第23話
季節は夏。
菜子達の会社では、夏季休暇に入った。
「い、いらっしゃいませ…」
菜子は照れながら蓮弥を出迎える。
今日は、昨日までの仕事の疲れもあったため、菜子の家でのんびりすることになったのである。
「お邪魔します。これ、飲み物とお菓子。」
「わ!ありがとうございます!」
「…かわいい部屋だね。」
「いやぁ、そんな…汚かったらすみません…あ、どうぞ座ってください!」
菜子は、蓮弥と同じでワンルームで一人暮らしである。
ベージュやホワイトカラーの家具が多い。
「全然。俺んち汚いでしょ。」
蓮弥はカーペットの上に敷かれた長座布団の上に座りながら言う。
「いえ!とっても綺麗ですよ!普段からお掃除されてるんだなって思いました。」
「そう?なら良かったけど。」
蓮弥は普段と変わらない表情で、いつも通り淡々と話しているが、身体はそわそわと落ち着きがない。
「…蓮君、緊張してます…?」
「えっ。」
「…へへ、緊張してる。」
「……」
蓮弥は顔を赤くし、黙り込んだ。
緊張してるのは自分だけではないと、菜子は安心する。
「私、映画のサブスク会員なんで、なんでも見放題ですよ!蓮君、普段どんなの見ますか?」
菜子はグラスを用意しながら蓮弥に尋ねる。
「んー…映画自体あんまり見ないけど、アクション系が多いかな。菜子は?」
「私は専ら恋愛映画ですねぇ。最近は見ないですけど…」
「そうなの?なんで?」
「んー、なんででしょう?」
「…俺で満足、とかだったら嬉しいけど。」
「!…か、かもしれません…」
菜子は一気に赤くなる。
「…自惚れ発言だった。」
蓮弥もポッと赤くなり、目を逸らして首を掻く。
「……」
菜子は蓮弥の隣にちょこんと座った。
そして、何も言わずに蓮弥の身体に寄りかかる。
蓮弥は少し驚きながら菜子を見る。
「ほんとですよ。蓮君だって、私のこと好きなくせに。」
「なっ…」
「…自惚れ発言です。おあいこですね。」
「……」
「わっ!」
蓮弥は菜子を持ち上げ、自分の上に跨がらせて膝立ちさせた。菜子はよろけて、咄嗟に両手を蓮弥の肩に乗せる。
「うん、好きだよ。」
蓮弥は両手で菜子の頬を包みながら言う。
菜子は一気に蒸発しそうになる。
蓮弥はそのまま菜子の襟足付近に手をまわし、こちらに引き寄せて唇を重ねる。
唇から菜子の熱さが伝わり、想いの大きさを実感して、胸が熱くなる。
もっと想いを感じたくて、一度離してもう一度触れる。先程よりも深く、強く。
菜子はぎゅっと目を瞑り、さらに熱くなる。
「…ふ…ぅ…」
菜子は息を止めていたので、限界を迎えて小さく呼吸する。
蓮弥は菜子を解放しないまま見つめ、
小さく開けた口に再び触れ、舌を絡ませた。
「…!」
菜子は視界がチカチカと輝き、ふわふわと浮いた感覚に陥る。
「…菜子、熱っ…」
蓮弥の息が甘く荒れる。
「だ、だって…」
菜子も呼吸が小さく荒れている。
「…ごめん、我慢できない。」
蓮弥は菜子をベッドの上に乗せ、そのまま押し倒した。
「れ、蓮君っ、お昼だけ、ど…」
「…俺の耳が聞こえる間がいい。菜子の声、聞きたい。」
「…!」
「…だめ?」
「…だめ、じゃ、ない…」
その言葉を聞いた蓮弥は、菜子に再び深くキスをする。
そして、何度も「好き」を囁いた。
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