第11話 委員長と委員会
怨霊がいるように、怨霊を対策する組織も存在する。その名も”幽霊対策委員会”通称”委員会”、政府容認のこの委員会には現在約500人が所属していて、多少の道路交通法違反は理由があれば許してくれる。そしてその頂点つまり委員長と呼ばれる存在が今俺と真理を説教をしている人間上小路梨沙である。俺や多分真理もこの委員長に誘われて委員会に入っている。委員長の能力、”オーダー”委員長ぽいことを言うと委員長の声が聞こえる範囲内においてその言った通りに事象が起きる。この能力で俺たちの体と壊れた校舎を直したのだ。まぁチートだよね、だから俺達委員会の人間達はこの人に頭が上がらないのだ。
「気をつけい!」
「「はい!」」
「お前達、何があったか説明してくれ」
つけている丸メガネを人差し指でくいっと上げる。そして俺は委員長の命令のままに今までに起きたことを説明した。
「なるほどねぇ、真理!あなた何やってんの!馬鹿なの!?」
「ごめんなさい!」
すげー、真理が震え上がっていやがる。これが委員長か。
「はぁまぁいいか今はこれくらいで、来週集会開くからいつもの場所集合ね、これからのことについて話すから、あと真理、あなたは死ぬほど反省しなさい、次会った時反省の色が見えなかったらぶっ飛ばすから、けどまぁとりあえずはお疲れ様2人とも」
委員長は口角を少しあげてふっと笑ってから去っていった。
「「はい!」」
俺達2人は彼女を完全に見送るまでずっと足のかかとを揃えていた。
そして委員長の姿が見えなくなったあと、張り詰めていた肩を落とし俺から口を開いた。
「つーか、お前も委員会に入ってたんだな」
「ふっ、我ほどの逸材を逃せるはずがないだろう?」
「そうだなー、まぁお前委員長にビビってたけどな笑」
「ちがっ!?あれはびびってたんじゃないぞ!」
真理は顔を赤らめて頬を膨らませる。ふっ、可愛い所もあるじゃないか。
「おーい、話し合いは終わったかー」
すると校舎の中からメガネをかけたモブが現れた。
「「あ、モブ」」
「モブじゃねーよ!草野薙だよ!」
「まぁメガネは置いといて、そろそろ帰るか」
「おーい君達ー、ここの学生だねー、ちょっと話を聞きたいんだけどー!」
そんな時、遠くから先生の声がした。
「うわっ!先生だ!逃げるぞ!」
「ふっ、逃げる必要などない、我がいるからああああぁぁぁぁ」
「いいから逃げるぞ!」
真理の首根っこを付かみ無理矢理引っ張って全力で家まで帰った。
・
6日後
「よう、バカ」
「バカではないバハムートだ」
土曜日の朝、人がいない時間帯の学校の校門前で俺は真理、通称バハムートと待ち合わせをしていた。
「んじゃ、行くか」
「ふん、我に命令するんじゃない」
行く場所は同じ、委員会の集会場だ。その場所に向かい俺達は歩き出した。
「お前、案外私服は普通なんだな」
「なんだお前、褒めても何も出ないぞ」
真理はこう言ってジト目で睨んでくるが、正直めちゃくちゃ可愛いと思う。絶対に口には出さないけど⋯⋯。
有名メーカーの帽子に緩いパンツ、そしてスレンダーに見える白いシャツ、それら全てが真理の魅力を引き出していた。
「別に褒めてはないだろ、普通って言っただけで」
「普通も我にとって褒め言葉なんだよ、我は我にとっての普通が普通じゃないって皆に言われてきたからな」
そう言ってぎこちない笑みを見せる。
「そうか、お前も大変なんだな」
「ふっ確かに大変だな、だけど大変で苦しい時があっても今は貴様がいるから我は結構楽しいぞ」
「そっか、なら良かったよ」
今度は嘘偽りない笑みだった。
それからは普通に言い争いをしながら目的地まで歩を進めて行った。
「おー久しぶりだな、ここに来るのも」
「我もだ」
俺達が行き着いたのはどこにでもありそうな町外れのガソリンスタンドである。
「いらっしゃいませ、今日はどのようなご用事で?」
「焼肉食べ放題60分で」
ガソリンスタンドに足を踏み入れた俺達はガソリンスタンドの制服を着た笑顔が素敵な男の人に出迎えて貰った。
「調味料はどうされますか?」
「レモンましましで」
「了解しました、ではどうぞこちらへ」
俺達は店員さんの案内の通りに建物中に連れられていく。
「ではこちらへどうぞ」
その建物内にある裏部屋へと連れてかれる。壁にあるレバーを店員さんが下ろすと、一気に部屋ごと下がっていく。10秒くらい経つと
「集会場に到着致しました」
「「ありがとうございます」」
2人でお礼をしてから外に足を踏み入れる。そしてそこに広がっていたのは一面ガラス貼りの空間であった。
「遅かったではないか、徹、真理」
「いやめんどくさすぎるんですよ、ここまで来るのに、どこに金をかけてるんですか」
空間のど真ん中にある長テーブルの俺達から1番遠い場所に座っていた上小路梨沙(委員長)が話しかけてきた。委員長の他には長テーブルの横に2人ほどいた。
