第10話



連絡先を交換したものの、連絡をすることも来ることもなく、2週間が経過した。

相変わらず、菜子と蓮弥は仕事で関わることはない。

菜子は現場に何度か行く機会があるが、作業中の蓮弥をチラリと見る程度で終わってしまう。



「友達とは…?」



菜子は自宅でスマホを握りしめながら、一人呟く。



「…私から連絡していいのかな…明日休みだし、迷惑じゃない、よね…?…てか、私が頼れる友達になるって言ったんじゃん!私から連絡しなくてどうする!よし、大丈夫!頑張れ菜子!」



菜子はスマホでメッセージを送った。



––こんばんは。お元気ですか?



「…え、私、バカ?なにこのメッセージ…田舎の母…?」



––♪



「!」



––こんばんは。元気ですよ。



蓮弥からすぐに返信が来た。



「あ゛っ…有賀さんから返事…それだけで死にそうなのに…可愛い…」



菜子は布団を一発殴った。

そして、再びメッセージを送り、やりとりをする。



––良かったです!今、何してますか?



––スマホで漫画読んでた。



––漫画好きなんですね!私も結構読みます!



––そうなんだ。どんなの読むの?



––恋愛ものが多いですけど…最近は『桜の息吹』とか読んでます。



––あ、俺も読んでるよ。面白いよね。



––はい!兼季くんが好きです!



––えー、俺は篤紀かなぁ。



––じゃあ私も篤紀くんで!



––なんだそれ笑



真っ白だった背景に、次々と吹き出しが増えていく。菜子はそれを実感し、くすぐったい気持ちになる。



––連絡、ご迷惑じゃなかったですか?



菜子は恐る恐る聞いてみる。



––♪



「…!」



––来るの待ってた。



「ま、ままままって…」



菜子は手が震えた。そして胸を押さえる。

くすぐったいを通り越して、ぎゅううと締め付けられるような気持ちになる。



––嬉しいです…!有賀さんと、もっとお話したいです!



菜子は蒸発しそうになりながら返信する。



––榛原さんがつまらなくなければ、喜んで。



「…!!!!!…えっと、これって…メッセージで?それとも…直接…会っていいのかな…」



––私は楽しいです!



––良かった。

 いつにする?土日は昼だけ空いてる。



「!!!」



––直接お会いできるんですか!



––あれ、違った?



––違くないです!明日お昼、ランチいかがですか?



––うん、行こっか。



「わ…うそ…ランチ…明日!?」



菜子は自分が提案した内容に慌てふためいた。

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