第45話



翌朝。

菜子が先に目を覚ました。

目の前には蓮弥の寝顔がある。



「…ふふ、可愛い。」



菜子は蓮弥の頬を指でツンとつつく。



「…ん…」



蓮弥がもぞもぞと動き出し、半分目を開ける。



「…ん、菜子…」



「ごめんなさい、起こしちゃった。」



「んーん。…寒いから、もっとこっちおいで。」



蓮弥は菜子を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。



「…菜子あったかい。温泉みたい。」



「ふふ、なんですかそれ。」



すると蓮弥はまたすぐに眠ってしまった。

菜子も布団の中の温かさにうとうとし始め、気付けば眠りに落ちた。



2人は2時間後に目を覚まし、シャワーを浴びた後のんびりしていた。

今日は年末年始休暇の初日である。



「蓮君、昨日酔ってましたね。」



「え?そう?」



「うん。いつもより甘えん坊のワガママさんでした。」



「…あー…すみません、忘れてください。」



蓮弥は膝に顔を埋める。

首まで真っ赤になっている。



「えぇ、あんな可愛い蓮君、忘れられませんねぇ。」



菜子は楽しそうに蓮弥に寄りかかる。



「どのくらい飲んだんですか?」



「…ここ最近で1番飲んだ。もしかしたら、今までで1番かも。」



「えっ!そんなに飲んだんですか!」



「…だって、菜子の隣に行きたいのに全然空かないし、男どもが狙ってるし…」



「…えと…私のこと、ずっと気にしてたの…?」



「…須貝に見過ぎって言われた。」



「…ふふっ。見過ぎかぁ。そっかぁ。」



菜子はぐいぐいと蓮弥に身体を寄せる。



「…楽しんでますね、菜子さん。」



「楽しんでないですよーっ。」



––♪



「あ、ごめん。電話だ。」



「はいっ。」



蓮弥は立ち上がって、スマホを手に取る。



「…病院?」



病院からの電話だった。

蓮弥は不思議に思いながら、電話に出る。

菜子は少し心配そうに蓮弥を見つめた。



「…はい、有賀です。…あ、先生。こんにちは。…あ、はい。…えっと…そう…ですけど……はい。…はい。」



相手は蓮弥の担当医である矢上のようだ。

蓮弥は相槌を打ちながら、話を聞いている。

蓮弥は少し戸惑っているように見える。





「………え…?」





蓮弥は硬直した。

一気に、大量の汗が噴き出る。



「…蓮…君…?」



菜子は立ち上がり、蓮弥の近くに寄り添う。



「………す…すぐ、行きます…」



蓮弥は電話を切った。

呼吸が荒い。スマホを強く握り、胸に押しつけている。



「れ、蓮君…どうしたの?」



菜子は蓮弥の背中をさすりながら問う。

蓮弥は戸惑いつつも今にも泣きそうな顔で答えた。






「……か…母さんが…危篤…状態だって…」




「…え…?」



菜子は驚愕した。


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