第22話



翌日。



「うっっそ!ほんとに!?おめでとう!!」



菜子の、蓮弥と付き合うことになったという報告に、安藤は大喜びする。



「そ、その、とりあえず内密にお願いします…」



「わかってるよ!いやぁでも、あの有賀君がねぇ…すごいよ榛原さん!」



「い、いやぁ…」



「でもさ、有賀君、よく笑うようになったよ。現場の人たちも、最近よく話しかけるようになったみたいだし。全部榛原さんのおかげだね。」



「そ、そうだったら嬉しいですけど…きっと有賀さんの勇気と努力のおかげですよ。」



「…ふふ、いいカップルだ。」



「へ!?」



「引き続き、応援してるよ!」



安藤は菜子の頭を撫でた。



「あ、ありがとうございますっ!」



菜子は嬉しそうに感謝した。





そして、工場長に書類を渡しに現場へ来た菜子は、帰りがけに蓮弥の姿を探す。



––ドンッ。



「わぷっ。す、すみません!」



前を見ていなかったため、誰かとぶつかった。

菜子は慌てて謝り人物を見ると、蓮弥であった。荷物を抱えている。



「…わざと。」



蓮弥は耳を赤くしながら、ベッと少し舌を出すと、すぐに行ってしまった。蓮弥はよそ見をしている菜子を見つけ、ぶつかるように通路で立ち止まっていたようだ。



「…か、かわいい……」



菜子はぎゅっと心を掴まれた。






そして、金曜日。

菜子は絢香達に蓮弥のことを報告した。



「まじで!?おめでとう菜子〜!」



絢香は菜子に抱きつく。



「あの時の、嫉妬作戦が効いたみたいだな。」



洸がビールを飲みながら言う。



「そんなことしてたっけ?」



菜子は首を傾げる。

カラオケで遭遇した時の洸のスキンシップのことであるが、菜子は全く気付いていない。



「してたわ!気付けよ!」



「ついになっちゃんに彼氏かぁ…実感湧かないなぁ。」



「確かに!このまま独り身で、みんなで面倒みるのかと思ってた!」



「めちゃくちゃ言うじゃん!ひどっ!」



菜子は絢香に頬を膨らませながら言う。



「そう言うお前が一生独り身かもしれねぇよ?」



洸が絢香を挑発する。



「うっさい。私、今彼氏いるから。」



「…え!?」



3人が驚く。



「アヤ、聞いてないんだけど!」



「言うタイミング逃してそのままだった、ごめん。」



「いつからなの?」



「…半年前。」



「おい…随分前じゃんか。」



「だからごめんって!」



絢香は顔を赤くしながら言う。



「…アヤぁ、おめでとう!!」



「あ、ありがと…」



「今日は祝い酒じゃねぇか。みんなで日本酒飲もうぜ。」



「乾杯だぁ!」



洸と駿太は酒を追加注文した。





そしてお開きになり、駿太と洸は絢香と菜子を家まで送り届けた後、2人で夜道を歩いている。



「いやぁ、まさか2人とも彼氏ができるなんてねぇ。」



「…そうだな。」



「…あれ、洸、元気ない?」



「いや?てか、お前は大丈夫かよ。」



「え?」



「菜子のこと、好きだろ?」



「うん、好きだよ?」



「…あー、違う、ライクの方じゃねぇ。恋愛感情持ってただろ?」



「…え!?違うよ!全然そんなふうに思ったことない!」



「そうか?菜子、そのままあの人と結婚とかもあり得るぞ?…そしたら、今みたいに集まることもなくなんのかねぇ。」



「結婚…」



駿太はしばらく黙り込む。

すると、ぶわっと涙が溢れてきた。



「…?あ、あれ…?」



駿太は戸惑い、そして気付く。



「そ…そっか…俺、ずっとなっちゃんが好きだったのかぁ。」



駿太はニコニコと言う。



「…俺も絢香も気付いてたけどな。」



「そ、そうなの!?…えぇ、俺、自分のことなのに気付いてなかったのかぁ。」



「…余計なこと言ったな、ごめん。」



「ううん!スッキリしたし、いつかなっちゃんに変なこと口走ってたかもしれないし…ありがとう。」



「…実は俺、絢香のこと好きだった。」



「え!?」



「…なぁ駿太、もう一軒行くか?」



「…うん!行く!失恋酒だぁ!」



「元気よく言うなよ。」



洸は笑った。

そして、2人は朝まで飲み明かした。

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