Re:第百七十七話

信長「ワシが貴様の息子がほざいていた『うつけ』と噂される織田信長である。しかし、貴様はワシを軽んじるどころか武田家の立ち位置を理解したのは、良い目をしておると褒めてやろう。」


晴具「…」


具教「おい!『うつけ』の分際で偉そうに物を申すな!この北畠家への侵攻を画策したのが武田家で、その武田家の脅威を悟った織田家当主である貴様が武田を支援する形になったのは明白ではないか!」


「貴様の息子はまだワシを軽んじておとるようだ。蛙の子は蛙と申すが、貴様の子は…」

と、言葉を濁し黒い笑みを浮かべた信長は北畠晴具を見て、ぼそっと一言罵った様に呟く。


「哀れよのぅ…」


晴具「哀れか… この者は武芸に置いてはそこそこ知られておるのだがな。」


「これからの戦いにおいて、武芸に秀でていても役に立たないぞ?火縄銃を持った兵にあっさり殺されるだけだ。」


具教「言いたい事はそれだけか?遠くから敵を殺す事ばかり考えくさって… それでも武士か!恥とも思わんとは、やはり『うつけ』で合っておるではないか!」


「貴様は相当な馬鹿か阿呆だな。少しでも兵を損なわず、尚且つ負傷者も出さないで効率良く戦う方が良いに決まっておろうが?それに、遠くから敵を殺す事ばかりと申すが弓矢も同じではないか!日々、戦いは進化していくのだぞ?それに対応出来ないで否定するとは、既に負けを認めているのと同じではないか!」



北畠具教は信長の発言に反論出来ず、歯軋りをしながら悔しいがるのであった。



晴具「ワシの育て方が悪かったのは致し方ないとして、先程の織田家と武田家の立場はやはり…」


信長「貴様の読み通りだ。武田家は、この織田家の一家臣に過ぎん!」


それを聞いた北畠具教は、さらに悔しい表情へと変化して

「馬鹿な… あの甲斐の虎と名高い武田が『うつけ』の下だと?いったい、どうなれば!」



その言を聞いた武田信玄が静かに言葉を発っし

「おい、若造。簡単な事だ… ワシは織田家、いや織田信長様に敗れたからだ。この御方は、概念が我らとはそもそも違うのだ。有体に申せば、ワシも北畠家の皆もそうだと思うが、敵に勝つ為にそれなりの損害が出るものとして勝利を欲するのだが、大殿は違う。先程も申されていたが、兵を極力死なさずに敵を完膚無きまでに屠る事を望んでいると、ワシなりには思っておる。」


信長「信玄の言は、概ね合っておるが… ここで詳しく話すのはよそう。では、この世の未練に何かワシに聞きたい事は無いか?」


目隠しされていた元津城城主の神戸が口を開き

「織田信長!某のいや、北畠家の支城である津城の大手門をどのように破壊したか教えて頂きたい!」


「ほう。アレが分からず悩んでいたのか?ワシの忠実なる配下に籐吉郎と申す者がいる。その者が、貴様の問に答えさせる。おい!」


信長の命により、籐吉郎が立ち上がると北畠具教が激怒し

「おいおい!『うつけ』殿。いくらなんでも猿の話を聞けとか… 馬鹿にするのもいい加減に致せ!そんな恥辱を受けるくらい…」



”ずば!ぼと…”

と、具教が信長に対しまた『うつけ』と申したの為、信玄の一存で勘助に合図を送り刀で斬首したのであった。


信玄「大殿差し出がましく申し訳ありませぬ。某が認め忠誠を尽くしている大殿に何度も、アノ発言を繰り返すものですから…」


「いや、そちの行動、大義である。ワシも、いい加減に腹に据えかねておったのだ。おっと、先程の問に答えてなかったな。」

と、信長は籐吉郎の方を見て合図した。


「始めに申し上げるが、某は猿に似てるだけの人間である!その前に、神戸殿の目隠しを取ってやれ!出ないと説明が出来ん。」



そして、足軽兵が神戸の目隠しを取る。



「しからば… 先程の問でござるが、それは大殿が考案した火縄銃の口径… と言っても分からぬな。これの事だ。」

と、火縄銃の筒状の部分の先の穴を見せた。


「この穴の部分の広さを口径と言い。この口径が広いのがコレである。」

と、今度は大筒を見せた。



すると、晴具と神戸は目を見開いて驚いてたのだった。



籐吉郎「この武器は大筒というのだが、飛距離が… 飛距離というのは矢が届く距離と考えてもらって構わん。その飛距離が約一里で、その殺傷能力は神戸殿なら分かっておるとは思うがな。」


神戸「待って下され!その飛距離?が約一里?有り得ませぬ!そんな武器があるなら、本当にこの戦自体の戦い方が変わってしまいますぞ!」


信長「だから、先程もそう申したではないか!しかしな、この武器は織田家にしかない上に、一基が… コレ一個な。コレ一個に値段を付けると目が飛び出ると思うぞ?」


「は?火縄銃というのは、噂では数百貫というのは知ってまするが…」


それを聞いた晴具は

「簡単に数百貫と申すが、どれだけの大金か分かって申しておるのか?」


「分かっておりまする!そんな金子が有れば、もっと城の外壁を大きくしたり、新たに開墾してみたり致しまする!」


信長「猿、もう良い。話は以上だ。北畠晴具と神戸具盛に目隠しをしろ!北畠家に連なる者は女子供を含む全ての者の首をはねるものととする。」


その言葉を聞いた北畠晴具は慌てて

「あいや、待たれぃ!織田信長様に申し上げる!ワシらは致し方ないが、女子供には罪は無い!どうか、ご慈悲をお願い申し上げる!なにとぞ!」


信長「貴様は馬鹿か?生かしておけば、間違いなく織田家を倒そうと思う者が出て来るではないか!そんな事も分からんのか!おい、猿。ごちゃごちゃ申す口も塞げ!耳障りだ!」



その後、「うー、うー。」と何やら叫んでいたが、その数刻後には全員の首(頭)だけが海岸の砂浜に晒せれ、胴体は硝石採掘所へと運ばれたのであった。


こうして、北畠家は滅亡した。




次に織田信長は当初に目的の九鬼水軍の牙城である鳥羽城に目を向けるのであった。

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