番外編『蓮弥の〇〇大作戦』 4話



蓮弥と菜子ちゃんお助け隊は、先日と同じファミレスに来ている。



「菜子の指輪サイズは7号ですね。」



「ありがとうございます…」



「さっすがアヤちゃん!」



「でしょ?さて、どれにしようかなぁ。」



絢香はメニューを開き、パフェを選び始めた。



「2人も好きなの選んで。奢るよ。」



「えっ!いいんすか!あざっす!」



「洸、調子乗りすぎ。俺らなんもしてないじゃん。」



「いや…話聞いてくれただけで、十分お世話になったよ。本当は自分で頑張るべきことなのに…」



「それは気にしないでください。駿太が勝手に割り込んでお節介焼いただけなんで。」



絢香が言う。



「そうそう!」



「お前が肯定すんなよ。」



洸が駿太にツッコむ。



「…みんなほんとに仲が良いんだね。伝わる。」



蓮弥は優しく微笑んだ。



––なるほど。菜子はこの美人の微笑みにやられたのか。



絢香は心の中で呟いた。




そして食事を終え、本題に入る。



「じゃあ、二つ目の課題、プロポーズの言葉だね!」



「それ、俺達に頼っていいことなわけ?それに、俺らまだ誰もそんな経験したことねぇし。」



「とりあえず、一回練習してみたら?と、いうことで…駿太、菜子役して。」



「え!?俺!?そこはアヤちゃんでしょ!」



「練習とはいえ、女の私が受けるのは、菜子に申し訳ない。」



「そ、それもそうか…」





そして、駿太と蓮弥は向かい合わせに座り、駿太の隣に洸、蓮弥の隣に絢香が座る。



「じゃあ、どうぞ!」



駿太はニコニコと待ち構えた。

駿太の明るさは、菜子と似たものがあり、蓮弥は余計に緊張した。



「…お、俺と、結婚してください…」



「声が小さい。そんなんじゃ、え?何?って言われておしまいっすよ。」



洸がダメ出しをする。



蓮弥は深呼吸した。そして、顔を真っ赤にしながら、一生懸命もう一度言葉を放った。





「…ッ俺と!結婚してください!」





周囲がざわついた。




絢香と洸は、注目を浴びて少し恥ずかしくなり、思わず窓の外に目をやる。



「…うん、さっきより全然良いよ!」



「ほんと?でも、これだけでちゃんと菜子に伝わるのかな…」



蓮弥と駿太は、周囲の反応に気付かないまま、真剣に話をしている。



「まぁ練習だからな!練習!」



洸は不自然に声を張る。



「そうそう、練習だからねぇ!ははっ。」



絢香も不自然である。

しかしそのおかげで、周囲は事情を察知し、いつも通りの風景に戻った。



「アンタが声が小さいとか言うから!」



「あんなに声張るとは思ってなかったんだよ!しかもガチな雰囲気で言うしさぁ!」



「それだけガチで考えてるってことでしょうが!」



絢香と洸はコソコソと言い合った。



「ねぇ、アヤちゃんと洸はどう思う?」



「へっ?」



絢香の声が裏返った。



「有賀さんのプロポーズ!」



「あぁぁ、いいと思うよ!迫力あって!」



「迫力…」



「…まぁ、あれっすよ。」



洸が口を開いた。



「結局は、どれだけお互いが同じ気持ちかによるんじゃないっすかね。言葉なんて、なんでも良いと思います。その場の雰囲気とか、菜子の様子とかで、練習とは全然違ってくると思うし。とにかく、菜子が同じ気持ちなら、どんな言葉でも良い返事もらえるでしょ。」



「洸…!」



駿太は感動している。



「そう…だね…そうだよね…大事なこと、忘れかけてた…」



蓮弥は俯いた。



「…もうこの際だから、不安を全部ぶちまけちゃえばいいんじゃないですか?そしたら、スッキリした気持ちで菜子と向き合えるかも。」



絢香が提案した。



「でも…迷惑じゃ…」



「全然!どんとこいです!」



「こっちから首突っ込んだんで。迷惑も何も無いっす。それで自信が無いっていうのも解決するかもしれないし。」



「…ありがとう。…菜子と中込君から聞いてるかもしれないけど、俺、夜になると耳が聞こえなくなる病気をずっと持ってたんだ。今は治ってるけど、いつ再発するかわからなくて…。一緒に乗り越えようって約束してるけど、本気で結婚を考え始めると…いずれ菜子の負担になるかもしれないし、また傷付けるかもしれない。俺は菜子を守っていきたいのに、また守られる立場になるかもしれない。…思い始めると、不安が止まらない。縛ってしまっていいのかなって思う。菜子には、ずっとずっと笑顔で、幸せであってほしい。俺がそれを妨げる存在だったらって思うと…勇気が出なくて…」



「…そっか。でも、なっちゃんは、どんな有賀さんでも一緒にいたいって思ってるんでしょ?」



「…そう…だけど…」



「じゃあ、なっちゃんを信じてあげなきゃ!有賀さんは悪い方に考えすぎだし、1人で抱えすぎ!もし再発したら、ちゃんと話して、支え合って、何度でも一緒に乗り越えれば良いんですよ!なっちゃんもそれを望んでるはず!」



「…うん…」



「…自分が菜子を思いっきり笑かして、目一杯幸せにしてやろうって思えないなら、菜子と一緒になる資格はないっすね。」



「洸!言い方!」



駿太が洸を叱った。

しかし、蓮弥はしっかり受け止めている。



「…うん…そうだよね…目が覚めた。俺は、菜子を全力で幸せにしたい。」



「…なら、もう迷う必要も悩む必要もないんじゃないっすかね。」



「うん。」



「菜子、たぶん待ってると思いますよ。有賀さんからのプロポーズ。」



「ほら、なっちゃんの親友がこう言ってるし!なっちゃん、待ってますよ!」



「…うん、ありがとう。勇気出た。ごめんね、情け無いとこ見せちゃって…」



「菜子ちゃんお助け隊としては、本音隠されてるより安心かな。」



絢香は微笑んだ。



「よしっ、じゃあ解決…かな?」



「有賀さんが本番ヘマしなきゃね。」



「う…頑張ります。」



「応援してます!」



駿太は嬉しそうにエールを送った。

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