)が思っている。
大神カスミ(カスミちゃんね by小姉)はしばらくは見守るようだ。
(放心してるだけね by大姉)
と言っても私の意志は1つなので、記憶からこう考えるだろうと2つの個性をエミュレートしているだけ。
私の頭の中に、大神カスミとカスミ・ヴァン・シルフィードの個性が残ったのは私の単なる我儘。
2人が私に成った時、2人が居無くなるのは嫌だと無意識に思ったから。
私の能力なのだろう、複数の思考を同時並列で行うことは何の問題も無い。
記憶や知識は共有しているので、違うのは判断したり無意識に行う動作や思考などの個性と言える部分になる。
2人を呼ぶのに大神カスミはカスミちゃん、又は妹。
エルヴァン神族のカスミはカスミ姉ね、又は大姉。
私はカスミちゃんとそっくりなのでカスミ、又は小姉。
さて、気を取り直して考えよう。
ここへ来る前に、選択し設定した情報は重要だ。
生きて行くのに必要な設定、神族とか魔術師とか取得したスキルや割り振った能力値など再度確認しておきたい。
あの時の画面を出そうと、何度か試して見た。
声に出して「画面よ!」とか「ステータス!」とか、他にも色々試してみた。
全然出て来る様子がないので、設定した数値や名前とか文章を忘れないうちに記録する必要がある。
次は持ち物検査だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます