第3話 魅了する声を振り切って
「パーティー登録しようよ、登録申請を送るね。」 エッ…?
画面に パーティーに参加しますか? Yes No と出てきた。
私は今まで何をしていたの? いえ、何をさせられてた? 最初に名前と状況に疑問を思ったんじゃないの?
カスミと言う名前に微かな覚えはある、しかし”ヴァン・シルフィード”には全く覚えがない。
神族・ゲーム・能力値・スキルの振り付け いったい何なの?
それこそゲーム見たい!
そう!そうよ!思い出してきたわ。
私は大神カスミ、10歳(小学5年生)で後2か月で11歳になる。
3月13日生まれ、ジョブナイルの小説を部屋で読んでいたはず。
本の題名は覚えてないけど1巻が「予言されし神々の終焉」で2巻が「世界樹の復活」。
少年勇者と5人の仲間が荒廃した世界を立て直していく物語で、ヴァン神族の女の子が2巻で世界樹を復活させて仲間から離れていく部分を丁度読んでいた。
エッエッ、ここ何処お母さんは何処?ここは私の部屋じゃ無い! ふっと頭が軽くなりかけた。
私は抵抗して頭をキット振り上げた。急に怒りが湧いてきた。
誰かが私を私じゃ無い私にしようとしている。(それを洗脳と言う)
嫌だ嫌だ私じゃ無くなるのは嫌だ、ママやパパを忘れるのは嫌だ。
「どうしたの、カスミ以外は皆パーティーに登録してくれたよ。」アルベルトの声がねっとりと纏わり付く様に、聞こえてきた。
頭の中で赤い警告表示が点灯しているかのように「魅了に抵抗しました。」と表示された。
「魅了してるでしょう? なぜそんなことするの?」私がアルベルトへ向かって、今感じている怒りを全て込めて強く問いかける。
彼は「いや、そんなことしてないよ。」
「それより、パーティーに参加するのしないの?」アルベルトが低い誘い込むような声で問いかけた。
「だから、その魅了をやめてって言ってるの!」頭の中の警告は複数回抵抗したことを表示している。
急にアルベルトが冷たい声で言った。
「ふん、もうパーティーに入らないでいいさ!」
「僕たちは5人で行くから、君はかってにすれば!」
画面の”パーティーに参加しますか?”の表示が消えて、5人が消えていく。
アルベルトの冷たい纏わり付く様な声を頭を振ることで振り払うと、先ほどの怒りが戻ってきた。
わたしを洗脳しようとした者がまだ残っている。
一番最初の声が聞こえた方を振り向いた。
ようこそこの世界に、歓迎する。この世界に名は無い。この世界でどう生きていくのか選べ。
最初に言われた言葉だ。
頭の中に消えずに残っている。
私が見上げると、そこにパパぐらいの男の人が宙に浮いていた。
私が彼を見ると彼も私を見つめ返してきた。
私が「なぜ…ッ と声に出す前に、頭の中に声が響き渡った。
「それもまた、良い。」
「一人でも大丈夫なように用意しよう。」そう言うと この世界が消えた。
私は明るい陽射しに照らされた、街道と森の境で街道に向かって立っていた。
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