Re:第百六十六話
信長が稲葉山城に帰ると、すぐさま本丸の奥座敷に居る帰蝶の下に向った。
信長「帰蝶!帰蝶はおるか?」
「何ですか?騒々しい!そんな大声を出さなくても…」
「いや、すまん。帰蝶に報告しておく事がある。実は側室を娶りたいと思ってな。」
帰蝶は普段と変わらぬ表情で
「それは良い事ではありませぬか!」
「そうか… やはり夜、お前との時間が無くなるのは… は?良いのか?」
「良いも悪いも、それは殿に甲斐性の問題です。それに、夜の時間は信長様が頑張れば良いだけの事でございましょう?で、相手は何処の誰でございますか?」
「この稲葉山城下にある井ノ口の町一の庄屋の娘で名は『八重』と申す者なんだが…」
「あの庄屋の娘なら太鼓判を押します。あの庄屋は父上である斉藤道三の許しを得て、色々手広くやっていて私とも顔馴染みですし… それはそうと、その歯切れの悪さは何ですか?」
「それがのぅ、あの庄屋の主人の婆さんが『この男は駄目じゃ!』とワシを罵りおってのぅ。」
帰蝶は驚きそして、怒りに震えて
「は?天下の織田家の当主に対して『駄目』とは… いったい何様のつもりなのでしょうか?まさか、まだ義龍が支配してると思っているのではないでしょうね!我が夫に対して… いくら父上の贔屓にしてる庄屋でも許せない!」
「いや、ワシも悪いのだ。お忍びで町の様子を見る為に、商人風を装っていたからの。もう一度向うのだが…」
「分かりました。では私(わたくし)が一緒に行きます!」
「待て待て、ワシが普段のままで向えば信長だと一目で分かる事だ。」
「それでは面白… いえ、私の気が納まりません!それに私も商人風な格好をして信長様に付いて行きとうございまする!」
「は?またワシも商人風を装うのか?それでは、また同じ事になるではないか!(ん?こやつ、面白いと言いかけたな… まぁ、良い。ワシも帰蝶がどう出るか見てみたい!)」
次の日の朝、武田残党の説得を任せていた柴田と丹羽が信長の下を訪れていた。
柴田「大殿に急遽任せて頂いた武田残党の説得でございまするが、真田家の者は説得に応じ今後織田家家臣として、その身を置く事になりましたが秋山は応じなかった為、早朝に自害させました。」
「そうか。で、信玄はどうしておる?」
丹羽「信玄殿は、まだ心身共に疲れておいでの様で話が出来ない状態でございまする。」
「まぁ、気持ちは分かるが… これも戦国の世の習いだけにどうしようもない。話せる様になるのを待つしかないが、自害だけはさせるなよ!それとな、信玄にこの薬を飯のも混ぜて食わせておけ!」
丹羽「それは… もしや、信秀様にも渡したとされる貴重な薬ではございませぬか?」
「その通りじゃ。この薬は万能でな、今の信玄に良く効くであろうし…(とういうのは嘘だが、今の内に病を治しておいて損はないからな!)」
柴田「では、そのように取り計らいまする。」
丹羽「それより、側室を娶ると聞きましたが…」
「何?!誰から聞いた?」
「え?もう城中に知れ渡ってまするが、出所は松永殿でございまする。」
「な!?(あやつめぇ… 本当に面白がっておるな?まぁ、良い!)」
柴田「羨ましいですぞ!某など嫁のよの字どころか、縁談の話すら来ないというのに!」
「あのな権六。待っていても来ないぞ!これはと思う相手を見つけ、玉砕覚悟で求婚してみろ!」
「玉砕はしたくないので…」
「市が家康のところに行く事を、まだ引きずっておるのか?」
「は?何を仰せなのか某には分かりませぬが?(家康め!市様を不幸にしたら、すぐに殺してやるから覚悟しておれ!)」
「そうか?(こやつは…)では、その側室候補の事で帰蝶と一緒に出向き城を空けるが頼んだぞ!」
丹羽「ああ、奥方様に話したのですな?(これは面白い!また松永殿から聞く楽しみが増えたわい。)かりました。」
そして、信長と帰蝶の変装が整い稲葉山城を後にするのだった。
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