第13話
それから様々な場所へ行き、次々とリストにレ点が入っていった。
蓮弥はいつのまにか土曜日が楽しみになっていた。
そして、菜子に心を開き始めていた。
菜子は必ず約束の17時に帰る。もう少しだけ、とは一度も言わなかった。夜に会えない理由も聞いてこない。恋愛に繋がるような発言も、一切しない。それが蓮弥にとって心地良かった。
はずだった。
しかし、それと同時に、胸に刺さった見えない異物が、次第に大きくなっていく。
「ちょっとトイレ行ってくる。」
「はい!いってらっしゃい!」
蓮弥は菜子から離れた。
今日はゲームセンターに来ている。
蓮弥が戻ってくると、菜子は男2人組に絡まれていた。
「ねぇ、一緒に遊ぼうよ。」
「君、小動物みたいでめっちゃ可愛いね。名前、なんて言うの?」
「えと…」
菜子は困り果てていた。
「何。なんか用?」
蓮弥は菜子と男達の間に割って入る。
「…チッ。彼氏持ちかよ。」
男達は舌打ちして去っていった。
「…す、すみません。ありがとうございます。」
「榛原さんは悪くないよ。ここ、治安悪いのかな。1人にしてごめん。」
「い、いえ!…あはは、困りますよね。男女でいるだけで、すぐそういう関係って勘違いするんだから…あ、今度この前会った私の友達も連れてきましょうか!?そしたら安心かも」
「俺は榛原さんだけがいい。勝手に思わせておけばいいよ。関わりない他人なんだし。」
蓮弥は菜子の言葉を遮って言う。少し苛立っているように見える。
「…!…そ、そうです、ね…」
菜子は顔を真っ赤にする。
「……いつか榛原さんは、誰かのものになるのかな。」
蓮弥はボソッと呟く。
「?何か言いました?」
「…いや、そろそろ出ようか。」
「はいっ。」
外へ出ると、雨が降っている。
「雨!?今日そんな予報ありましたっけ…」
「結構降ってるね。…榛原さん、傘ある?」
「大丈夫です!その辺のコンビニで買って帰ります!」
菜子はキョロキョロと辺りを見回すが、コンビニが見当たらない。
「……俺んち近いけど、雨宿りしてく?」
「え゛っ!?だだだ大丈夫です!もう5時ですし!」
「いいよ。」
「え…?」
蓮弥は真っ直ぐ前を見ながらしばらく黙り込んだ後、菜子の方を向いて口を開いた。
「……俺、榛原さんに聞いてほしい。誰にも言ったことない、俺が秘密にしてること。」
蓮弥はポケットの中に手を入れているが、その手は震えている。
「……秘密…?」
「うん。だから、俺の家に来てほしい。」
「……はいっ、おじゃまします!」
「…ありがとう。」
蓮弥は着ていた上着を、菜子に被せる。
「わっ…!」
「榛原さん、走れる?」
「は、はい…!」
「ごめん、ちょっとだけ我慢して。」
「ぜ、全然大丈夫です!」
2人は走って蓮弥の家に向かった。
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