第2話
「菜子ー、起きろー。」
「んぁ…!?」
菜子は絢香の声でハッと目が覚める。
今日は高校からの友人である絢香、駿太、洸と居酒屋に来ていたが、いつのまにかテーブルに突っ伏して寝ていたようだ。
「なっちゃん、すげぇ幸せそうに寝てたよ。」
駿太が笑いながら言う。
彼は
彼と菜子は中学も一緒である。
眼鏡をかけており、笑顔が可愛い。
茶色い髪は地毛である。
「やらしい夢でも見てたのか?」
「ち、違うよ!何言ってんの!」
菜子をからかう彼は
サラサラの黒髪で前髪は長く左右に分けている。
右目に泣きぼくろがあり、顔が良いのでモテる。
「菜子、アンタ明後日から新しい職場でしょ?緊張感なさすぎ。今日珍しく菜子が集合かけたから、よっぽど緊張してんだなって思ってたのに。」
「えへへ…面目ない。」
彼女は
明るい茶色の長い髪で、最近毛先を巻きだした。
サッパリした性格で、姉御肌である。
絢香と洸は中学からの仲で、美男美女で有名だった。
そして菜子は、
現在25歳だが、未だに年齢確認をされるくらいの童顔。そして小柄。その割に手の指が少し長めなのがコンプレックス。
最近、少しでも大人に見えるよう髪を茶色に染めた。髪の長さは肩の少し上ほどで、内巻きボブ。
菜子は新卒で入社した会社に事務員として1年と半年勤めたが、隠れロリコン上司にセクハラを受けていた。さらに、その上司がイケメンで人気者であったため、その妬みからもれなく女子社員からのイジメがついてきた。ついに菜子は精神を病み退職した。
菜子はポジティブな人見知りである。
セクハラやイジメを受けていた時も、身体に異常が出るまで、ずっと前向き思考で自分の中で解決や消化をしてきた。
「大丈夫、他の会社はもっとやばい。」
「大丈夫、無関心でいられるより全然いい。」
「大丈夫、地道に成績上げて、ぎゃふんといわせてやればいい!」
そう言い聞かせてきた。
しかし、人見知りなため、自分の意見はなかなか口に出せない。そのため、菜子は気付かぬうちに、じわじわと心の傷が深くなっていった。
しばらく仕事ができない状態にも思えたが、前向き思考が背中を押し、周囲の支援もあって小さな工場の事務員として採用が決まり、2日後に初出勤の予定である。
「みんな、今日はほんとありがと。新しいとこでも頑張れそう!」
帰り際、菜子は皆に伝えた。
「いや、終盤寝てただろ。よく言うわ。」
洸が呆れながらも笑っている。
「なっちゃんらしくて安心じゃん。また嫌なことあったら言いなよ?」
駿太が菜子の頭を撫でた。
「へへ、ありがと!」
菜子はニコニコと笑った。
彼女は、心を開いた仲間達の前では、ひたすらにマイペースである。
「ねぇ菜子、本当に大丈夫?本当に無理しないでよ。まだまだやり直しできる年齢だし、焦る必要ないからね。」
絢香は菜子の手を握った。
「うん!大丈夫だよ、困ったらアヤにすぐに言うから!」
「じゃあいいけど…空回りしない程度に、ゆるく頑張りなね。」
「うん、ありがと!」
そして、解散して各々帰路につく。
––懐かしい夢だったなぁ。
菜子は、先程の夢を思い出しながら歩いていた。
彼に会った後、何度も夜中に桜並木の道を歩いたが、結局彼とは一度も会えなかった。
––あの人、今何してるのかな…。
菜子は1人想いを馳せていた。
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