第12話
それから菜子と蓮弥は、毎週土曜日に
友達とやってみたいことリストを
上から順に実施していった。
時間は13〜17時。蓮弥の希望であり、夜は無理だときっぱり言われている。
1番最初は、ボウリング。
「私も上手くはないんですけど…」
そう言いながら、菜子は動画を見せつつ一生懸命蓮弥にレクチャーする。
一投目。
菜子8本。蓮弥ガター。
二投目。
菜子7本。蓮弥3本。
三投目。
菜子8本。
蓮弥ストライク。
「あ。」
「え!?うそ!?やったー!すごいです!!」
菜子はレーン前から戻ってきた蓮弥に拍手を送る。
そして、手のひらを彼に向けた。
「こういう時は、ハイタッチするんですよ!」
「そっか。ん。」
「いぇーい!!」
2人はハイタッチした。
蓮弥は、表情からは読み取りにくいが、心底喜んでいる。
そして七投目。
菜子ストライク。
「やったー!!やっとだ!!」
菜子はぴょんぴょん跳ねて喜びながら戻ってくる。
「やったね。」
蓮弥が微笑みながら、手のひらを向けて待っている。
「!」
菜子は嬉しそうに走って蓮弥のもとへ行き、元気よくハイタッチした。
翌週は、カラオケ。
「私、歌上手じゃなくて…」
そう言いながらノリノリで歌う菜子の歌声は、確かに上手ではなかった。
「次、有賀さんの番ですよ!」
「…俺は…やっぱいいや。」
「え、ダメです!有賀さんがやってみたいって言ったんですよ!」
「………」
蓮弥は渋々マイクを受け取り、最近流行りの曲を歌った。
––♪〜
「え、嘘…」
菜子は油断していた。
高校生の時に歌声を聞いていたので、それほど上手ではないと信じ込んでいた。
しかし、蓮弥は乱れのない綺麗な歌声を披露する。
いつのまにか、菜子は歌声にしっとり酔いしれ、頬を赤く染めていた。
「…はい、次、榛原さん。」
蓮弥は菜子にマイクを渡そうとするが、
菜子はぷくっと膨れていた。
「…聞いてないです。」
「ん?」
「悲しいです。なんでそんなに上手なんですか。」
「え、あ、ありがとう…」
蓮弥は目を逸らし、照れ臭そうに首を掻いた。
そして、3時間コースが終了し、2人は外へ出る。
「楽しかったですね!」
「うん、すごく。」
「ふふ、良かったです!」
「…あれ、なっちゃん?」
菜子が声のした方へ目を向けると、そこには駿太と洸がいた。
「あれ、駿ちゃん!洸!…有賀さん、ちょっと待っててください!」
「…ん、わかった。」
菜子は2人のもとへ駆け寄る。
「…?」
蓮弥は一瞬、チクリと胸が痛くなった。
「何やってんの。てか、あの人は?」
洸が聞く。
菜子はコソッと、例の好きな人であると教えた。
「…わぁ!そうなんだ!頑張れなっちゃん!」
「やるじゃんか。邪魔したな。」
「いや、あのね、お友達なの!私、そういう気持ちはもう封印したから!」
「え…」
「今すっごく楽しいから、いいの!じゃあ、もう行くね!」
「……」
洸は背を向けた菜子の腕を引っ張り、もう一度こちらを振り向かせた。
「!?こ、洸?」
「…頑張れよ。」
洸はニッと笑って、菜子の頭をくしゃっと撫でた。
「わぷっ。ちょっと!」
菜子は慌てて洸の手を掴む。
蓮弥はその様子を見て、再びチクリと胸に異物が刺さる。
そして、菜子が髪を整えながら戻ってきた。
「すみません、お待たせしました!行きましょ!」
「…うん。」
蓮弥は胸の異物が何なのか、考えながら歩いていた。
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