第18話
翌朝。
菜子が目を覚ますと、蓮弥の姿がなかった。
目を擦りながら、辺りをキョロキョロ見回していると、風呂場から蓮弥が出てきた。
「…あ、おはよう。」
「あ…おはようございます…」
「…ふふ、寝癖すご。」
蓮弥は笑う。
菜子は顔を真っ赤にしながら、バッと布団で頭を隠した。
「嘘だよ。」
「なっ…!」
「服、乾いてるっぽいけど、どうする?それ着てってもいいけど…」
「あ、自分の着て帰ります!これは洗濯して返しますので!」
「いいよ、置いといて。元はと言えば、俺のわがままで来てもらったんだし。」
「でも…」
「その代わり、また来週も遊んで。」
「!はいっ、もちろんです!」
そして、2人は菜子の家へ向かう。
いつもと同じ、何気ない会話をするが、
2人とも、昨晩のことは口に出さない。
そして、菜子のアパートの前に到着した。
「ありがとうございました。では、また土曜日!楽しみにしてますね。」
「うん。また。」
菜子は蓮弥に背を向け、アパートの中に入っていった。
蓮弥は菜子が見えなくなるまで、後ろ姿を見つめていた。
「……意気地が無いな、俺は。」
蓮弥は小さく小さく呟いた。
一方菜子は、家に着くとベッドに倒れ込む。
「………」
色々なことが1日で起こり、感情が複雑に絡み合っている。
––私は…どうすればいいんだろう…
何が正解なのかな…
菜子は、答えの出ない悩みをしばらく噛み締める。
––でも、私は…有賀さんのそばにいたい…
菜子は切ない表情で、布団を強く握りしめた。
翌日。
「榛原さん!有賀君、見た!?」
安藤が仕事の昼休憩に、外出しようとした菜子を引きとめる。
「えっ。見てないですけど…」
「どういう心境の変化かしら…ちょっと来て!」
「え、ちょ、え!?」
安藤は菜子を引っ張って現場に向かう。
すると途中で蓮弥に出くわした。
「…!!」
菜子は目を見張る。
蓮弥は髪を切り、もっさりヘアーではなくなっていた。
爽やかで、目がしっかり見えている。
「あ…お疲れ様です。」
蓮弥はぺこっと会釈した。
「お疲れ様ですー。」
「お、お疲れ様です…」
安藤と菜子も挨拶を返す。
「有賀君、さっぱりしたね!ずっと髪型変えてなかったのに、どうしたの?」
安藤が聞く。
「いや…髪切った方が良いって言われたので…」
蓮弥は一瞬菜子を見た後、すぐに目を逸らした。
菜子もドキッとして、思わず目を逸らす。
「そうなんだ。そっちのが全然いいよ!ね、榛原さん?」
「は、はいっ…」
菜子は顔を真っ赤にして答える。
「…どうも…」
蓮弥は再びぺこっと会釈する。
心なしか、耳が赤い。
「…?あれ……」
安藤は違和感に気付く。
「ほ、ほら!お昼の時間なくなっちゃいます!行きましょ!失礼します!」
菜子は安藤を引っ張っていった。
「…榛原さん、もしかして有賀君と…」
蓮弥から離れた後、安藤がコソッと言う。
「なんにもないですよ!ちょっとだけお話できるようになっただけですっ!」
「ほぉー…へぇー…」
安藤はニヤニヤとしている。
「…あの飲み会から、落ち込んだままだと思ってたけど、ちょっとは進展あったみたいね!」
「はい…す、すみません…ご心配をおかけしたまま、あの後何にもお話しなくて…」
「いいのよ!良かったぁ、私も救われたよ!」
安藤は菜子の背中をバンバン叩く。
「いててっ。…ほ、ほんとに、ありがとうございます…」
「でも…有賀君、イケメンバレちゃったから、早くしないと狙われちゃうかもよ?」
「う…」
「嬉しい報告、待ってるよ♪」
安藤は嬉しそうに菜子に言った。
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