「それは私ではなく、予算担当の東雲に言ってくれ」
そう言って委員長はテーブルに並べられている無数の椅子のうちの1つに坂立ちで座っている人間を指さした。
「おい東雲!お前なんでこんな豪華な作りにしたんだよ!なんだよガラス貼りって、セレブか!それにここまで来るのだるすぎ!」
「まぁ、我は結構好きだぞ、秘密基地感あるし」
「おいおいおいおいおい、お前はこの俺に無駄な金を使っているとでも言いたいのか?」
男は逆立ちの状態を戻し、普通に座る。すると逆立っていた髪が落ちてきて、男の目を完璧に隠した。このダルダルの黒色パーカーを着ている男、東雲旬は俺を指さして威圧する。
「あぁ、そうだよ!これって政府から渡された援助金で作ったやつだよなぁ?ああ?」
「そうですけどぉ?かっこいいから良くないですかぁ?」
「俺達の給料とかないんですかねぇ?こんなに命を張ってるのにさぁ」
「たいして命張ってないだろお前!」
「⋯⋯⋯⋯」
自分で言った手前なんだが否定できん。
「おいお前らその辺にしとけうるさいぞ、わしの睡眠を邪魔するんじゃない」
「ああごめん白戸 」
白く長い髪を垂れ流しにして、先程まで持参した枕にうずくまり爆睡していた女が目を覚まし俺と東雲を睨みつける。
「おい白戸、お前どう思うよ?このガラス張りの空間が無駄だって言うんだぜこいつ」
と東雲が軽い口調で問いかける。
「ふん、わしの知ったことじゃないね」
「うーわ、少しくらい興味もてよババア」
「⋯⋯殺すぞ?」
瞬間、空間が凍りついた。軽快に動いていた東雲の口も、俺の隣で暇そうに欠伸をしていた真理もその眠気はとれ体をのばし、俺は若干ちびりそうである。
白戸佳奈、能力名”絶対なる恐怖”相手を心の底から怖がらせることが出来る。
「⋯⋯ごめん」
完全に萎縮した東雲は目を白戸に向けずに俯く。擁護する気にはならん、この場合東雲が100パーセント悪いからな。うん、女の子にババアって言っちゃダメ、絶対。
彼女はかなり強くてその実力は委員会のナンバー10には確実に入るだろう。だけど⋯⋯
「オーダー”全員落ち着け”」
やはり最強はこの女だろうな。上小路梨沙、実質的な委員会最強の女。
彼女の一言で怒っていた白戸も萎縮して白戸にビビっていた東雲も一瞬にして落ち着きを取り戻す。
「全くお前らは自分勝手がすぎるんだ、もっと落ち着きを持ちなさいこの委員長の私のように!」
委員長はキラーんとメガネを輝かせる。
「で?その委員長さんはなんで俺達を集めたんだよ?」
「それはね東雲、コックリさんの討伐のためよ」
「「!?」」
白戸と東雲は目を見開き体を硬直させる。
「コックリさんだと!?なんであんなバカ強い幽霊を倒さないと行けないんだよ!」
「それにコックリさんに挑むにはこの人数はあまりにも少なすぎるし弱すぎる、わしはまだしも徹はクソ雑魚だぞ?」
「うるせーよ」
「再契約をしたコックリさんが暴走しちゃってね、それに今暇なのフリーターの東雲君と白戸さんぐらいだったもの」
「「再契約!?」」
白戸と東雲はギャグ漫画のように、椅子から転げ落ちる。「あっはっはっ転んでやんの」と隣では真理が大笑いしている。
ていうか君達契約のこと知ってたのね、真理も知ってたらしいし、ちっ!俺だけかよ知ってなかったの。
「やばいだろそれは、死人が出るぞ、つーかなんで再契約なんか」
「そうなのやばいの、まぁコックリさんが再契約しちゃった理由はおいおい説明するとして、とりあえず皆でコックリさんをざがしに行こう!」
「あー、わしはパスでいいか?後、しばらく集会には出れなくなる」
すると気だるそうに白戸が片手を挙げる。おいおいそんなんで委員長が許してくれる訳⋯⋯
「おけ」
「「ん!?」」
俺や東雲、そして真理までも目を見開き固まる。あの委員長が許した?なんで?あまりにも有り得ない光景に俺の頭は昨日を停止した。
「おいおいおいおい、白戸がいいなら俺もパスするぞ」
「ダメ、だってフリーターじゃん」
「おいてめぇ!フリーター舐めんじゃねぇぞ!こっちだって色んな事情が」
「うるさーーーーーーい!」
「えー」東雲の悲しき必死の抵抗も委員長の前に一蹴される。さすがに東雲が可哀想に見えてきたわ。
「いい?一週間以内にコックリさんを見つけること、でなければ死人が出るから、そこんとこよろしく、まぁ私と一緒に頑張ろう!それじゃ今日の集会はこれで終わり!あ、白戸さんは後で私の所に来て」
「おいちょっと待ってよぉ委員長」
東雲は親に置いてかれた子供のように手を伸ばすもののその声は委員長には届かず、白戸と共に消えていった。
「まぁ、どんまい」
「どんまい」
俺と真理は泣き目の東雲の肩をつかみ、慰める。なんて可哀想な奴なんだ、まぁどんまい(笑)
「ふざけんなよぉぉぉぉ!」
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