Re:第百六十九話

あの騒動から数日後に信長と八重の婚儀を滞りなく終え、囚われの身であった武田信玄が丹羽の説得に応じ、信長と対面する運びと成った。



信長「改めてではあるが、ワシが織田家当主・織田信長である。窮屈な屋敷に滞在させて申し訳なかったな。」


「いえ、本来なら打ち首にされていた身でございますれば…」


「のぅ、信玄殿。その様な固い挨拶は抜きにせぬか?ワシと腹を割って話そうではないか!」


「それは出来ぬ相談でございまな。ワシは家臣も妻も子も皆、殺されているのだぞ?それをワシだけ生かしておくとは… 織田様も甘もうございまするな。」


「では、申すが… 確かに、お前の家臣も妻も子殺したが、今や親が子を子が親を殺し裏切り追放する。はたまた、家臣が謀反を起こして大名になる。そういう戦国の世だ!ワシはのぅ、そいう世の中を変えたいと思っておる!」


「よくも、ぬけぬけと… しかし、織田様の申す事は正しい。ワシも同じ事をして来た身じゃ。で、織田様は何を望んでおられるのでござるかの?」


「ワシはの、皆が笑って暮らせる世の中だ!その為には一番早い方法は武力をもって天下統一を成し遂げる事と、ワシは思っておる!武田信玄殿、ワシと共に天下を目指してみんか?無論、ただではないぞ!それ相応の対価をおぬしに渡そうと思っておるが… その前に返事を頂けぬか?」


「天下か… それに、対価が何であるか興味がある。よかろう… 織田信長様に忠義を尽くすとしよう!但し、もし弱音を吐く様な事があれば後から斬る捨てまするぞ?」


「ふふ… さすがは甲斐の虎と恐れられていた御方だ。ワシも精進するとしようではないか!その対価というのは、秋山殿はワシの説得も虚しく死んでしまったが…真田家の幸隆、信綱、昌輝、昌幸は信玄に付ける!それと…」




信長が指を信玄の後方へ指した。



その方向を見た信玄は驚き

「ま、まさか、お前が生きておるとは…」


???「某も、御館様が生きていると信じられませなんだが… 生きて、また会えるとは恐悦至極に存知奉りまする!しかし、某だけおめおめと生き恥を晒し申し訳ございませぬ。」


「何を申す!勘助!皆、死んでしまって… お前だけでも生きていて、ワシは嬉しいぞ!」


そして、信玄は信長の方を向き

「合点がいかぬ!何故、勘助だけが生きてるのだ?」


「何、虫の息で倒れていたのをワシが見つけて、死んで元々と思い手当てしてやったのだ。」


「何と!?勘助と面識があったとは… いや何にせよ、今後は織田家の一家臣として仕えさせて頂く!」


「そうか!(勘助と面識など無いがな。)うむ。では、信玄の待遇であるが織田家家老として働いて貰う!よいな?」


「某を家老にでございまするか?は、ははあぁぁぁ!」



こうして武田信玄は織田家の家臣と成り、その配下に真田幸隆、信綱、昌輝、昌幸。そして、山本勘助が名を連ねたのだった。




それから数日後、稲葉山城本丸の評定の間にて軍儀が行われていた。



信光「服部殿の情報によると、伊勢志摩・北畠家の津城は海に面した平城で常駐兵8000が守っておりまする。」


「うむ。あの城は誰が城主であったか?」


「はっ!神戸具盛でございまするが、それより厄介なのは九鬼水軍と称す海賊が援軍として参戦する恐れがありまする。」


「海賊か…(知ってるがな!)それは厄介であるな…」


柴田「何を恐れる事がありましょうや!今の織田軍の勢いでなら簡単に落とせるかと!」


丹羽「権六!勢いだけで勝てるわけがなかろう!もう少し考えてから発言せぬか!」


「むむむ。しかし…」


信長「まぁどちらにしても、まだ時期尚早だ!甲斐の金山を手に入れたし大筒の改良が先だ!」


柴田「また大筒に頼るのでございまするか?」


その話に信玄が

「大殿!その大筒とは何でございましょう?」


「信玄にはまだ話してなかったな。大筒とは遠くから攻撃出来る武器である。しかも、その破壊力は城の外壁や城門を粉砕し、密集している軍勢に放てば甚大な被害が出る代物だが、難点があるのだ。これを戦場(いくさば)に持って行くには大勢の兵が必要になる上に組み立てるのに時間がかかる。」


「要するに威力はあるが持ち運びに難があるという物なのですな?」


「そうじゃ!それで、ワシが次に考えたのが海路を使って運ぶ方法だ!」


明智「それで、九鬼水軍に目を付けたのでございまするな?」


「それもあるが… 四国の三好家を攻略するのにも水軍は必要であるからな。」


丹羽「四国の?伊勢志摩の北畠家を滅ぼし、水軍を手に入れれば伊賀を抜ける必要なく摂津に行けるのでは?」


「長秀。摂津に向うと紀伊の畠山家との遺恨を残しかねんのだ。それに本願寺との公約では三好を何とかしてくれとの事なのでな…」


「前々から思っておったのですが、本願寺との友好がそんなに重要とは思えませぬが…」


信光「長秀!控えぬか!大殿の考えてる事は、我らには想像が付かんのは前々から分かっておろうが!!」


長秀は直ぐさま謝罪し

「申し訳ありませぬ!大殿の考えも知らずに差し出がましい事を…」


「かまわぬ。お前達が疑問に思うのも分からなくも無い。(以前はそれで天下が10年遠のいたのだからな… それを今、こやつらに話してもどうにもならんしな。)しかし、遠い先を見越した時に必ず織田家にとって有利に運ぶと読んでいる。ここはワシに任せて欲しい。」


光秀「財政を預かってる某からも一言。鉱山の採掘を手伝ってもらってるのも本願寺あっての物だと知っておりまするか?皆様。」


丹羽「それは初耳でございまする。」


「一向門徒衆が織田家の全ての鉱山の採掘を請け負ってくれているのです。それだけを取っても織田家にとって有意義な事でございましょう?」


皆が一斉に

「「「「「おおお!そのような事を…」」」」」


信長「皆が納得したところで、今回の軍儀はこれまでとする。それと次回の評定では新たに加わった家臣等を紹介し、皆の昇給もあるのでこれまで通り精進せよ!」



その頃、関東で四苦八苦する徳川家康はというと…

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