第21話
その後、2人は菜子のアパートの前にいる。
「8時までに帰れそうですか?」
「うん、余裕で着くと思う。」
「良かったです!じゃあ…おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
菜子は蓮弥に背を向ける。
「…菜子。」
菜子は肩をビクッと動かし、振り返る。
「…明日も会いたい。」
「!」
菜子は、ふわっと宙に浮きそうな感覚になった。
「…いい?」
「も、もちろんです!私も、そう思ってました…」
菜子は顔を真っ赤にして言う。
「…良かった。じゃあ、また明日。」
蓮弥は微笑む。
「うんっ、また明日っ!」
菜子は嬉しそうに、小さく手を振ってアパートの中へ入っていった。
「……かわいい…」
蓮弥は口元を手で覆いながら、早足で帰って行った。
数時間後、菜子が寝る支度を終えて布団に入ると、スマホが鳴った。
––もう寝た?
蓮弥からだ。
菜子は嬉しそうにメッセージを打つ。
––ちょうど布団に入ったとこです!
––そっか。明日も13時でいい?
––はい!どこ行きましょうか?
––次は、デートで行くところに行きたい。
「!」
菜子は顔が熱くなる。
––遊園地とか水族館とか動物園とか行ってみたい。
––じゃあ、近くの動物園行きましょうか!
––うん。楽しみ。
そんなやりとりをした菜子は嬉しそうに枕を抱いてベッドの上でコロコロと転がり、蓮弥は枕に顔を埋めていた。
そして、翌日。
「わあ!かっこいい!」
菜子はライオンの檻の前で興奮している。
「すごい近くで見られるね。こわくないの?」
「こわくないです!かっこよさが勝ちます!」
「ふふ、少年だね。」
「違いますよっ!ささ、次行きましょ!」
菜子は蓮弥に手招きする。
「菜子、待って。」
蓮弥は手を差し出した。
「は、はいっ。」
菜子はポッと顔を赤くしながら、控えめにその手を握る。
すると蓮弥は、指を絡めて握り直した。
「彼女だから、いいよね。」
蓮弥はそう言いながら、歩き始めた。
菜子は何も言えず、さらに顔を赤らめておとなしく蓮弥について行く。
そして、ふれあいコーナーにやってきた。
うさぎに餌やりをしながら、ふれあえる場所らしい。
2人は早速柵の中に入り、うさぎに餌をやる。
うさぎは警戒しながらも、菜子の手から餌を食べる。
「かわいいいい!」
菜子はうさぎを撫でた。
「わ、わ、」
菜子は声のする方へ目を向けると、
蓮弥の周りにたくさんのうさぎが群がっている。
蓮弥は予想外の多さにあたふたと戸惑っている。
「ぷっ、あはは!有賀さん、人気者ですね!かわいいっ。」
「俺まだ餌やってないのに…」
「有賀さんのかっこよさに惹きつけられたんですかね。そしたらこの子達、雌なのかなぁ?」
「かっ…?」
蓮弥はボッと赤くなる。
菜子もその様子を見て自分の発言を振り返り、赤くなる。そして、何事もなかったかのように、うさぎに話しかけながら撫で始めた。蓮弥も餌を次々に与えていた。
それから2人は外に設置してあるテーブル席に座って休憩する。
「楽しかったですね!」
「うん。動物園なんて小学生の遠足ぶりだった。」
「そうなんですか!じゃあ、また別の動物園行きましょうね!」
「うん。」
「…あの、有賀さん。」
「ん?」
「その、私も、お名前でお呼びした方がいいんでしょうか…」
菜子はもじもじしながら聞く。
「…すごい嬉しいけど、蓮弥以外がいいな。自分の名前、あんまり好きじゃないんだ。」
「そ、そうなんですね…。じゃあ…蓮君?」
「うん、嬉しい。」
蓮弥はニコッと笑う。
「…蓮君…」
菜子はくすぐったくも、嬉しさを感じていた。
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