人間そう簡単には変われない

「あなた変わらないね」

久しぶりに昔の恋人に会った。

何年も前に振られた相手だ。

憎しみあって別れたと言うよりか、

相手が自分のことを

「あ、もういいや。我慢できない」

と見限った形で終わった。


見限った方は楽になったのかもしれないが、

見限られた方はかなりのダメージであった。

まず初めに虚無に陥った。

当たり前だ。今まで普通にあった恋人との時間が突然姿を消したのだから。

思考停止、軽い鬱状態。

そして、生きている価値とかを自分に問いただしてみたり、何がいけなかったのか反省したりする。

でも、結局のところ、

「自分という存在を受け入れ切れなかった相手が悪い」

と思うことにした。

悪いと言うか、合わなかっただけ。

うん、そう、『はまらなかった』

それだけ。


それで、沈没船のように海の底に沈んだ気分でいた自分がようやく海面に顔を出せたときに、新しい恋人に出会った。

それから、自分を振った元恋人よりもうんと長い時間を共に過ごしている。


多分、自分は何も変わってはいない。

ありのままの自分を理解し受け入れてくれる人に出会っただけ。

ありのままの自分でもいいと自分で自分を認め、そして自分も相手を理解し受け入れているだけ。


「うん、相変わらずだよ。

でも幸せに暮らしているよ。」

ムッとはしたが、それをひた隠し、事実を伝えた。

今、私は昔よりうんと、うんと幸せだから。

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