第2話頼み事
「高橋直人です、趣味はYouTube見ることです、よろしくお願いします」
入学式が終わり、先生による公開説教が俺に行われた後、新クラスの恒例行事とも言える自己紹介が行われていた。
「橘徹です、趣味は漫画を見ることです、ワンピーソが結構好きです、同じく好きな人がいたら話しかけてくれると嬉しいです」
愛想笑いを振りまいて何とか朝の失態を隠そうとしたがクラスの皆からのこいつはヤバいやつという視線が痛い。
ここは自分の失敗をネタにするしかねぇ。
「えーと遅刻がチャームポイントです、てへっ」
シーン。
張り詰めた冷たい空気が俺の心臓を刺す。さっきよりクラスの皆の視線が冷たくなった気がするし、先生の眉間あたりの血管が浮き出てる気がする。
ハハッ俺の学校生活終わったな。
「⋯⋯よろしくお願いします」
ここはもう大人しく引き下がろう。
ごめん、俺の後ろの名も知らぬ普通の人よ、この空気を作ってしまったのは俺だ。恨んでくれても構わない。
その後、俺の後ろの普通の人が地獄の空気の中自己紹介をし、そのまた後ろのチャラいやつが面白トークをして場の空気を取り戻してくれた。
その後はこれといった事件はなく、つつがなく自己紹介は進んでいき、ついに最後の人の番となった。
「
俺はその人のクセが強い自己紹介よりもその美貌に見とれていた。
綺麗で艶がある黒髪をポニーテールで纏め、吸い込まれそうなほど大きな黒い瞳に整った
鼻、妖艶な唇、そして恐らく道行く男性全てが二度見する程のスタイルの良さ、これがパーフェクトガールというやつか。(自己紹介以外は)
「一年間、よろしくお願いします」
ん?今、俺の事見たか?
なんか、柳さんから視線を感じた気がするが、まぁ気のせいかな。自意識過剰は良くないって前に花子に言われたしな。
「はい、じゃあ今日はこれで終わりとする、明日は8時半にここに集合だから忘れんなよ」
そう言って、俺たちの先生、
その後、連絡先の交換などをした後は各々解散となった。
俺もその流れに乗りこの学校を出る。
そして学校3キロくらいチャリを飛ばした先に見えてきたのはコケが生え始め、壁が崩れかけている廃校だった。
俺はその廃校の立ち入り禁止の看板を乗り越え、まっすぐにトイレへと向かう。
廃校や人気のない場所には幽霊が集まる、以前その理由を幽霊の1人に聞いた時、人間に無視されるのが辛いかららしい。
案外寂しがり屋なのかもな、幽霊も。
俺と花子は良くこの廃校で遊んでいた。他の幽霊誘ってサッカーしたり、崩れ掛けのバスケゴール使ってバスケしたり、たまに花子に愚痴を言ったり、言われたりしていた。
「ハハッ、懐かしいなー」
「何が懐かしいのよ」
「うぉ!?」
感慨深い気持ちになって天井を見ていた俺の前ににゅっと顔を出してきたのは花子だった。
「いるなら言えよ」
「いやよ」
「なんでだよ」
「あなたのその驚いた顔が見たいから」
花子はにひっとイタズラっぽく笑い、俺の頬をつつく。普通の人には幽霊は触れることはできないが俺には触れることができるらしい。
「たくっ、お前のせいで後ろの人に気味悪がられちまったじゃねーか、どう責任取ってくれんだ」
「別にいいじゃない、入学初日から遅刻した時点で最大級に目立っちゃってるんだから」
花子は自分は関係ないと言わんばかりに堂々とそう言ってみせた。
まぁ、確かにそうだが⋯⋯
「あぁ後言い忘れてたけど、その制服似合ってるわよ」
ぐっ!
クソこいつめたまにこういうキュンとしちゃう事を言ってくるから油断ならねぇ。
「あはは、キュンとしちゃったんだ」
「⋯⋯うぜぇ」
くそ憎たらしい笑みを浮かべてやがる。
「はぁ、まぁいいや、で?今日は何するんだ?サッカー?カルタ?トランプ?なんでもいいぞ」
「どれもしないわ、今日はねあなたに頼み事があるのよ」
「頼み事?」
「そう」
珍しいな、花子が俺に頼み事があるなんて。
「どんな?」
「ちょっと来なさい」
花子が壁に向かって手招きすると、ぬっと壁から顔が出てきた。
手、足、胴体と少しずつ壁から何かが出て来て、全体像が見えてきた。
壁の外から出てきたのは普通の青年の幽霊だった。
坊主頭に、紺色のブレザーのボタンを全部閉めているところにこの人の真面目さを感じる、そして何よりも顔がめっちゃくちゃかっこいい、鼻は高くて、綺麗な瞳を持っている。現代にいたら絶対にモテるであろう顔だ。
「喜久田太郎と言います、お願いがあるのは自分なのです」
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