第37話



3ヶ月後。



「先生、ありがとうございました!」



「はい、お大事にね。」



菜子が病院の診察室から出てきた。

そして待合室にいる蓮弥のもとへ向かう。



「お待たせしました!」



「どう?」



「この通り!」



菜子はギプスが外れた右腕を元気よく動かす。



「良かった…」



蓮弥は嬉しそうに微笑む。



そして病院を後にし、蓮弥の家へ戻ってきた。



「本当にお世話になりました。何から何まで…ありがとうございました。」



「…それは全然良いんだけどさ。」



「?」



「…帰っちゃうの?」



「…えっと…?」



「…もうさ、ここに住めばいいじゃん。」



「えっ!?」



「手狭なら、もう少し広い部屋借りるよ。…俺、もう菜子と一緒じゃないとダメかも。」



「ッ!」



蓮弥は菜子をぎゅっと抱きしめた。



「菜子の腕が治ったら、甘えていいんだよね?これがそう。離れたくない。俺のわがまま、聞いてくれる…?」



「…嬉しいです。私も一緒にいたい!」



菜子は蓮弥を笑顔で抱きしめ返す。



「……」



蓮弥は菜子を抱きしめたまま、額を彼女の頭にぐりぐりと擦りつける。



「れ、蓮君…?」



菜子は上を向こうとするが、蓮弥に阻止された。



「…今見ないで。ニヤけてだらしない顔してる。」



「えっ!み、見たい!」



「嫌だ。」



「見せてよ!」



「絶対嫌だ。…よし、戻った。」



「えぇ…」



「…あ、ごめん、腕大丈夫だった?痛くない?」



蓮弥は菜子を解放した。



「全然痛くないです!完全復活ですね!」



菜子は右腕を左手でトントン叩きながら言う。



「良かった。」



「じゃあ私、早速自分の部屋の荷物を整理しますね!」



「…あー、ごめん。今日は帰せない。」



「え?…わっ!」



蓮弥は菜子をベッドへ押し倒した。

蓮弥はぐっと顔を菜子に近付ける。



「…ずっと我慢してたから…。俺頑張った。褒めて。」



「えっ…と…えっと…」



菜子は一気に熱を帯び、鼓動が速くなる。

しかし恥ずかしさを押し殺して、蓮弥の頭を撫でた。



「……」



菜子の熱が手から伝わり、蓮弥も伝染して顔を赤らめる。



「…今日優しくなかったら、ごめんなさい。」



「…!」



蓮弥は菜子に優しくキスを落とした後、もう一度キスをする。しかしそれだけでは足りず、もう一度吸うように触れ、甘い音を鳴らす。音が徐々に大きくなり、ついに舌が菜子の口内に侵入する。ゆっくり舌を絡め、時折菜子の息が漏れる。

菜子はのぼせそうになり、意識を全て持っていかれそうになる。



「…ッ。ハァ…菜子…」



蓮弥は菜子の名前を呼びながら貪るようにキスをする。

菜子は返事をする余裕もなく、目を潤ませながら身を委ねる。



「…好きだよ。菜子。大好き。」



「…!わ…私も…大好き…!」



気持ちの良い身の震えが2人の身体中を駆け巡り、全身をドクドクと脈打たせている。お互いの言葉に心も身体も喜んでいることを実感せざるを得ない。



蓮弥は菜子の「待って」に応える余裕もなく、愛情をぶつけ続けた。

気付けば2人は朝までぐっすり眠っていた。


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