番外編『蓮弥の〇〇大作戦』 3話



とある休日。

絢香は菜子を連れてショッピングに来ている。



「狙ってたスカート、買えてよかったね!」



「うん、ありがと。てか、ちゃっかり菜子も色違い買ってるし。」



「てへ。つい。可愛かったもんで。」



2人は会話をしながら、ショッピングモールの中をぶらぶらと歩く。



「…あ。私、ピアスも欲しいんだった。菜子、寄ってもいい?」



「うん。私も見るー!」



2人はアクセサリーショップの中へ入っていった。

そして、絢香はリングのコーナーで立ち止まる。



「…あー、私リングも欲しいなー。」



絢香は少し棒読み気味に呟く。



「え?アヤ、リングしたことあったっけ?」



「最近私の中でキテんの。菜子も目覚めるかもよ?試しにつけてみよーよ。」



「確かに、ピンキーリングとか興味ある!」



菜子は小指にはめるリングを眺めた。



「いや小指かよ。」



「え?」



「…菜子、この際全部試そう。」



「全部?」



「全指。」



「ぜんゆび?」



「左右全指。」



「えぇ…全部…?」



「すみませーん。」



絢香は店員へ声をかける。



「はーい。」



店員が高い声で柔らかく返事をした。



「リングなんですけど、左右全部の指、試着させてください。」



「ぜ、全部ですか…?」



「全部です。」



「は、はぁ…」



店員は試着用のリングを用意した。

絢香は次々と菜子の指にリングをはめていく。

そして、ついに左手薬指にリングをはめた。



「…」



菜子は少し頬を赤らめながら、じっと薬指を見る。



「…ふふ、そちらにはめるご予定があるんですか?」



「へっ?い、いや、あのっ…」



菜子は店員の問いかけに、顔を真っ赤にしながら慌てふためく。



––余計なことを…



絢香は少し焦った。

店員の話を遮るように、菜子に問いかける。



「サイズどう?ゆるい?」



「あ、ううん、ぴったり!」



「そっか。じゃあ、次小指ね。」



「あ、はいっ。」



そして、全ての指の試着が終了した。

店員は持ち場に戻って行った。



「なんか欲しいリング、あった?」



絢香が菜子に聞く。



「う、うーん…やっぱ今回はいいかな…」



「そっか。じゃあ出よっか。」



「うん。」



菜子は絢香の後ろを付いて歩く。

そして、ふと思い出した。



「あれ?アヤ、ピアス良かったの?」



「ん?」



「ピアス欲しいって言ってたじゃん。リングもキテるって…」



「…あー、気が変わっちゃいましたのです。」



絢香は不思議な日本語かつ棒読み気味で言う。



「そうなの?」



「うん、なんか菜子の試着で満足しちゃった。」



「ふふ、なにそれ。…あ、私あの店寄っていい?」



「おっけー。行こ行こ。」



今度は絢香が菜子の後ろを付いて歩く。

そして、小さく「ミッション達成」と呟いた。


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